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異世界へ行く準備をする世界~他人を気にせずのびのびと過ごします~

山口五日

第15話 ラピスの変化

 ゴブリンとの初めての戦いから数日が経過した。
 俺とラピスは今もホテルの周辺で戦っているが、あのゴブリンの大群との戦闘で色々と考えさせられ、装備を見直した。


 俺の装備は剣と盾で変わりないが、ラピスの武器は大剣から弓矢に変えて貰った。異なる攻撃手段が取れた方がいいと考えたのだ。


 パーティールームで早速弓を探してみると、魔力で矢を生み出す事ができるという優れものを見つける。ラピスにはそれをメインの武器として使ってもらう事にした。


 ちなみにラピスにはもう一つナイフを装備させた。それは武器として使う分にはただのナイフ。だが、そのナイフは地面にとある印を刻むと事によって、その印の場所に一日に一度だけ転移する事ができるという能力がある。


 これで俺が死んだとしても、取り残される事なくラピスもホテルへと戻る事ができるというわけだ。


 様々な武器がある中で、そのナイフにだけ“帰還のナイフ”という名前があった。他の武器は、性能はいいが名前はないという。


 鎖が巻き付けられたり、床に突き刺さったりしている武器には凄そうな名前がついていそうだが、ラピスは知らないらしい。


 戦闘支援型のマジックドールとして、あらゆる武器の知識が備わっているラピスが知らないとなると、本当に名無しか、あるいは創造神が新たに作ったのかもしれない。まあ、どちらにしろ使わない武器なので、気にする必要はないと放置だ。


 こうして装備を見直した俺たちは日々ホテルの周囲を歩いてゴブリンをを倒し、成長していった。


 成長と言っても俺はそれほど大きな変化はなかった。


 強いて挙げるならゴブリンと戦うのが楽になった気がする。戦闘慣れしたのか、戦いの中で視野が広く保つ事ができ、相手の動きを予測して立ち回る事ができるようになった。


 剣を手にして戦った事がなかったサラリーマンが、戦いに慣れたという事は充分大きな成長、変化かもしれない。


 だが、ラピスの変化と比べてしまうと、俺の変化というのは些細なものだ。


「マスター、マスター! 今日の朝ご飯はなんですか?」


「今日は和食にした。たまには朝食に米を食べたいと思ってな」


「おおっ! これまで朝はパンでしたが、お米なんですね! 朝のお米のご飯、楽しみです!」


 そんな厨房での遣り取り……俺はいったい誰と話しているのだろうか?


 初めて出会った頃と比べてしまうと、思わずそんな疑問が湧いてしまう。


 快活に喋る少女。彼女は間違いなくラピスだ。淡々と無表情を保っていた彼女は何処へやら、感情豊かでニコニコ笑っている事が多い元気な少女に変貌している。


 どうしてこうなってしまったのか……。


 突然こうなってしまったわけではなく、徐々にラピスは変化をしていったのだ。最初は感謝したり、食事をするとよく笑顔を見せるようになった。だが、それが徐々に別の時にでも見られるようになって、今に至る。


 一度、雰囲気変わっていないか? と尋ねた事がある。


 すると自分に感情が芽生えたようだと彼女は言った。
 マジックドールに感情が芽生える事はよくあるのかと尋ねると、普通はあり得ない事だと答える。では、いったいどうして感情が芽生えたのか……その明確な理由は分からない。


 可能性として考えられるのが、魔力だと話す。


 日頃、彼女に供給している俺の魔力に原因があるかもしれないという。マジックドールの中にはマスターの魔力によって、スキルを獲得するなど特殊な作用を及ぼした事があったようだ。


 感情の芽生えもおそらくそれと同じだろうとラピスは言っていた。


 俺の魔力でこんなにも変わるなんてラピスも思いもしなかった。というか俺に指摘されるまで、自身の変化に気付かなかったらしい。まるで感情がある事が当たり前のように思っていたようだ。


 また、変化を自覚したうえで、感情が芽生えた事で何か不都合はないかと、尋ねてみた。


 少しラピスはこれまでの事を思い返してみて、特にないと断言する。マジックドールとしての務めは問題なく果たせる、そう胸を張って言う。


 俺も人間らしくなった事に最初は戸惑った。


 だが、他人と接する時間が暫くなかったせいか、人の顔色を窺って行動するという癖はすっかり失われていた。だから特に彼女と一緒にいる事が煩わしいなどとは思わない。


 それに……。


「マスター! 今日のご飯も美味しいです!」


 喜んでくれる顔をいっぱい見られるというのは嬉しいものだ。

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