人生の続きを異世界で!〜天界で鍛えて強くなる〜

水泳お兄さん

異世界者

「なんでこんなことをした」

「お金が欲しいからよ。簡単でしょ?」

「それだけのためにソフィアを狙ったのか?」

「ソフィアだけじゃなくて、あんたもよ、ミツキ」

 メリアが戦闘態勢ではないからか、ソフィアが短剣を鞘に収めてこちらへ走ってくる。

「ほんとにメリアだ。久しぶり〜」

「命を狙われたっていうのに、随分余裕そうじゃない」

「そうかな? それよりさ、そんなにお金貯めて何か欲しいものでもあるの?」

 命を狙われた張本人だというのに、ソフィアは気にした様子もなく話を続ける。

「はぁ? 生きるために決まってるじゃない。家賃や食費、服代なんかで必要でしょ」

「え、それだけ?」

「それだけよ。私はこの世界の人と違って頼れるものがないし、仕方ないの」

「えっと……」

 何を当たり前のことを聞いているのか、という反応をされ、ソフィアがどう言うべきかと悩んでいる。

「金なら学園の依頼をこなせばいいだろ。あと寮には入らないのか?」

「依頼? 寮?」

「入学の時に説明されただろ?」

「……聞いてなかったわ」

「メリア、お前……天然か?」

「天然じゃないわよ!」

 目を逸らしながらボソッとそう言ったメリアに、思わず本音が出る。

「ちょっとその話詳しく聞かせなさい」

「偉そうな物言いだな」

「うっさい! ……教えてください」

 小声で早口だったが、ちゃんとお願いしたメリアに学園の寮制度や依頼のシステムについて詳しく説明する。

「ーーと、こんな感じだ」

「私今までそんな条件を見落としてたの? 学生のことを考えた最高の学園じゃない」

 説明を熱心に聞いていたメリアは、途中何度も首を振って感心していた。

「よし、そうとわかれば早速寮に住めるように学園に申請するわ」

「俺たちを殺すのはもういいのか?」

「私は好きでこの仕事をしてるわけじゃないもの。むしろ逆よ。罪のない人を殺すのは大っっっ嫌いだから、あんたとソフィアは適当に気絶させるつもりだったわ」

「確かに、私とやってる時は急所は狙われてないよ」

「殺すなら後ろから技を使ってサクッと殺るわよ。じゃ、また会いましょ」

「待て待て。誰かに雇われたんなら、それが誰か教えろよ」

「傭兵のレオってやつの部下みたいだったわよ。まぁ、そこら辺は私が責任もって報告するわ」

「そうか、わかった。ただ、明日ちょっと話がしたい」

「私もよ。授業には出るから、その終わりに話しましょ」

 こうして、ひらひらと手を振りながらメリアは夜に溶け込むように消えていった。

 * * *

 ピンポーン。
 朝早くまだ外も薄暗い。
 そんな時間に、寮の自室のインターホンが鳴らされた。

「ふわぁ、こんな早くから誰だよ」

 それで目が覚めたミツキは、少し離れて寝ているソフィアを見ないようにしつつ、あくびをしながら鍵を開けて扉を開く。

「はーい、ってメリア?」

「そうよメリアよ。ほら、早く入れなさい」

「ソフィア寝てるんだけど」

「はぁ!? あんたまさか2人で暮らしてんの!?」

 無理矢理中に入ってきたメリアは、一人暮らしだと思っていたようで驚き、大きな声を出してしまう。

「んん……おはよ。あれ、メリア?」

「あ、ごめん、起こしたわね。ミツキ、あんたこれ犯罪よ」

「ソフィアが申請したんだよ! 勝手に俺を犯罪者にするな」

「なんだ、そういうことだったの」

「ったく。で、用事があってきたんだろ?」

「ミツキに話をするつもりだったけど、ソフィアも聞いていいの?」

「大丈夫だ。というか、ソフィアも俺の仲間だからな。聞いてた方がいい」

 ソファーに腰掛けて話そうとするが、ソフィアにも聞こえるためどうするか悩む。
 これからどんな話をするか、おおよそ検討がついているミツキは問題ないと判断した。

「そ。じゃあソフィアも聞きなさい」

「なになに?」

「私ね、異世界から来たの」

「……ごめんね、私まだ寝起きだから、聞き間違えちゃったかも」

「異世界から来たって言ったのよ」

「えー……なんでミツキは驚かないの」

「そうだろなぁって思ってたから」

 メリアがかなり露骨な言葉を使っていたこともあり、この世界の出身でないことは予測がついていた。

「私全然わからなかったんだけど!」

「ミツキは別よ。私と同類なんだから」

「同類?」

「悪い、いつか言おうと思ってたんだが……俺もこの世界の人間じゃないんだ」

「…………」

 ソフィアがフリーズした。

「そりゃこうなるだろうな」

「普通信じないでしょうね。私とあんた以外は」

「いつから俺がこの世界の住人じゃないって気付いてたんだ?」

「模擬戦の動きを見た時からね。この時期に編入なんて変だし、動きも戦い慣れしてた。私と似てたのよ」

「自分と重ね合わせたわけか」

「魔法も使いそうな素振りを見せなかったし、割と簡単にわかったわよ」

「そりゃ気をつけないとな。そういえば、昨日お前に依頼したやつらはどうしたんだ?」

「しばいたわ。殺してないけど、1ヶ月ぐらいは動けないぐらいにはなったんじゃないかしら」

「過激だなぁ」

「よし、よし。整理できたよ!」

 適当に雑談をしていると、ソフィアが状況を整理して復活した。

「整理も何も、信じるのか?」

「もっちろん! ミツキが嘘つくわけないもんね! それに、私も普通じゃなくて魔女だし、2人と同じみたいなものだよ」

「魔女ってあの魔女よね。羨ましいわ」

「羨ましい? なんで?」

「だって私、魔法使えないから」

「俺も使えないな」

「そうなんだね。魔法はあって当然のものだから、使えないなんて考えたことなかったよ」

「でしょうね。だから、魔法についてもあんまり知らないのよね。私の蹴りを弾いてたのってどういう原理なの?」

「ふっふっふー。いいでしょう。じゃあいい機会だし、ソフィア先生がが魔法について説明してあげる!」

 恐らくこの3人の中では、魔法関連の授業を中心に受けているソフィアが魔法について1番詳しい。
 ミツキとしても魔法は使えないため、よく勉強していなかったのでありがたい。

「簡単に言うと、魔法っていうのは魔力を消費して行使する技だよ。魔力は誰にでも流れてるエネルギーだね」

「だから私とミツキは使えないのね」

「そうだよ。魔法は十人十色で、種類も無限って言われてるの。発動は無詠唱でもできるけど、ちゃんと詠唱した方が効果は高いね。で、ここからは魔女についてだよ」

 魔法の説明は簡潔に理解しやすく終えてくれ、今度は魔女の説明に移る。

「魔女の特徴は魔力量が多いのと、魔法陣を使うことだよ。ちなみに私も使えるんだよ」

「魔法陣なんて、言葉も聞いたことないわ」

「俺はこの世界の勉強してる時に、言葉だけ聞いた」

「魔法陣には、大きく分けて2つの効果があるの。1つは魔法の強化で、もう1つは魔法の遠隔発動だね。罠みたいにできるんだよ」

「へー、便利なもんね」

「まだ使いこなせないけどね。これで魔法の簡単な説明はおしまい。あとは、私の魔法だったよね?」

「そうね。磁力や斥力なんかを使ってるのはわかったんだけど、なんで蹴りが弾かれたのかわからなかったわ」

「そういや、俺もソフィアの魔法は詳しく知らないな」

「私の魔法はメリアの言う通り、磁力魔法だよ。でもちょっと特殊で、生身で触れたものに磁力を付与できるの」

「蹴りが当たった瞬間に磁力を付与して、反発させることで威力を落としたってわけね。とんでもない魔法じゃない」

「そのワンピースにも意味があったんだな」

「えへへ。まだ練習中だけど、接近戦も少しづつ上手くなってるからね」

 自分の魔法や戦闘が褒められたソフィアは、両頬を抑えて照れ照れと顔を緩ませる、
 努力の成果が出たことが嬉しかったんだろう。

「タネも開けてスッキリしたし、とりあえず荷物置くわね」

「は? なんでだよ」

「言ってなかったっけ? 私今日からここに住むのよ」

「初耳なんだけど。なんでそうなるんだよ」

「申請が急すぎて、女子用の寮が空いてなかったのよ。それに、ミツキ1人だと思ってから」

「いやお前、俺がいいって言ってもソフィアがだな」

 ちらりとソフィアを見ると、嬉しそうに瞳を輝かせている。

「わー、メリアも一緒に住むの? 賑やかになるね!」

「らしいわよ」

「絶対変な噂が流れる……」

 3人住めるだけの広さはある部屋だが、女子2人と生活するなど想像もしていなかった。
 これからの生活や学園で冷やかされるのを考え、ミツキは胃が痛むのを感じた。

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