異世界に侵食される地球で元勇者は生きていく
1話 帰還
鋭い痛みが全身を襲う、それと同時に激しい光勇吾を包み込み視界が真っ白になる。
自分は今何処にいるのだろ?まるで嵐の海に飛び込んだかのようだ、このまま死んでしまうのか、そんな考えが勇吾の頭をよぎる。
しかし段々と光が収まっていき、目を開けるとそんな考えも吹き飛んだ。
自分の前に広がる光景を見る。
その光景に勇吾は、心の底から湧き出る歓喜に全身を震わせながら泣いていた。
「アァッ―――」
それはそのはずだ、目の前に広がるのは夢にまで見た、今までずっと見たかった光景――――――
自分の家がそこにはあった。
家の中からは会いたくて仕方がなかった、両親と妹の声が聴こえてくる。
ようやくだ、ようやく家族に会える!早く会いたい、早くただいまと言いたい!
その一心で、倒れそうになる体を剣で支ながらゆっくりと、玄関の前まで進んでいく。
そしてドアノブに手を掛け玄関を開けた所で遂に限界が来たのか倒れてしまう。
「ん? 今玄関の方で何か物音がしたようだが、なんだ?」
家の奥からそんな声とともにこちらに向かって来る足音が聞こえる。
そして勇吾の前に1人の男性が姿を現す。
その男性は勇吾に似た顔立ちで勇吾前に信じられないと言った表情でこちらを見ている。
男性のその表情に勇吾は我慢出来なくなり、涙でぐちゃぐちゃになった顔で遂にその言葉を口に出す。
「ただ、いま」
「ただいま、父さん!」
その声を聞いた瞬間男は叫んだ。
「勇吾!!!」
その男性、父親はそう叫びながら倒れている勇吾の所まで走って行く。
「お前!今まで何処に行っていたんだ!!3年もいなくなって、どれだけ探したと思っている!」
「それにその怪我はどうした!血だらけじゃないか!」
父親は勇吾の姿を見て、顔色を悪くしながらもようやく帰ってきた息子に、帰ってきたくれた喜び、連絡も無く急に消えた事への怒り、明らかに重症の傷の心配。様々な感情を込めながら叫ぶ。
「だい、じょう、ぶ、だか、ら」
決してそんなわけはないが、心配させまいと
父親に向かってそう言うと、勇吾は立ち上がろうと体を起こし始めた。
「お、おい勇吾、無理はするな!立ち上がろとしなくて良いから、そのまま待っていろ!今すぐ救急車をよんでやるから!!」
父親がそう言うもそれを無視して勇吾は立ち上がる、しかしやはり無理があり倒れそうになってしまうが、父親が咄嗟に体を支えたことにより、どうにか地面との衝突は避けられた。
父親はだからそのままでいろと言おうとするも勇吾の表情を見て言葉を詰まらせる。
男は父親の顔を見ると、嬉しくて仕方が無いといった表情でもう一度あの言葉を口にする。
「た、だいま」
その言葉は震えていて、そして何より喜びに溢れていた。
「ッ―――!」
その言葉に父親も涙す。
そして、その言葉に答えてやろうと泣きながらも言葉を返す。
「ああ!おかえり勇吾!!よく帰ってきた!!!」
その言葉を聞いた勇吾は意識が薄れるのを感じた。むしろ今まで意識を保っていたのが奇跡だったのだ。
「待っていろ今助けを、おい母さん!雪音でも良い!!急いで救急車を呼んでくれ!」
父親はリビングに居るであろう妻と娘にそう叫んだ。
「どうしたの貴方、さっきから叫んで?」
「もううるさいな〜何かあったのお父さん?」
そう言いながら2人がこちらに向かってくる。
そして玄関に居る2人を見て、2人共声をあげた。
「ゆうちゃん!?」
「うそ!兄さん!?」
今まで行方意不明だった、傷だらけの勇吾を見て2人は驚きながらも近寄ってくる。
「そうだ!勇吾帰ってきたんだ!!だが、重症だから急いで救急車を呼んでくれ!」
「わ、わかったわ!待っていて!!」
母親はそう言いながら携帯を手に取り電話をし始める。
「兄さん!何があったの!大丈夫なの!?」
母親と妹のそんな言葉が聞こえてくるが口が上手く動かない。
ようやく帰ってきたんだ、そんな事を考えながら勇吾は完全に意識を手放した。
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