生意気オオカミの虜

春妃

幼馴染の生意気で可愛い求愛、始まりはキスから

あの日私は泣いていた…

子供の頃嫌な思いをして泣いていた……

その時、私を慰めようとした幼馴染み弟の凛(リン)が私の涙流れる頬にキスをした。

ただ、凛が何かを言っていたが何と言ったのか覚えていない。


でも、それが始まりだった。


あれから数年、私は大学生に、凛は高校3年生になった。

今私は大学の近くにあるアパートで一人暮らししをしている。

どうしても憧れた一人暮らしをしたくて親と相談し家を出ていた。

もちろん、バイトもして毎日マイペースに過ごして穏やかな気分でいたある日から、私の生活は一変した。

そう、一変した元凶は……



「 キャアッ!! え、ちょ、凛!?」

「 …ん~?」



コイツ、いつの間にいたの!

しかもなんで一緒の布団で寝てんのよっ



「 ちょっとー!!」



ぬくぬくと寝ている凛をベッド脇から足蹴りして起こす。

その後、私の説教をくどい程浴びせた。



「 悪かったって~ お前母さんみたいだぞ 」



母さんみたい?

わかってないな、凛…… 

私は女で、あんたは一応男だし、全てはあんたが隣で寝てたりするからよ!!


沸々と凛への怒りが込み上げる。



「 あ、飯は?」

「 あ…あんたって奴は~!」



凛は時々、私のアパートに勝手に来ていた。


ゴツッと凛の頭にゲンコツをして、朝食準備に取りかかる。

私、甚野 羽奈、大学生。

バイトは美容室で受け付けなど担当。

うちのお隣さん兄弟、泉沢 頼(ライ)と凛。

頼と私は同じ大学、凛は高校生。

産まれてからずっと一緒にいるせいか家族そのもので違和感なし。

凛を一人の男としての意識は特にない。

頼は大学に入ってから益々モテ男になり、たまに私を盾に逃げたりする事もある。

ともあれ仲良し3人なんです。

なのに……

凛だけがおかしい。

私と頼が高校を卒業したのを境に言動がおかしい。

今みたいに部屋にいたりする。


呑気に私の適当な朝食を凛も食べている、この光景がどうにも腹正しい。



「 凛、学校は? おばさん知ってんの? あ、頼は知ってる?」

「 羽奈… 黙って食べれば?」



くっ… あんたが言うな!!



「 凛、たまに勝手に来るけど私鍵はちゃんとしてるのにどうやって… 」



凛はパンをかじりながら私に向けてチャリッと鍵を見せた。

それを見てピン!ときた。



「 それ… 合鍵!? いつの間にっ 」

「 おばさんが心配してたから、俺がたまに様子見てくるよって言ったら合鍵くれた 」



お… お母さんー!!



まったくお母さんてば何勝手に渡してんの!

しかも合鍵だし!!


「 凛、学校行かなきゃでしょ、早く帰りなよ 」



頼も頼だよ、凛がここにいるの知ってんの?

頼もなぜか合鍵持ってるし、凛まで……

私が一人暮らしした意味がないじゃないの!


私はさ、大学生活で絶対に絶対に…

彼氏作るんだから!!


そうなんです、私は頼と凛がそばにいるせいで好きな人が出来ても二人のチェックが入り実らないまま今日まで来てしまった。

それを回避するためにも家を出て一人暮らししたかった理由のひとつ。

それなのに、両家両親が結託してか兄弟に合鍵を渡して私はまるで囚われの身。



「 あ~……… 」



床に手をついて項垂れる私を、凛はよしよしと頭を撫でる。



「 やめて!! 凛、帰って!」



私の恋ライフが始まらないでしょ!



「 ……羽奈、この辺最近怪しい奴いるらしいから何かあったら呼べよな 」



生意気な!

高校生のくせに……



私は凛の心配や忠告を完全に無視した。

まさか、その数日後にあんな事が起こるなんて思いもしなかったから。


大学からの帰り、友達の美世と歩いていた。

美世は大学入試で知り合って仲良くなった。

幼馴染みの頼を、彼氏ならいいなぁと言っていたが美世には彼氏がいるため特に何もなし。

逆に私がよく聞かれる、頼に恋心はないのかと……

確かに頼はイケメンで憎たらしいくらい完ぺきな奴だとは思う。

それでも、家族のような頼に恋はない。

美世はそれは男女だからいつか突然変わるかもしれないから逃がすなと言う。

そう言われても困る。

困ると言えば凛だ。



「 で、弟君はどう?素直に帰ったの?」

「 追い出したの、だって頼も凛も出入してたら勘違いされるし!ふしだらな女と思われたら嫌だもん 」

「 ほんとに心配だけかなぁ?幼馴染みとはいえだよ、男だし羽奈が好きなのかもよ 」

「 えー!ないない 」

「 そうかなぁ 」



美世はわかってない、あの二人は外面がいいだけだよ。

私が知ってる二人は…… ハハ。

私だからって平気でパンツでウロウロ、おならはするし、歯磨きせずに寝たりするし。

紳士の欠片もないよ。


私だってちゃんと女なんだから、あの二人が男だって意識はある。

でもそんな慣れた環境にいたせいで麻痺してるだけ。



「 ねぇ羽奈、イケメン兄弟どちらか選べって言われたらどっち?」

「 え… 」



美世に聞かれたが私は答えられなかった。

二人が大事だから、決められるわけない。


この日美世のバイト先、珈琲館ランプに寄って、その帰り小雨降りだした中を傘もなく一人バス停からアパートへと帰っていた。

外灯少なく小雨がより静けさを漂わせていた。

辺りには人気もない平日の深夜に近い時間、私の後ろを見知らぬ人が着いてきていた。

それに気づいた時、私は凛の言葉を思い出して嫌な緊張感と怖さで足がもつれそうで早歩きになり始めた。



……怖い、絶対誰かいる。

どうしよう振り向けないし止まれないっ

美世に電話する?

電話しても来れないじゃん、頼は?

そうだ頼なら……

あ、今日は深夜までバイトだ。

凛!

そうだよ、凛がいるじゃん!



焦りながらスマホを手に画面に凛の番号を出して慌てたせいか落としてしまった。

拾い上げようとしゃがんだ時、私は背後に気配を感じ振り向いて……

地面に尻もちついてしまい身動きも声すらもでなかった。

見知らぬ人の手が伸びてきたのを視界に捉え目をギュッと閉じて男のうめく声が聞こえた。

遠ざかる足音、固まる私に触れる誰かに驚愕し叫ぶと声がした。




「 羽奈!俺だ、凛だ!」



凛……?



聞きなれた声に恐る恐る顔を上げて手の隙間から見てみると、まさに凛がいた。




「 凛… 凛っ!!」



地面にへたりこんだままで凛へ腕を伸ばして抱きついた。



凛…… 



「 羽奈、ったくよ~ 俺の忠告聞かねぇからだぞ 」

「 ん、ごめん… 凛、怖かったぁっ 」



凛は私が落ち着くまで抱きしめてくれていた。

雨がさらに降りだして私は凛と急いでアパートへと二人で走った。





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