人生の続きを異世界で!〜天界で鍛えて強くなる〜
白
「私たちも行きたいけど……」
「すみません、やっと準備できました!」
ミツキたちがフレーリアから出発して1時間後。
馬車のトラブルにより遅れていたメリアとソフィアも、ようやく王都に向けて出発する。
「すぐに追いつくよう、少し急ぎますね」
「ゆっくりでいいわよ。ねぇ、ソフィア」
「うん。景色を見ながら、ゆったり進も!」
「ありがとうございます」
馬を操る男は焦っていたようだが、2人の言葉を聞くと落ち着いたようで、馬車の速度も安定する。
「王都楽しみだな〜」
「ソフィアも行ったことないの?」
「一応あるんだけど、ちゃんと見て回ったことはないかな。だからすごく楽しみ!」
「私もよ。王国の首都なんだし、さぞ賑わっているんでしょうね」
「着いたら一緒に観光しようね」
「いいわよ。ミツキも加えて3人で、ね」
「うんっ!」
嬉しそうにはしゃいでいるソフィアを微笑ましそうに見るメリア。
そんなふうに会話や景色を楽しんでいると、最初の街を通過する。
今日の目的地はもう1つ先の街で、そこで一泊して翌日王都に着く予定だ。
「あとどのくらいだろう?」
「あと3時間ぐらいじゃないかしら」
街で買った弁当を膝に置き、遅めの昼食を取りながらそんなことを話す。
「ん、あれ? おかしいな。なんでこんなところに兵士さんが……」
「兵士?」
「いたら変なの?」
「はい。この辺は魔獣なんて出ないと思うんですが……」
2人が馬車から身を乗り出すと、確かに前方に1人の兵士が見える。
こんな街から少し離れた場所に1人とは変だが、とにかく止まろうと馬車の速度を落とした時だった。
兵士が手に持った槍を投擲した。
「え」
「ソフィア!」
「弾け!」
狙いは男だったが、すぐにソフィアが前に出て槍を弾く。
ギィィィンッ!!!
と、聞いたこともない甲高い音がすると、ソフィアが衝撃で馬車の後方へ投げ出された。
「ソフィア、大丈夫!?」
「私は平気だよ。それより前を!」
「わかったわ。馬車を今すぐ止めて」
「ひいっ!」
男は手綱を操り、急ブレーキをかけて馬車を止める。
その間兵士はこちらの動向を見ているだけで、攻撃はしてこなかった。
「前の街まで逃げて。今すぐよ」
「で、ですが」
「足でまといなの。早く!」
「は、はい!」
馬車から降りて男を前の街にまで返すと、ソフィアも隣に戻ってくる。
「怪我は?」
「左手がちょっと痛いかも。あんなに強い衝撃は初めてだよ」
「目の前にしたらわかるわね。あれは私たちの手には負えないわ」
兵士は腰の剣を引き抜き、正眼に構えた。
その一連の動きさえもが恐ろしいほど洗練されており、メリアは剣士として途方のない実力差を感じる。
「どうするの?」
「私が時間を稼ぐわ。ソフィアはミツキを呼んできて」
「1人じゃ危険だよ」
「知ってるわ。でも、ミツキ以外じゃあんなの歯が立たないわよ」
「……わかった。すぐ戻るね」
「頼んだわよ」
メリアが刀を抜いて構える間に、ソフィアは靴を脱いで裸足になると、地面に魔法陣を浮かび上がらせる。
「弾いて!」
地面と自分の足に磁力を付与し、反発させることで爆発的な速度を生み出す。
一瞬で背中が小さくなったソフィアを見送り、メリアは目の前の敵に集中する。
「なんでソフィアを止めなかったわけ? さっきも追撃してこなかったし」
「何も、変わらない」
話しかけてみると、兵士は顔こそ隠れてわからないものの、中性的な声で答えた。
「俺は、緑を救出する。何をしようと、その結果は、変わらない」
「緑? ウナアーダの兵士なの?」
「礼儀として、名乗ろう。俺は、ウナアーダ色の騎士、白」
「白……巫流剣士メリア。あんたを止めるわ」
両者が名乗り、先にメリアが地面を蹴る。
時間稼ぎのつもりだが、防戦一方になるつもりはない。
攻撃を絶やさず反撃させないというのが、理想の時間を稼ぐ戦い方だ。
「巫流《流渦突》」
繰り出すのは、勢いを乗せた突き技。
剣で防ごうとしても弾き、次の攻撃に繋げられる技を選ぶ。
「遅い」
だが、その考えは甘かったと痛感させられる。
白は突きを簡単に受け流すと、流れるような動作でメリアの右肩を切断した。
見蕩れるほど完璧な動作に、メリアは反応もできなかった。
「これで、終わり」
「終わってないわよ。巫流《雨突》」
「ん?」
連続して繰り出される突きは全て受け流すが、それよりも目を引いたのはメリアの右腕だ。
確実に斬ったはずの右腕が、何事も無かったかのようにくっついている。
「斬った、はずだが」
「斬れてなかったんじゃない?」
「ふむ……」
少し考える素振りを見せた白だったが、次の瞬間消えた。
そして同時に、メリアの左腕が宙を舞う。
(斬られた!? 何も見えなかったわよ!)
反応もできずに左肩から先を斬られたが、肩と左腕、それぞれから細い触手が伸びて絡むと、左腕を引き寄せてくっつける。
「人間、ではないな。化け物の類の、ようだ」
「化け物はあんたでしょ」
ウナアーダ最強の騎士である白のことは知っていたが、ここまで強いのは予想外だ。
今も首を狙われず、様子を見られた。
「面倒な、相手だ」
「今の攻撃で首を狙わなかったこと……後悔させるわ。魔眼解放」
メリアの深い青色の瞳が輝き、空神の魔眼が開放される。
「何か、変わったか?」
「鈍感野郎には動きでわからせてやるわよ!」
最初と同じようにメリアが地面を蹴り、今度は右肩を狙って切り上げる。
白も同じように受け流そうとするが、その動きを見たメリアは刀を止め、左足で上段蹴りを繰り出す。
その蹴りも右腕で軽く防いだ白の顔面へ、右足でさらに上段蹴りを放つ。
完璧な流れからの本命の蹴りだったが、白はそれすらも状態を逸らして避けると、剣を振ってメリアの腹部を切り裂いた。
「動きが、よくなった」
「斬られたけどね」
後方へ飛び下がり、数秒で腹部の傷が塞がっていく。
「最初の、切り上げ。フェイントでは、なかったな」
「本気で斬るつもりたったもの。フェイントのつもりでやったら、あんたは防がないでしょ」
「その、瞳か」
魔眼のおかげで動きは読める、体の調子も悪くない。
(なのに……勝てるイメージすらできない)
前の世界から暗殺を何度も行い、こちらの世界では剣士として鍛錬を積んできた。
そんな長い年月の中でも、ここまで実力の離れた相手はいなかった。
(今の私の全力を試すには、これ以上ない相手ね)
大きく深呼吸を繰り返し、集中力を高めていく。
「もう、いいか」
「あら、待ってくれたの? 親切ね」
「騎士として、正々堂々と、戦うだけだ」
「あっそ。騎士様も楽じゃないわね」
ソフィアがミツキを呼んでくるまで、まだしばらくあるだろう。
刀を構え、メリアは地面を蹴り3度目の近接戦を仕掛けた。
「すみません、やっと準備できました!」
ミツキたちがフレーリアから出発して1時間後。
馬車のトラブルにより遅れていたメリアとソフィアも、ようやく王都に向けて出発する。
「すぐに追いつくよう、少し急ぎますね」
「ゆっくりでいいわよ。ねぇ、ソフィア」
「うん。景色を見ながら、ゆったり進も!」
「ありがとうございます」
馬を操る男は焦っていたようだが、2人の言葉を聞くと落ち着いたようで、馬車の速度も安定する。
「王都楽しみだな〜」
「ソフィアも行ったことないの?」
「一応あるんだけど、ちゃんと見て回ったことはないかな。だからすごく楽しみ!」
「私もよ。王国の首都なんだし、さぞ賑わっているんでしょうね」
「着いたら一緒に観光しようね」
「いいわよ。ミツキも加えて3人で、ね」
「うんっ!」
嬉しそうにはしゃいでいるソフィアを微笑ましそうに見るメリア。
そんなふうに会話や景色を楽しんでいると、最初の街を通過する。
今日の目的地はもう1つ先の街で、そこで一泊して翌日王都に着く予定だ。
「あとどのくらいだろう?」
「あと3時間ぐらいじゃないかしら」
街で買った弁当を膝に置き、遅めの昼食を取りながらそんなことを話す。
「ん、あれ? おかしいな。なんでこんなところに兵士さんが……」
「兵士?」
「いたら変なの?」
「はい。この辺は魔獣なんて出ないと思うんですが……」
2人が馬車から身を乗り出すと、確かに前方に1人の兵士が見える。
こんな街から少し離れた場所に1人とは変だが、とにかく止まろうと馬車の速度を落とした時だった。
兵士が手に持った槍を投擲した。
「え」
「ソフィア!」
「弾け!」
狙いは男だったが、すぐにソフィアが前に出て槍を弾く。
ギィィィンッ!!!
と、聞いたこともない甲高い音がすると、ソフィアが衝撃で馬車の後方へ投げ出された。
「ソフィア、大丈夫!?」
「私は平気だよ。それより前を!」
「わかったわ。馬車を今すぐ止めて」
「ひいっ!」
男は手綱を操り、急ブレーキをかけて馬車を止める。
その間兵士はこちらの動向を見ているだけで、攻撃はしてこなかった。
「前の街まで逃げて。今すぐよ」
「で、ですが」
「足でまといなの。早く!」
「は、はい!」
馬車から降りて男を前の街にまで返すと、ソフィアも隣に戻ってくる。
「怪我は?」
「左手がちょっと痛いかも。あんなに強い衝撃は初めてだよ」
「目の前にしたらわかるわね。あれは私たちの手には負えないわ」
兵士は腰の剣を引き抜き、正眼に構えた。
その一連の動きさえもが恐ろしいほど洗練されており、メリアは剣士として途方のない実力差を感じる。
「どうするの?」
「私が時間を稼ぐわ。ソフィアはミツキを呼んできて」
「1人じゃ危険だよ」
「知ってるわ。でも、ミツキ以外じゃあんなの歯が立たないわよ」
「……わかった。すぐ戻るね」
「頼んだわよ」
メリアが刀を抜いて構える間に、ソフィアは靴を脱いで裸足になると、地面に魔法陣を浮かび上がらせる。
「弾いて!」
地面と自分の足に磁力を付与し、反発させることで爆発的な速度を生み出す。
一瞬で背中が小さくなったソフィアを見送り、メリアは目の前の敵に集中する。
「なんでソフィアを止めなかったわけ? さっきも追撃してこなかったし」
「何も、変わらない」
話しかけてみると、兵士は顔こそ隠れてわからないものの、中性的な声で答えた。
「俺は、緑を救出する。何をしようと、その結果は、変わらない」
「緑? ウナアーダの兵士なの?」
「礼儀として、名乗ろう。俺は、ウナアーダ色の騎士、白」
「白……巫流剣士メリア。あんたを止めるわ」
両者が名乗り、先にメリアが地面を蹴る。
時間稼ぎのつもりだが、防戦一方になるつもりはない。
攻撃を絶やさず反撃させないというのが、理想の時間を稼ぐ戦い方だ。
「巫流《流渦突》」
繰り出すのは、勢いを乗せた突き技。
剣で防ごうとしても弾き、次の攻撃に繋げられる技を選ぶ。
「遅い」
だが、その考えは甘かったと痛感させられる。
白は突きを簡単に受け流すと、流れるような動作でメリアの右肩を切断した。
見蕩れるほど完璧な動作に、メリアは反応もできなかった。
「これで、終わり」
「終わってないわよ。巫流《雨突》」
「ん?」
連続して繰り出される突きは全て受け流すが、それよりも目を引いたのはメリアの右腕だ。
確実に斬ったはずの右腕が、何事も無かったかのようにくっついている。
「斬った、はずだが」
「斬れてなかったんじゃない?」
「ふむ……」
少し考える素振りを見せた白だったが、次の瞬間消えた。
そして同時に、メリアの左腕が宙を舞う。
(斬られた!? 何も見えなかったわよ!)
反応もできずに左肩から先を斬られたが、肩と左腕、それぞれから細い触手が伸びて絡むと、左腕を引き寄せてくっつける。
「人間、ではないな。化け物の類の、ようだ」
「化け物はあんたでしょ」
ウナアーダ最強の騎士である白のことは知っていたが、ここまで強いのは予想外だ。
今も首を狙われず、様子を見られた。
「面倒な、相手だ」
「今の攻撃で首を狙わなかったこと……後悔させるわ。魔眼解放」
メリアの深い青色の瞳が輝き、空神の魔眼が開放される。
「何か、変わったか?」
「鈍感野郎には動きでわからせてやるわよ!」
最初と同じようにメリアが地面を蹴り、今度は右肩を狙って切り上げる。
白も同じように受け流そうとするが、その動きを見たメリアは刀を止め、左足で上段蹴りを繰り出す。
その蹴りも右腕で軽く防いだ白の顔面へ、右足でさらに上段蹴りを放つ。
完璧な流れからの本命の蹴りだったが、白はそれすらも状態を逸らして避けると、剣を振ってメリアの腹部を切り裂いた。
「動きが、よくなった」
「斬られたけどね」
後方へ飛び下がり、数秒で腹部の傷が塞がっていく。
「最初の、切り上げ。フェイントでは、なかったな」
「本気で斬るつもりたったもの。フェイントのつもりでやったら、あんたは防がないでしょ」
「その、瞳か」
魔眼のおかげで動きは読める、体の調子も悪くない。
(なのに……勝てるイメージすらできない)
前の世界から暗殺を何度も行い、こちらの世界では剣士として鍛錬を積んできた。
そんな長い年月の中でも、ここまで実力の離れた相手はいなかった。
(今の私の全力を試すには、これ以上ない相手ね)
大きく深呼吸を繰り返し、集中力を高めていく。
「もう、いいか」
「あら、待ってくれたの? 親切ね」
「騎士として、正々堂々と、戦うだけだ」
「あっそ。騎士様も楽じゃないわね」
ソフィアがミツキを呼んでくるまで、まだしばらくあるだろう。
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