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異世界へ行く準備をする世界~他人を気にせずのびのびと過ごします~

山口五日

第16話 ラピスとコンビニ

「マスター! そろそろ別の場所に行ってみませんか?」

「別の場所?」

 支度をしているとラピスはそんな事を言って来た。

「既にマスターはゴブリンとは余裕で戦えます。このまま狩り続けて強くなるのは、安全ですがゴブリンとの戦いに慣れてしまい過ぎるのも問題かと……」

「……確かにな。ゴブリン以外の魔物と戦う時に、ついゴブリン基準で体が動いてしまうかもしれないな」

「はい。ただ、ホテルの周辺にはゴブリンしかいません。だから少し遠くへ足を延ばしてみませんか?」

「そうだな……」

 確かに他の魔物とも戦ってみたい。今はまだFランクの魔物を相手にしていくつもりだが、ゴブリン以外の魔物もきっといるはずだ。

 偏った戦い方を身に付けないようさすがに創造神も考えていると思う

 それに別の場所に行く事は、違う魔物を相手にする以外にも得られるものがある。

「それじゃあ行ってみるか……ミノタウロスと遭遇しない事を祈ろう」

「マスターがミノタウロスと遭遇した場所は避けましょう。それじゃあ遠出にあたって色々準備しますね!」

「ん? 準備?」

「はいっ! 食糧とか水とか……ああ、テントも一応用意した方がいいですね! これまでの魔物との遭遇頻度を考えると、予想以上に時間が掛かる可能性もありますし!」

「マジックバックに入れれば負担にはならないと思うが……とりあえず必要ないぞ。道中手に入れればいい」

「はい?」

 どういう事かと首を傾げるラピス。彼女がいた世界であれば、少し遠出となると事前に色々と備えは必要なのかもしれない。

 だが、この準備の世界では色々なものを確実に現地調達ができる。

 不思議そうな顔をしながらも俺の言葉に従って、特別な準備はせずにホテルを出た。ミノタウロスがいた場所を回避しながらホテルからは離れていく。

 このままゴブリン以外の魔物と戦うのもいいが、先に食料を道中で調達できるという事をラピスに知って貰う事にする。

「ちょっと寄って行くぞ」

「? ここは……?」

 首を傾げながらラピスは俺の後に続いて、とある建物の中に入る。そして入った瞬間目の前に広がる光景に目を見開いた。

「こ、これはっ!?」

「コンビニというんだ。小さいが食料とか色々なものが揃っている店だ」

「お店……なるほど。ここで調達するから準備はいらないとおっしゃっていたんですね!」

「ああ……この系列の店が幾つもあるからな。そこで調達する」

「……えっ、ここ以外にもこんなお店があるんですか!?」

「これとは別に、もっと大きな店もある」

「異世界……凄いですね……」

 感心した様子で息を漏らすラピス。やはりというべきか異世界にはコンビニというものはなく、食べ物から日用品まで扱っている店は珍しいようだ。

 店の出入口の辺りからキョロキョロと忙しなく首を動かすラピスを見て、少し見ていくかと提案する。すると彼女は目を輝かせて「はいっ!」と返事をして、すぐにおにぎりやサンドイッチのある棚へと向かって行った。

「これはお米! お米ですよねマスター! こっちの黒いのはなんですか?」

 おにぎりを見て興奮気味に尋ねて来るラピス。そういえばラピスは米を知らなかった。それならおにぎりを知らないのも当然だろう。

「これはおにぎりっていうんだ。米を三角形や、丸っこい形にするんだ。米自体に味付けしたり、中に具を入れたりしてな。黒いのは海苔だ。海藻をシート状に固めたもので、パリッとしてて美味いぞ。米の水気を吸ってしんなりしてるのも美味いが……」

「美味しいんですか……」

 おにぎりに熱い視線を向けながら、口の端から涎が垂れていた。
 マジックドールって唾液を分泌させるのか、と軽く驚きながら俺はラピスに提案をする。

「せっかくだから一個くらい食べるか?」

「はいっ!」

 ラピスはすっかり食いしん坊キャラとなっていた。

 フレンチトーストを初めて食べた時から薄々そのような気はしたが、きっちり毎食おかわりをして俺よりも食べる。

 彼女の食べっぷりは見ていて気持ち良いので、俺は特に止める事はしない。さすがに太ってきたら魔物との戦いに支障が出ると思うので、止めようとは思う。

 だが、はたしてマジックドールは太るのか。そんな疑問を抱きながら、日々ラピスの食事を見守っている。

「マスター! どれがオススメですか?」

「ん? そうだな……鮭とか梅が昔からあるおにぎりの具だな。あとはシーチキンなんかメジャーだな。ラピスのいた世界の事を考えると、シーチキンは口に合うんじゃないか……たぶん」

 シーチキンは和か洋かと判断するなら、俺は洋だと思う。異世界出身だから洋食に近い具がいいのではないかとシーチキンを勧めてみる。

「それではマスターのオススメのシーチキンにしてみます! ところでシーチキンはぢれですか?」

「ああ、そうか分からないよな。ほら、これだ」

 俺は棚からシーチキンのおにぎりを取ってラピスに渡した。

 ラピスはこの世界の文字は読む事ができない。実は日本語を喋る事もできないのだ。では、どうして会話できているのかというと、俺が異世界の言語を自然と話しているからだ。

 最初は気付かなかったが、色々と検証していくなかでラピスに異世界の文字を書いてもらい、それが読めた事で気付く事ができた。

 この世界が異世界と繋がった事が影響しているのか、それとも創造神が意図してやってくれたのか。その辺りは分からないが、ラピスと意思疎通ができるので、異世界の言葉を理解できるようにしてくれたのは有難かった。

「マスター! これって、どうやって食べればいいんですか?」

「まずはビニールを取らないといけないんだ。番号が書いて……あ、数字もこっちとは書き方が違うのか。まずは……」

 ビニールの外し方を教えてやって、ラピスはおにぎりを食べる。
 初めてのおにぎりの感想は、彼女の笑顔を見れば聞くまでもなかった。

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