人生の続きを異世界で!〜天界で鍛えて強くなる〜

水泳お兄さん

殺戮兵器

 3人で同じ部屋に暮らして、2週間が経過した。
 長くいるとその環境にも慣れるもので、今ではミツキは同室の女子2人をあまり気にしなくなっていた。
 学園でもっとからかわれるかと思ったが、国が一夫多妻制を認めているため、それほど触れられることはなかったのも大きい。

「ただいまー」

「あら、まだ昼なのに早いのね」

「お前もだろ。近接戦闘の授業が中止になったし、特にやることもなかったからな」

 いつもと同じように授業を受けに行ったミツキだが、教師が休みで中止になったため、1度部屋に帰ってきていた。
 部屋には同じく暇になったのか、メリアがソファーに寝転がっていた。

「暇なら私に付き合いなさいよ」

「どっか行くのか?」

「服が欲しいの。男としてあんたの意見を聞かせなさい」

「別にいいけどさ。昼食は奢りな」

「嫌よ。私と出かけられるだけでありがたいと思いなさい」

「偉そうだな」

 口では文句を言うが、2人ともすぐに支度して学園を出る。
 街は平日の昼前ということもあってか、仕事や授業なとで人気が少ない。

「やっぱり人少ないわね。いい時間帯だわ」

「確かに空いてていいな」

 話しながら、昼食を食べて服屋を見て回る。
 互いにこの世界の出身ではないという共通点があるからか、ミツキもどこか安心できた。

「次はどこに……暗くなってきたわね」

「いつの間にか結構時間経ってたな。俺ここ知らない場所だし」

 しばらく街を歩いているとかなり時間が経っていたようで、日が落ち始めている。

「ソフィアも心配するし、戻るか」

「そうね。早く帰りましょ」

 遠くから聞こえてくる人々の喧騒を聞きながら、並んで歩く。

「ミツキ、私今がすごく楽しいわ」

「俺もだ。お前ら2人と過ごすのは、最高に楽しい」

「気が合うわね」

「珍しくな」

 顔を見合い、どちらともなく笑う。
 この日常が楽しく、そしてできることならもっと続けばいいと、そう感じられる。

「すごく楽しい。最高よ。だから……ごめんなさい」

「え……メリ、ア?」

 メリアが突如立ち止まったので振り返ろうとするが、それより早く背中に鋭い痛みが走る。
 朦朧もする意識の中、視界に映ったのはメリアの悲しそうな表情だった。

 * * *

「これが我々と同じ異世界者か」

「はい、お父様」

 誰かが話している。
 男性と女性の声で、女性の方は聞いたことがあった。
 うっすらと目を開けていくと、そこは見た事もない薄暗い部屋だった。

「ふむ、鍛えられたいい体だ。それに、免疫力も非常に高い。本当にナイフを刺したのだろうな?」

「実験体のため傷つけないよう浅く刺しましたが、確実に麻痺毒は体に入ったはずです」

「ますます素晴らしい。これでお前は最高傑作に近づいたわけだ」

「はい。嬉しいです」

 手足は椅子に縛られていて、身動きが取れそうにない。
 目の前で喋っているのは、見たことの無い初老の男性とメリアだ。

「どういう状況だ?」

「初めまして、ミツキくん。私はかんなぎラルフ。君と同じ異世界者で、メリアの父だ」

「あー、お父さんですか。で、これ外してもらえます?」

「それはできない。君は今から、メリアの一部となるのだ」

「は?」

 言葉の意味がわからず、首を傾げる。

「わからなくても無理はない。私たち巫家は代々暗殺稼業を生業としているのだが、その中でもメリアは別格でね。最高傑作に仕上げるため、様々な遺伝子を入れているのだよ」

「なんだよ、それ。物みたいに扱ってんじゃねぇよ」

「物とは心外だね。私はメリアを愛している。その愛に応えるのは、娘でして当然ではないかね?」

「バカげてる。メリア、お前はそれでいいのかよ」

「無駄だ、メリアは私に」

「お前じゃなくてメリアに聞いてるんだよ」

「おお、怖い。メリア、お前からも言ってあげなさい」

 口を挟もうとしたラルフを睨んで黙らせ、メリアに真意を聞く。

「……私は、お父様の意思に従います。それが私という存在ですから」

「っ、メリア……お前、俺とソフィアとの生活は楽しいって言ってたよな? それに、あの悲しそうな表情も嘘だったのかよ」

「無駄だと言っただろう。メリアは最強の殺戮兵器だ。人を殺すことになんの感情も持たない。君との生活も、君を捕まえるためだけの嘘偽りだ」

「メリア……」

 じっとメリアを見つめるが、その顔は感情を感じさせず生気すらないのではと思わせる、

「1つ教えてあげよう。メリアを雇った3人の傭兵だが、どうなったか知っているか?」

「全治1ヶ月だったか、それがどうした」

「あの3人はな」

「お父様、それは言う必要はないのでは」

「お前は黙りなさい。あの3人は死んだよ。メリアが殺したんだ」

「メリアが……本当なのか?」

 メリアは肯定も否定もせず、ただそこに立っているだけだ。

「いやはや、よくここまで立派な暗殺者に育ってくれた。完璧な殺しの道具だ」

 愉快そうに笑うラルフに、腸が煮えくり返るような怒りを感じる。
 今の状況は手足を縛られ、武器もブレスレットや指輪といった装飾品も取られている。
 相手は手練の暗殺者が2人、圧倒的に不利だ。

「メリア、お前の本音を聞かせてくれ」

「話しかけても無駄だと言うのに……」

 呆れたような嘲笑を浮かべ、ラルフは止めるつもりがないようだ。

「お前が望むなら、俺は今からこの男を殺す。お前が望むなら、こんな些細なことは水に流す」

「私はお父様の意思に従うだけです」

「俺は、またお前やソフィアと学園生活を楽しみたい」

「私は……呪われています。ミツキやソフィアと同じ道は歩けません」

「道は踏み外しても、戻ることができる」

「もし私が望んでも、この状況はどうにもなりません。お父様は強いです。私に勝てないミツキでは、すぐに殺されてしまいます」

「俺は負けない。強いからな」

「私は……」

「聞いていれば、鳥肌が立つような寒い言葉ばかりだ。そもそも、兵器であるメリアに声が届くわけないだろう」

「本音を聞かせてくれ」

「メリア、もういい。今すぐこいつを殺しなさい」

 2人に名前を呼ばれ、メリアはすぐに動くことができなかった。
 父親は怖い、幼い頃から恐怖を植え付けられ、どんな言うことでも聞くように調教された。
 そんな父親へ逆らうことなど不可能で、刀を抜いてミツキへ歩み寄る。

「そうだ、それでいい」

「ミツキ、最後に言いたいことがあります」

「なんだ?」

 刀を振り上げ、メリアが仮面のような無表情の顔を崩し、涙を流す。

「助けてっ!」

「任せとけ!!」

 バギッという音が響き、ミツキを拘束していた手錠が引きちぎれる。
 振り下ろされた刀は柄を掴まれ、ミツキを斬らずにゆっくり下げられる。

「もうお前は、人を殺す必要はないんだ」

「っ、ひうっ、うっ、うう」

 嗚咽混じりに泣き出したメリアの頭を落ち着かせるように優しく抱きしめ、刀を取って椅子に座らせる。

「どうやら、メリアはお仕置きが必要なようだ。その前に……君は惨たらしく殺そう」

「やれるもんならやってみろ」

 鞘から刀を抜刀して構えるラルフに、初めて殺意という感情が芽生えるのを感じた。

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