人生の続きを異世界で!〜天界で鍛えて強くなる〜

水泳お兄さん

スカウト

「皆ご苦労だった。今日は宴だ!」

 ウナアーダ・魔国連合軍に勝利した夜、フレーリアでは飲んで騒げの宴が行われいた。
 圧倒的とも言える勝利を収めたことで、兵士だけでなく住民も楽しそうに騒いでいる。

「今回の功績者だが、俺は3人いると思う。そして、その3人は学園の生徒だ!」

「生徒だと!?」

「サクレット副団長より活躍したってのか?」

「すげぇ。そんなやつが学園にいたのか!」

 戦士団ではなく学園の生徒が功績者だと聞き、ざわざわと声が大きくなる。

「まず、城壁上から敵を交戦前にかなり減らしたソフィアだ。この子のおかげで我々の犠牲は大きく減った! 兵士全員の命の恩人とも言える!」

「えへへ。褒めて褒めて〜」

 前に連れてこられたソフィアは、ご機嫌そうに手を振って愛嬌をふりまいている。

「……酔ってんな」

「酔ってるわね」

 その様子を見ていたミツキとメリアは、2人して不安そうな顔をする。
 この国では飲酒の年齢制限はないが、それでも心配してしまう。

「2人目はウナアーダ軍の指揮官を討ち取り、その後も1人で100人以上を倒したメリアだ! ウナアーダ軍と戦ってた兵士は感謝しておけ!」

「私ね。お礼はお金とか服とか食べ物でいいわよ!」

 呼ばれたメリアは前に出ると、前方の人だかりに大声で言い張った。
 傲慢な物言いだが、この雰囲気のせいか受けも良いようで、皆笑っている。

「最後は皆は知らないかもしれないが、ウナアーダの緑の騎士を捕縛し、魔国の幹部を倒した、まさに救世主! 名前はミツキだ!」

「恥ずかしいな。とりあえず、この街が無事でなによりだよ」

 前の2人とは違い、こうした人前に出ると緊張してしまうミツキは、腰が低い物言いだ。

「緑の騎士と幹部って……嘘だろ!?」

「どっちも化け物だって聞いたぞ!」

「それを倒せるなんて、まるで団長みたいだ!」

「強くて自慢せず謙遜して、すごくかっこいい!」

 だが、功績も大きいため反応が大きく、ざわつきは一向に収まりそうにない。

「ミツキ、君は本当にすごいな。この国で君以上に強い人間は、おそらく今はいないだろう」

「そ、そうかな。嬉しいよ」

 人間じゃないけど、というツッコミを心の中でしつつも、今はこの賛美を気持ちよく受ける。
 自分の正しいも思ったことをした結果がこれだ。
 やはり、正しいということは正義なのだと天界にいるティアに感謝する。

「さて、ここで私から提案だが、他の戦士団の団員とも検討した結果、この3人を戦士団としてスカウトしたいと思う。受けてくれるか?」

 振り返り、並ぶミツキたち3人にサクレットが聞いてくる。
 その答えはもちろん、

「喜んで受けるよ!」

「手間が減ったわね」

「だな。こっちからお願いしたいくらいだ」

 全員がスカウトを受けた。

「決まりだ。では明日、捕縛した緑の騎士も連れて王都に向かう。学園にはこちらから連絡しておこう。それでは改めて、新たな戦士団団員を歓迎して乾杯!」

「「「乾杯!」」」

 ミツキたち3人はそれぞれ引っ張りだこになりながら、夜遅くまで宴は続いた。

 * * *

 翌朝、寮で寝ていた3人は扉のチャイムで目が覚める。
 ミツキが扉を開けると、戦士団副団長のサクレットが立っていた。

「少し早かったかな?」

「いえ、そろそろ起きる時間だったので大丈夫です」

「そうか。だがミツキくん……君は女の子2人と生活をしているのか」

「いや、それは成り行きというか……」

「まあこの国なら問題はないが、いたずらに遊ぶのは感心できないな」

「誤解ですって!」

「ははは、わかってるよ。少しからかってみただけだ。では、門の前で待っているよ」

「勘弁してくださいよ。準備して行きますね」

 サクレットにそう伝え、まだ寝ているメリアとソフィアを起こす。

「お前ら起きろ。王都行くぞ」

「……おはよう。そうだったわね」

「んん、まだ眠い〜」

 寝起きの良いメリアはすぐに起き上がり、隣で二度寝しようとしているソフィアを起こす。
 昨日の夜はかなり遅くまで起きていたため、眠気が残るのも仕方ない。

「馬車で寝ればいいでしょう。ほら、着替えなさい」

「メリアが着替えさせて〜」

「まったくもう」

 2人が起きたのを確認し、ミツキはさっさとリビングに戻って大剣などの装備を整える。
 30分ほど準備をしていると、メリアとソフィアも準備を終えて来た。

「おめめパッチリで準備おっけー!」

「ミツキは準備できてる?」

「バッチリだよ。じゃあ行くか」

 3人で揃って寮を出て、鍵を学園の教師に渡す。
 それからフレーリアの門まで行くと、馬車が2台とサクレット、それと鎖で手足を縛られたヨハンが立っていた。

「待ってたぞ」

「久しぶりだな、めっちゃ強い少年」

「ミツキだよ。緑の騎士も一緒に行くのか?」

「おいおい、俺もヨハンって名乗ったろ? 殺し合った仲なんだし、仲良くしようぜ」

「お前は立場を弁えろ。ミツキくんが一緒に来てくれるのが1番安全だからな。私とこいつとミツキくん、ソフィアちゃんとメリアちゃんで馬車を分ける」

 昨日のスカウトの後、ミツキたち3人は正式に戦士団になるために、王都に呼ばれることとなった。
 出発はヨハンを運ぶことも兼ねてすぐの方が良いため、今日の早朝になった。

「わかりました。2人はそれでいいか?」

「私はいいよ〜」

「私もいいわよ。1日かかるし、女同士の方が気楽だわ」

「確かにな」

「決まりだ。では私たち3人が先に向かおう。この男を引き渡す手続きもあるしな」

「はい。じゃ、また後でな」

「うん。また後で!」

「そいつ逃がさないようにしなさいよ」

 2人に見送られ、ミツキとヨハンとサクレットの3人を乗せた馬車は、フレーリアを出発した。

「さて、ミツキくん。まずはスカウトを受けてくれてありがとう」

「いや、俺も戦士団に入りたかったので嬉しかった」

「そうか。君のような強者が来てくれれば私達も一安心だ」

「ありがとう。けど、俺たちやサクレットさんがいなくなって、フレーリアの防衛は大丈夫なのか?」

 再び魔国やウナアーダの侵略があった場合、あの戦力では防ぐのは難しいはずだ。

「それなら心配いらない。夜明けに戦士団の増援が到着してな。私も直ぐに戻るし、しばらくは問題ないだろう」

「そうだったか」

 どうやら心配はなさそうだ。

「ミツキだったか、戦士団に入るんだな」

「おい、誰が喋っていいと言った?」

「大丈夫だよ、サクレットさん。俺が戦士団に入ったらなんなんだ?」

「いやいや、あんたみてーのが本格的に戦うなら、王国も安泰だと思ってな」

「それはどうも」

「まるで勇者みてーだよ」

「勇者?」

「なんだ知らねーのか。王国にはな、それはそれは強い勇者様がいたんだよ」

 ミツキはこの世界の戦力を細かく調べて勉強したが、勇者など王国にはいなかったはずだ。
 それに、ヨハンの言い方からすると、

「死んだのか?」

「おっ、察しがいいねぇ。勇者は魔国の魔王と戦って相打ちになったんだ。そのおかげで、ウナアーダの1人の騎士が最強になったんだけどな」

「白か」

「よく勉強してんな。そう、我が精霊国家ウナアーダ最強の戦士、『白』の騎士だ」

「そんなに強いのか?」

「俺が100人いても勝てないだろうな」

「そんなに……」

 このヨハンも決して弱いわけでなく、むしろこの世界では上位に入る実力の持ち主だ。
 そんな男が100人いても勝てないとは、強さの想像がつかない。

「おい、なんで貴様はそんな話をする」

「暇潰しだよ。王都まで結構かかるんだろ? それまで暇だしな」

「俺はこの人の話聞いて損は無いだろ。ためになるし、嫌いじゃない」

 先程からずっと注意深く見ているが、やはり悪意は見えない。
 嘘をついても悪意は見えるため、話も信憑性が高い。

「ミツキは見る目があるな。どうせやることもないし、いろいろ話してやるよ」

「楽しみにしてる」

「ミツキくんがそう言うなら……だが、あまり心を許すなよ」

「大丈夫、わかってるよ」

「注意は終わったな? では、まずウナアーダの色の騎士について話してやろう」

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