異世界転移治療録 神とゴブリンと病院の卵

雲と空

10話 うがい手洗いは大事だよ

ま、そんなこと今はどうでもいいか。


 そんなことよりも・・・






 「洗面所って、つくれませんか?」


 「洗面所ですか?」






 「みんな外にいて、たくさん動いたじゃないですか。だから、家に入ったら、うがい手洗いしたほうがいいと思うんです。病人もいることですし・・・」


 病人って自分だけど。






 「えっと、そうですね・・・スライム66匹で132ポイント。洗面所が1個10ポイントです」


 「足りているのは足りているみたいですね」


 「初期投資です、つくっておきましょう。小林さんの身体と心のためにも」


 ダレンさんがタブレットを操作すると、シャワー室の横にドアが現れた。






 ドアを開けて入ってみると、水色で統一されたおしゃれな洗面所があった。


 洗面所というか、化粧台と言った方がしっくりくるかな。それが、なぜか3個。






 「ダレンさん、3個ありますけど・・・」


 「忙しい時、大変だと思いまして。女性だと時間かかるし、特に髪型のセットとか・・・」


 「女性いないじゃん。それに、髪のない人がそれ言う?」 


 「ひどいですね。ハゲでも光り具合とか、肌ツヤとか色々やることがあるんです」






 ・・・それ以上光らせて、どうするんだろうか、そう思いながら言わずにおく。






 水道を捻ると水が出る。異常ない、普通の水っぽい。


 でも、何かが足りない。






 「タオルと、歯ブラシと、クシと、コップと、髭剃りと・・・・、うがい薬と歯ブラシと歯磨き粉と、ドライヤーとシャンプーとリンスと、洗顔用石鹸と・・・化粧水と眉毛抜きとかの見出しなみセットがない」






 「小林さんって、細かいんですね」






 「細かくない。・・・いや、細かくないです。歯ブラシとタオルとかは自分のがあったか。シャンプーは・・・病院のを使ってたからな。あ、でも愛しの弟のがないじゃないか。あと、ずっと、患者衣で過ごすのもな~」






 「贅沢ですね。元の世界にあるようなものがこの世界にあるとでも?・・・ん、あるみたいですね。異世界生活品セット。第23異世界の生活品が詰まった生活セットです、シャンプーから髭剃り、爪切り、タオルなどが入っています・・・ですって」






 「さすが、悪魔がつくった病院。骨抜きにする方法をわかってらっしゃる」






 「小林さん、勘違いしちゃあいけません。あくまでも、この病院の医学を進歩させるために、モンスターを倒し続ける必要があって、少しでもはかどらせるためのものですよ。よりよく働かせるためのものです」






 「ところで、その異世界生活セットいくらですか?エネルギーポイント」






 「2ポイントです」


 「安い、やっちゃってください」






 残り100ポイントか。






 タブレットが操作されると、タオルがタオル掛けとともに現れ、歯ブラシにコップ、くし等が化粧台や周辺へ装着されていく。まるで、心霊現象だ。急にコップが現れ、びっくりしてしまった。


 スライムしかエネルギーがないからか、それとも、つくった人の趣味なのか、全部ライトブルーで統一されている。










 「なんだか、すごいですね。楽しくなってきました」


 「それは良かった。じゃあ、他のも入れますよ」


 「その前に、ちょっと待ってください。折角だから、みんなでうがい、手洗いしましょう」


 「うがい、手洗いってなに?」


 ゴブリンだから、してないだろうな・・・きっと。


 しなくても病気とか、感染症にかかるところなんて、考えられない。


 でも、教えてあげよう。お兄ちゃんが。






 「じゃあ、お兄ちゃんがやるから、よく見ておくんだぞ。じゃあ、3人で並んで洗いましょう。ダレンさん一番右で、俺が一番左。真ん中に来て。化粧台手を洗う時は、まず、水で始めに洗ってだな・・・石鹸を付けて・・・」


 「水で洗って、石鹸つけて・・・」






 「3人並んで、手を洗うなんて神になって初めてかもしれません。なんか、いいもんですね・・・」


 「ハ・・・じゃなくて、ダレンさんも手を洗うの上手いね」


 「ありがとうございます。なんだか、孫ができたみたいで・・・嬉しいです」


 ダレンさんって、何歳?自分よりは明らかに年上だろうけど、神だから摩訶不思議な答えが返ってきそう・・・聞くのはやめておこう。






 「次は、うがいね。口の中に水を含んで、水をのどのところに置いておいて声を出す感じ。やってみるからね・・・ガラガラ、ペッ」


 「ガラガラ・・・ごく」


 なんか、違う音がした。


 「飲まないの、飲まないの。口の中の汚れやばい菌を身体の外に出すためにするんだよ。飲んだら身体の中に入れちゃうじゃん」


 まあ、大丈夫だろうけど、お兄ちゃんとして言っておかなければ。


 「前の所は、ご飯あんまり食べれなかったから口に入れると、もったいなくて・・・」






 そうか~不憫や~。でも、ダメだ。注意しておこう、お兄ちゃんとして。


 「もったいないのか~、そうか~。でも、なるべくなら飲まずにだそうな」






 「なるべく?小林さん、そこは言わないと可哀想ですよ、冒険者になるなら」






 「ごめん、お兄ちゃん間違ってた。ちゃんと出そう」


 「わかった」


 「まあ、厳しく言いたくない気持ちはわかりますけどね」


 「すっきりしたところで、ダレンさん続きをお願いします」


 「がってん、しょうち」


 ダレンさん・・・一体、貴方はどういうキャラですか?





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