人生の続きを異世界で!〜天界で鍛えて強くなる〜
英雄もどき
「1つ聞かせろ」
「なんだ」
「お前らの目的はなんなんだ?」
「緑を取り戻し……」
「違う。ウナアーダの目的だ。王国に攻める理由がわからない」
「お前たちは、ウナアーダと、魔国を滅ぼす」
「は? そんなことするわけないだろ」
「知っている。だが……いや、いい。これ以上は、答えられない」
「訳わかんねぇんだよ!」
話も終わり、ミツキが一直線に白へと突っ込んで行く。
「炎武《火灼爆衝》!」
「これも高い火力だ」
当たれば爆発する柄による打撃を、白は斜め上へと受け流し、爆発の範囲に入らない。
(やっぱり、だんだん目が慣れてきてるな。ここで決めないと)
大剣を地面に刺し、大きく踏み込んで白の剣の間合い、そのさらに内側に入り込む。
その両手には、ナックルダスターが装備されている。
「手数で勝負だ。炎武《炎炎灰連》!」
攻撃の回転数をひたすら上げ続ける、超至近距離でしか使えない技。
だが、1度決まれば逃すことはない。
「打撃か。早く、鋭いな」
「オルアアアアアッ!!!」
上下左右に不規則に放たれる打撃を受け流すのは至難の業で、距離を離そうと下がっても、ピッタリとついてくる。
それを白は剣1本で器用に受け流し、防いでいる。
「強い、な」
これならば倒せる、と思ったミツキだが、白の顔には焦りが見えない。
(余裕だと? いや、これで崩す!)
その表情に不安が出そうになるが、ぐっと押さえ込み最大火力の炎を拳に乗せ、繰り出す。
「できれば、殺したくないな」
白は距離的に回避不可能であるその拳を、あろうことか、炎ごと真上へと受け流した。
炎は空へと上がり、火柱となって消えていった。
「受け流すのかよ」
「悪いが、俺は強い」
ほとんど見えない白の斬撃を、直感に任せて拳を繰り出し、当てることでどうにか直撃は防ぐ。
とはいえ、これ以上攻めるのは無謀なため、後ろへ下がるしかない。
「わかんねぇ。あんたからは、悪意も見えない。それに、英雄と呼ばれるほど強いってのに、なんでこんなことをする」
白からは、ヨハンと同様に悪意が全く見えない。
「……王女様の勅命、だからだ」
「勅命なら、無害な人でも殺すのが英雄なのかよ」
「お前は、勘違いをしている」
「勘違いだと?」
「俺は、元英雄。今は英雄もどきの……騎士かどうかすら怪しい」
そう言った白の顔は感情を抑えているように見え、ミツキは困惑する。
(こいつらは……ウナアーダは、敵なのか?)
「お前も迷ってんのか、ミツキ」
迷いが生じ始めたミツキに、武器の双剣を持ったヨハンが声をかける。
「ヨハン、なんでここに」
「今はお前とやろうって訳じゃないんだよ。なあ、アランさん」
「緑。俺は白と呼べ」
「じゃあ白さん。俺たちのやってることは、正しいのかよ」
大剣の切っ先をヨハンに向けたミツキだったが、その視線が白ーーアランに向いていることに気づいて大剣を下げる。
「王女の勅命だ」
「それがわかんねぇ。俺は王女様を信じてる。だからこそ、こんな命令をするとは思えねぇ。白さんもわかってんだろ?」
「俺には、関係が無い」
「ヨハン、何を話してるんだ?」
険悪そうな雰囲気を出す2人の状況がわからず、隣にいるヨハンに尋ねる。
「ミツキ、俺はお前がウナアーダに害をなすようなやつには見えねぇ。王国の人間もそうだ。全員綺麗な心をしてた」
「それが、どうした」
「白……いや、アランさん。俺は王国に残るぞ。何が正しいのか、自分の目で確かめる」
「許されると思うか?」
「こっちは武器を持った俺と、ミツキがいる。今のあんたになら勝てるぞ」
「……」
チラリとミツキに視線を向けたアランは、剣を下ろした。
「アランさん、わかってくれたんだな」
「俺は、白だ。裏切るならば、殺さねばならない」
アランの下げた剣に、少しづつ光が集まり、眩く光り始める。
「極光を使う気かよ、正気か!」
「……すまない」
その顔は無表情ならがも謝罪の言葉を述べるが、集まる光は止まらない。
「くそっ、おいミツキ、あの女の子2人を連れて今すぐ逃げるぞ!」
「状況がいまいちわからないんだが、あの技がどんなのか教えてくれ」
「極光っていってな。アランさんの技の中でも、1番やばいやつだ。あの剣なら本来の威力は出せないだろうが、角度的にこの先の街は真っ二つになる!」
「そうか、わかった」
それを聞いたミツキは背を向けるどころか、大剣を大上段に構えて白の正面に立った。
「バカ、威力下がってるっていっても防げるもんじゃねぇぞ!」
「なら尚更だ。俺はメリアもソフィアも、街の人たちも守る。それが俺は正しいことだと思う」
「っ、しゃーねぇ。お前がミスったら終わりだぞ」
「ありがとな。けど、大丈夫だ」
後ろを見てみると、心配そうにしているメリアとソフィアが目に入った。
(俺を頼ってくれて、正直嬉しかったんだ。だから、俺は勝たないといけない)
2人からの信頼を、期待を、裏切るわけにはいかない。
ここで白を打倒する。
「第二権能解放!」
大剣に纏っていた炎が黒く染まり、黒炎となって火力を増す。
この第二権能は攻撃に特化した黒炎を武器に纏わせるもので、高すぎる火力からヘルミーネからは乱用するなと釘を刺された、。
油断すれば自分の身すら灰にされるほど危険で、ミツキが使える時間は10秒だけ。
(チャンスは1回だな)
どうやら、白も光を集め終えたらしい。
その剣は眩しいほど光り輝いている。
「光に呑まれろ。《極光》」
「灰となれ。炎武《絶華》!」
両者の最高の技、光と黒炎が激突する。
あまりの衝撃に木々がなぎ倒され、風圧でビリビリと顔を叩かれる。
そんな中でミツキと白は、一瞬たりとも気を抜かず拮抗させている。
「極光が、止められるか」
「ぐ、くくくくく……」
全身全霊の力を込めているミツキは焦る。
残された時間はもう少ない。
「俺は、負けられねぇんだよ! おおおおおおおおおおお!!!」
渾身の黒炎に、光が押され始める。
それを返そうと白もまた力を込めるが。
ピシリッと、
「限界か」
耐えきれなくなった剣にヒビが入り、同時に光が黒炎に呑み込まれた。
そのまま黒炎は巨大な奔流となり、ミツキが亀裂を入れた山へと当たり、華を咲かせるように弾けた。
凄まじい爆音が響き、山は跡形も残らず灰となって風に乗って消えていく。
「ハァッ、ハァッ、白は……」
膝をつき肩で息をするミツキは、もう権能を使う力も残されていない。
「ここまでとは……予想外だった」
その声の方向へ視線を向けると、白い髪と赤い瞳をした中性的な男性が、柄だけになった剣を見ていた。
「アランさん、まだやる気か?」
鎧を脱いで危機一髪で黒炎を避けた白へ、ヨハンが双剣に手をかけて尋ねる。
「もはや、理由がない。今の俺では、お前たちは倒せない」
柄を地面に置き、戦う気のなさそうな白はヨハンからミツキへと視線を移す。
「ミツキだったか。覚えておこう」
「英雄に覚えてもらえるなんて、光栄だな」
「俺は英雄ではない……期待している」
それだけ言い残すと、消えるような速度で白は走り去っていった。
しばらく警戒していたミツキだが、完全に白が去ったとわかると、大の字に倒れる。
「すげーよ、お前」
「へへ、だろ」
傍で笑うヨハンに笑い返し、今は白を退けた安心だけを喜んだ。
「なんだ」
「お前らの目的はなんなんだ?」
「緑を取り戻し……」
「違う。ウナアーダの目的だ。王国に攻める理由がわからない」
「お前たちは、ウナアーダと、魔国を滅ぼす」
「は? そんなことするわけないだろ」
「知っている。だが……いや、いい。これ以上は、答えられない」
「訳わかんねぇんだよ!」
話も終わり、ミツキが一直線に白へと突っ込んで行く。
「炎武《火灼爆衝》!」
「これも高い火力だ」
当たれば爆発する柄による打撃を、白は斜め上へと受け流し、爆発の範囲に入らない。
(やっぱり、だんだん目が慣れてきてるな。ここで決めないと)
大剣を地面に刺し、大きく踏み込んで白の剣の間合い、そのさらに内側に入り込む。
その両手には、ナックルダスターが装備されている。
「手数で勝負だ。炎武《炎炎灰連》!」
攻撃の回転数をひたすら上げ続ける、超至近距離でしか使えない技。
だが、1度決まれば逃すことはない。
「打撃か。早く、鋭いな」
「オルアアアアアッ!!!」
上下左右に不規則に放たれる打撃を受け流すのは至難の業で、距離を離そうと下がっても、ピッタリとついてくる。
それを白は剣1本で器用に受け流し、防いでいる。
「強い、な」
これならば倒せる、と思ったミツキだが、白の顔には焦りが見えない。
(余裕だと? いや、これで崩す!)
その表情に不安が出そうになるが、ぐっと押さえ込み最大火力の炎を拳に乗せ、繰り出す。
「できれば、殺したくないな」
白は距離的に回避不可能であるその拳を、あろうことか、炎ごと真上へと受け流した。
炎は空へと上がり、火柱となって消えていった。
「受け流すのかよ」
「悪いが、俺は強い」
ほとんど見えない白の斬撃を、直感に任せて拳を繰り出し、当てることでどうにか直撃は防ぐ。
とはいえ、これ以上攻めるのは無謀なため、後ろへ下がるしかない。
「わかんねぇ。あんたからは、悪意も見えない。それに、英雄と呼ばれるほど強いってのに、なんでこんなことをする」
白からは、ヨハンと同様に悪意が全く見えない。
「……王女様の勅命、だからだ」
「勅命なら、無害な人でも殺すのが英雄なのかよ」
「お前は、勘違いをしている」
「勘違いだと?」
「俺は、元英雄。今は英雄もどきの……騎士かどうかすら怪しい」
そう言った白の顔は感情を抑えているように見え、ミツキは困惑する。
(こいつらは……ウナアーダは、敵なのか?)
「お前も迷ってんのか、ミツキ」
迷いが生じ始めたミツキに、武器の双剣を持ったヨハンが声をかける。
「ヨハン、なんでここに」
「今はお前とやろうって訳じゃないんだよ。なあ、アランさん」
「緑。俺は白と呼べ」
「じゃあ白さん。俺たちのやってることは、正しいのかよ」
大剣の切っ先をヨハンに向けたミツキだったが、その視線が白ーーアランに向いていることに気づいて大剣を下げる。
「王女の勅命だ」
「それがわかんねぇ。俺は王女様を信じてる。だからこそ、こんな命令をするとは思えねぇ。白さんもわかってんだろ?」
「俺には、関係が無い」
「ヨハン、何を話してるんだ?」
険悪そうな雰囲気を出す2人の状況がわからず、隣にいるヨハンに尋ねる。
「ミツキ、俺はお前がウナアーダに害をなすようなやつには見えねぇ。王国の人間もそうだ。全員綺麗な心をしてた」
「それが、どうした」
「白……いや、アランさん。俺は王国に残るぞ。何が正しいのか、自分の目で確かめる」
「許されると思うか?」
「こっちは武器を持った俺と、ミツキがいる。今のあんたになら勝てるぞ」
「……」
チラリとミツキに視線を向けたアランは、剣を下ろした。
「アランさん、わかってくれたんだな」
「俺は、白だ。裏切るならば、殺さねばならない」
アランの下げた剣に、少しづつ光が集まり、眩く光り始める。
「極光を使う気かよ、正気か!」
「……すまない」
その顔は無表情ならがも謝罪の言葉を述べるが、集まる光は止まらない。
「くそっ、おいミツキ、あの女の子2人を連れて今すぐ逃げるぞ!」
「状況がいまいちわからないんだが、あの技がどんなのか教えてくれ」
「極光っていってな。アランさんの技の中でも、1番やばいやつだ。あの剣なら本来の威力は出せないだろうが、角度的にこの先の街は真っ二つになる!」
「そうか、わかった」
それを聞いたミツキは背を向けるどころか、大剣を大上段に構えて白の正面に立った。
「バカ、威力下がってるっていっても防げるもんじゃねぇぞ!」
「なら尚更だ。俺はメリアもソフィアも、街の人たちも守る。それが俺は正しいことだと思う」
「っ、しゃーねぇ。お前がミスったら終わりだぞ」
「ありがとな。けど、大丈夫だ」
後ろを見てみると、心配そうにしているメリアとソフィアが目に入った。
(俺を頼ってくれて、正直嬉しかったんだ。だから、俺は勝たないといけない)
2人からの信頼を、期待を、裏切るわけにはいかない。
ここで白を打倒する。
「第二権能解放!」
大剣に纏っていた炎が黒く染まり、黒炎となって火力を増す。
この第二権能は攻撃に特化した黒炎を武器に纏わせるもので、高すぎる火力からヘルミーネからは乱用するなと釘を刺された、。
油断すれば自分の身すら灰にされるほど危険で、ミツキが使える時間は10秒だけ。
(チャンスは1回だな)
どうやら、白も光を集め終えたらしい。
その剣は眩しいほど光り輝いている。
「光に呑まれろ。《極光》」
「灰となれ。炎武《絶華》!」
両者の最高の技、光と黒炎が激突する。
あまりの衝撃に木々がなぎ倒され、風圧でビリビリと顔を叩かれる。
そんな中でミツキと白は、一瞬たりとも気を抜かず拮抗させている。
「極光が、止められるか」
「ぐ、くくくくく……」
全身全霊の力を込めているミツキは焦る。
残された時間はもう少ない。
「俺は、負けられねぇんだよ! おおおおおおおおおおお!!!」
渾身の黒炎に、光が押され始める。
それを返そうと白もまた力を込めるが。
ピシリッと、
「限界か」
耐えきれなくなった剣にヒビが入り、同時に光が黒炎に呑み込まれた。
そのまま黒炎は巨大な奔流となり、ミツキが亀裂を入れた山へと当たり、華を咲かせるように弾けた。
凄まじい爆音が響き、山は跡形も残らず灰となって風に乗って消えていく。
「ハァッ、ハァッ、白は……」
膝をつき肩で息をするミツキは、もう権能を使う力も残されていない。
「ここまでとは……予想外だった」
その声の方向へ視線を向けると、白い髪と赤い瞳をした中性的な男性が、柄だけになった剣を見ていた。
「アランさん、まだやる気か?」
鎧を脱いで危機一髪で黒炎を避けた白へ、ヨハンが双剣に手をかけて尋ねる。
「もはや、理由がない。今の俺では、お前たちは倒せない」
柄を地面に置き、戦う気のなさそうな白はヨハンからミツキへと視線を移す。
「ミツキだったか。覚えておこう」
「英雄に覚えてもらえるなんて、光栄だな」
「俺は英雄ではない……期待している」
それだけ言い残すと、消えるような速度で白は走り去っていった。
しばらく警戒していたミツキだが、完全に白が去ったとわかると、大の字に倒れる。
「すげーよ、お前」
「へへ、だろ」
傍で笑うヨハンに笑い返し、今は白を退けた安心だけを喜んだ。
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