異世界転移治療録 神とゴブリンと病院の卵

雲と空

13話 ドクロンブランド

リビング兼、寝室兼、休憩室兼、処置室は6畳だけど、化粧室やトイレ、シャワー室がつくとなかなか、いい感じ・・・結構な贅沢なんじゃないかと思う。




 あと、必要なものはパジャマ・・・は異世界生活セットに入ってたな。
 壁に3人分のパジャマがハンガーに掛かっている。
 サイズはフリーサイズなのかな、少し大きめの同じサイズのものが用意してある。
 タグにはフリーサイズ、130~190cmまで、と書いてある。
 ゴブリンも身長は130cmくらいはあるから、大丈夫だろう。


 そんなことより今の服装をなんとかしたい。


 自分の今の格好なんて、患者衣だ。裸足だし・・・。
 靴は・・・あれ?
 あの時はベッドの下に入り込んでたのかな。


 ついうっかり、履かずに来てしまった。 


 よく、こっちの世界で足の裏を切らなかったもんだ。
 歩いていても、痛くなかった。
 これも、異世界人への配慮だったりして・・・。
 着替えは、ジャージがあるから、そっちに着替えようかな。


 ダレンさんはきちんとした服を着ているけれど、ゴブリンはボロ布しかまとっていない。
 ほぼ、下は裸なんじゃないだろうか。
 一応、露出なく身体を覆えているけれど、それにしたって、今の格好は不憫だ。


 靴と・・・あと、自分用の武器なんかないかな。
 残り10ポイントで。


 「ダレンさん、ダレンさん。あの、明日狩りに行く時の装備とかリストにないですか?」


 「どうでしょう・・・あくまで、ここは病院だと思うんですけど」


 「モンスターを倒すことと直結しているのなら、あると思うんだけどな」


 「ちょっと待ってください・・・あ、あった。あったけど・・・殆どの装備が選択不可」


 「殆ど?じゃあ、選択できるものもあるんですか」


 「・・・天使の仮想セットは無料ですね、羽と天使の輪っか以外は全裸必須ですけど」


 「却下・・・何の意味が」


 「超合金ロボットの鎧。重さが900トンありますが」


 「それ、なんの合金ですか・・・動けませんよ」


 「あぶない水着・・・大事なところが全部出てます」


 「それ、意味なくないですか・・・変態?」


 「う~ん、プレミアムなドクロンキャラクターグッズ在庫処分品か。・・・趣味が悪いから、病院の卵を作っている時にも、大量に売れ残っていました。処分するのが面倒くさくて、ここに入れてたんですね」


 「ああ、女神が着てたやつね。細かい小物とか、色々入ってそう・・・。今のボロ布よりはいいんじゃないかな。それ、ください・・・ポイントが足りれば」


 「え?いいんですか?めちゃ、趣味が悪いですよ」


 「ゴブリンには着られるんじゃないかと思いまして、ボロ布よりはいいですよ。男物もあるんでしょ?」


 「どうでしょうか・・・。ポイントはかからないですよ、無料です。着てくれる人が居れば、作った本人も喜ぶかもしれません。全く売れませんでしたから」


 「女神が、唯一の消費者なんですね」


 「一応、ドクロン専門店は今もお店開いてますよ。今はドロシー様とそのお付き合いのある人が消費者になってます」


 「女神以外にも買う人いるんですね、意外~」
 まあ、ご機嫌とりだろうけど。


 ダレンさんがタブレットを操作すると、黒い箱でみかん箱くらいのがダンボール箱が5箱くらい現れた。
 さすが、ドクロン。
 5箱も届くんだね。


 「ねえ、ねえ?今、届いたものの中に、使えるものがあるか見てみてよ。その服だと、ボロッちいから、とりあえず・・・使えるものがあるかどうか」
 どう呼べばいいか、ちょっとわからなくて。
 ねえ・・・としか呼べなかったりする。
 変なこと言ったら、また、キモいおっさんの印象が強くなってしまう。 


 「え、このままでいいよ」
 「どうしてさ」
 「さっきから、趣味が悪いとか・・・世界で一人しか買わないとか・・・いってるじゃん」
 聞いてたのか。確かに言ってたけど・・・。
 「言ってないよ。それに、いいものだから、この世界を管理しているような女神様が、気に入ってるんだぞ」
 「女神様・・・」
 「そう、女神様が気に入ってるんだから、ちょっと、変でも大丈夫。なんか言われても、女神様愛用なんだから、大丈夫。みんな変だと思っていても大丈夫」


 「大丈夫?」
 「そう、大丈夫」
 「小林さん?それ、催眠術かなんかですか?」


 「・・・わかった、ちょっと見てみようかな」
 「そう。じゃあ、一緒に見てみようか」


 えっと・・・男物・・・オトコモノ。
 これなんて、カッコいいじゃないか。ボタンがドクロンのジャケット。
 ドクロンが前面に出てないのが、素晴らしい。
 ドクロンのトランクスは、下着だからキャラが出てても、全然OK。
 あと・・・このジーンズだって、ポケットにドクロンの刺繍があるのが気になるけど、お尻だから、そこまで目立たない。


 ドクロンって、男物の方がファッショナブルじゃないか。
 ブランド名はドクロンでいいのかな、DoKuRonって書いてあるからいいんだろう。


 思うんだけど、ドクロンというブランド。
 そこまで、悪くない気がする。
 女神の選ぶ服の選び方がダメなのであって・・・。
 実は、着る人が着て宣伝すれば、もっと売れるのかも。


 あの黒いドクロンだらけの服はパジャマだったのかな、なんて思ったりもする。


 
 「これ、男物はなかなか・・・いいんじゃないか」
 「うん・・・そうだね」
 「お兄ちゃんはこれと、これと・・・これの組み合わせが似合うと思うんだけどなあ」
 「うん・・・そうだね」
 ズボンは青で、ジャケットは黒。中に着るシャツは白。シャツの背中はドクロンだけど、前は胸にワンポイントだから、前を開けていればなかなかワイルドで、モテちゃうんじゃないか・・・お兄ちゃんとダレンさんしかいないけど」


 以前居た世界に連れて行ったら、ご近所のアイドルになっていただろう。
 自分は小学生ではないから、同年代の視点ではないけど、おっさん・・・いや、お兄ちゃんとしては素晴らしい可愛さだと思う。


 
 「うん、可愛・・・カッコイイ」
 「うん・・・そうだね」


 ん・・・?なんか、元気がなさそう。
 うん・・・そうだね、だけしか言わない。
 なんか、女物の服ばっかり見てる。
 でも、それ要らないんじゃないの?
 「女性ものは捨てちゃって、いいんじゃないかな」
 「え・・・。いや、とっておこうよ。勿体ない」
 「勿体ないの?だって、着る人いないじゃん」
 まあ、あの時見たものは、ちょっと・・・と思ったけれど、そんなには悪くない気もする。
 男物を見たからか。


 キャラがあまり、前に出ていないものは、それほど悪くない。
 ワンポイントでいいんだよ。そういうキャラは。
 でも、女性物の下着は要らないんじゃないか。
 「下着はこっちにカッコいいのがあるじゃん、下着は要らないだろ」
 「い、要るよ」
 「え、要らないでしょ」
 「あ・・・冒険者になったら、売れるから、とっておいた方がいいと思うな」
 「確かに・・・それはそうだな。ここの世界のお金持ってないもんね」
 「小林さん、ドクロングッズは売らないで下さい。あと、捨てないでください」
 「え・・・じゃあ・・・」
 「部屋に置いておいてください」
 「邪魔なんだけど」
 「つくった本人から、そういう希望が出ています」
 「捨てたら、どうなるの?」
 「さあ・・・。しかし、恨みは買わないほうがいいと思います」
 なんか怖いな・・・。悪魔だし。
 「単純に、粗末に扱ってほしくないということだな」
 「まあ、この施設はそもそも世界中に広めるつもりでしたから、同時にドクロンブランドも広めるつもりだったんだと思いますよ」


 「お兄ちゃん・・・」
 「そうだね、全部取っておこうか・・・なにか、呪いとかあったら怖いし」


 「うん」
 なんで、嬉しそうなんだ。


 ひょっとして、ゴブリンにはドクロンキャラはヒットしてたりして。
 女性用の下着なんて、何に使えばいいのか。
 そして、なんでとっておきたがるのか・・・。


 まあ、ドクロンのキャラクターがあしらってあっても、女性用の下着はそこまで、悪趣味ではないかなって、ちょっと思った。
 別に、だからなんだ、と言われればそこまでなんだけど。


 明日は何着て、冒険行くのだろう。ちょっと興味がある・・・。



コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品