異世界へ行く準備をする世界~他人を気にせずのびのびと過ごします~

山口五日

第7話 魔法やスキルは使えますか?

 ラピスを連れて宴会場に戻って再び武器を選ぶ。


 ゴブリンを車で撥ねて倒して魂が強化されたせいか、20キロ以上はありそうな大剣でも扱う事ができる。重量に関しては問題にならない。地面に刺さっていたり、鎖が巻き付いていなければ武器として充分扱えそうだ。


 ラピスが言うには魂がそれなりに強化されれば、百キロ以上の武器も片手で扱える人もいるらしい。ゴブリン数体では魂の強化はたかが知れていて、ゴブリンだけ倒して強化するなら何万と倒さなければならないとの事。


 ちなみにゴブリンは向こうの世界でもゴブリンという名前のようだ。そして予想していた通り一番低いFランク。俺を殺したミノタウロスらしき魔物も、ミノタウロスで当たっていた。こちらも予想通り今この世界にいる最高ランクのDランク。


 創造神と会話できない今、彼女の存在は頼もしかった。戦闘補助型という事もあり、魔物の知識なども一通り知っているそうだ。そこでミノタウロスと自分の差はどれだけあるのか尋ねてみた。


「ゴブリンで換算すると3,000匹ほどでしょうか」


 ゴブリン換算だと分かりにくい。まあ、圧倒的な差がある事は分かる。


 それにしてもランクが二つ違うだけでこれだけの差があるとなると、一つ上のEランクでもゴブリン1,000匹ぐらいの差があるのではないかと不安になる。だが、EとFではそれほどの差は開いていないようだ。


 D以上のランクの魔物を相手にするのは一流の冒険者らしい。さすが、異世界。冒険者っているんだな。


 新入りなどの力がない者はEとFランクの魔物を相手にし、力をつけてDランク以上の魔物に挑む。大群になると話は別だが、EとFは成長としての糧という見方をされていて、それ以上は危険性のある魔物とされている。


「じゃあ、まずはEとFを倒して、しっかり力をつけないとな……」


「そうですね。Dランクを相手にするのは当分先にした方がいいかと。ちなみにFランクはEランクよりも強いので、Fランクを狙うべきです。特にマスターは魔物に慣れていないようですし……」


「そうだな。俺の世界には魔物なんてものは空想の生物だった……あ、そうだ。魔法は使えるのか?」


 俺の魔力でマスターの登録がされたと聞いた。それなら魔法が使えるんじゃないかと期待して聞いてみるが、ラピスは首を横に振る。


「いえ、今のマスターは魔法が使えません。魔法というものは魔法の書というドロップアイテムが必要になります」


「ドロップアイテム……という事は魔物を倒すと手に入れられるのか?」


「はい。ただし、必ず現れるわけではありません。ドロップアイテムは極稀に出現します。それも魔法の書とは限りません」


「そうか……そういえばゴブリンを倒した時に黒い石が落ちてたな。あれってドロップアイテムだったのか?」


 最初に軽トラで撥ね飛ばしたゴブリンが倒れていた場所に、黒い光沢のある石が落ちていたのを思い出す。


「いえ、それは魔石ですね。魔物は死ぬと必ず魔石を残して消えます。魔石は魔力の塊で、魔力を動力として動くマジックアイテムに主に使われます。ちなみに魔石には魂の一部が封印されていて、私のようなマジックドールの成長させる事ができます」


「普通に魔物を倒しただけじゃ魂は強化されないのか?」


「マジックドールには魂がありません。その為、人間と同じようには成長ができないのです。その代わり、魔石に封印されている魂を吸収できるような作りになっています」


「それなら魔石は全部ラピスに渡した方がいいのか……。ラピスも戦ってくれるんだろう?」


「はい。私はその為のマジックドールですから」


 今のところ魔石は手に入れても他に使い道はないし、一緒に戦ってくれるラピスが成長してくれれば助かる。


「だけど魔法が使えないのは残念だな。折角なら使ってみたかった……そうだ。スキルは? スキルはあるか?」


「スキルも存在します。魔法の書など必要なものはありません。ですが、スキルを使えるようになる具体的な条件は分かっておりません。スキルはいつの間にか使えるようになっているそうです。分かっている事といえば、スキルはその人の人生を示していると言われています」


「そうか……」


 スキルも使えるかもしれないという期待はあるけど、こっちは使えるようになる条件が分からない。そうなると魔法よりも望み薄だろうか。


「少しでも魔物と戦うのに使える武器があった方が良かったんだが……」


「ゴブリンを倒された時に使った軽トラというものを使ったらいかがですか?」


「軽トラか……できたら使いたくないんだよな……」


「? どうしてですか? 聞いた限りでは、おそらくFランクの魔物も倒せると思いますが……」


「できたらファンタジー……ラピスの世界のやり方で倒したいんだ」


 軽トラを使ったのは魔物が現れた中で丸腰の状態であった為だ。


 警察署にいけば銃を入手する事ができるかもしれないし、他にも自分がいた世界のものを使えば楽に魔物を倒す事ができるだろう。だが、ファンタジーには、ファンタジーのやり方で倒したい。


 そんなこだわりが俺の中にはあった。


「……なるほど。向こうの世界に行った時にはそれが使えるとも限りませんからね。向こうのやり方を今のうちに慣らしておくのも重要でしょう」


 そこまで考えていなかったがラピスも納得してくれたようだ。人間ではなくマジックドールである為、俺の意見に反対しないのかもしれないが……。


「さてと……それじゃあ武器をよく考えないとな」


 魔法やスキルが使えないと分かった今、武器選びは重要。


 俺はラピスに相談しながら武器を選ぶのだった。

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