付録のトランジスタRadio

vrymtl

- Thomas Alva Edison VS Nikola Tesla (終話) -









「それにしても…ココは何処なんだ?太田。」


太田の説明も完全には終えてなかったが、
わたしは一つの疑問を問いかけた。


「ここは、北極の地下に設けられた場所で、もう一つのホワイトハウスだ。もう一つは南極にもある、ワシントンだけじゃぁない。」


どうりで床が湿って居る訳だ、そう思ったわたしに、太田は続けて話す…


「俺は、数日前にここへ来た。
お前と同じあのラジオの改造を完成させて。残業と言って、会社の新人2人に手伝ってもらってな。でも、失敗だった…アシスタントの女の子がこっちへ先に来ちまった。
俺は慌てて、もう一度電源を入れてこっちへ来たが…でも、もう手遅れだった…」


「ん?手遅れってぇ…どう言う事だ?」


「あぁ…実験したのは、会社のオフィス。
パソコンが並ぶ机の上にラジオを置いてマニュアル通りに真鍮と銅線でゲートも作ったが、パソコンの磁気が悪かったせいか、彼女は北極側へ行っちまった。その北極のホワイトハウスの地下には、ここと同じ場所があるが、そこにはエジソンが指揮してる…


あの、トーマス・エジソンだ。


お前もテスラとエジソンの歴史は知ってるだろぅ?」


「あぁ、勿論だ。」


「間違って南極へ行っちまった彼女は説得する間も無く、エジソンに洗脳されてしまってる、いわゆるテスラのプロジェクトの邪魔者、敵になった。翌日、彼女は戻ってきたがこちらにも秘密があるから手出しは出来ないんだ。因縁の関係になっちまった…ったく。」


「随分と複雑なんだなぁ?この世界は。
これからどうすりゃあ良いんだ、俺たち?」


「だよなぁー…今日はその会議だろうな、ここへ招集したのは。あっ、お前の家に行った黒ずくめの男はエジソン側のスパイだよ、もしこれからあっちへ戻ったら気を付けろよな?たぶん…俺たちを消しにかかるだろう。でもテスラが、このラジオで繰り返し行き来してまた便利な物を発明してくれたから、お前も後で貰えよ?このプロジェクトの特権だ。」


そう太田が言うと同時に、また女性のアシスタントがわたしに持ってきたものはUSBフラッシュメモリの形をした銀色の物で、表面には小さなボタンが2つ付いていた。


「それは瞬間転送装置だ。これを持ってる自分だけが瞬時に移動、その場から消える事が出来るって代物だ。ボタン青が、緊急時にどこか安全な場所へ行ける。ボタン赤が、ココへ来ることが出来る。また後で説明されると思うがな。横にダイヤルがあるだろう?それは0〜9年どちらかへ動かすとその年にタイムスリップ出来るんだ。ダイヤルにプラスとマイナスが左右に別れてる…それで、青ボタンを押すんだ。現在の時間に戻りたければ0に合わせれば良い…単純だろ?悪用はするなよ?!もしバレたら、ラジオの事から今までの記憶が消されるし、どの時代に飛ばされるかわからない、怖い話だよなぁ。」


わたしは何も言えず、ただ太田の説明を聞くだけだった…正直、絶句の連続だった。


と、その時銃声が鳴り響いた…
パンッパパパンッ…ガシャンッバリバリッ


わたしは慌てて机の下へ隠れる、会議中の他の人たちと。


太田が言う…


「ありゃあ、エジソンの部下達だよ。
また前回と同じだ。それじゃあ、このままあっちの世界へ行くとするかぁ…また、あの呑み屋で会おうや、じゃあなッ!」


太田はそう言うと、持っていた瞬間転送装置の青いボタンを押して…消えた。
それを見て、ヤンの入ったキャリーバッグと買い物袋を持って同じ様に青いボタンを押した…






一瞬、暗くなり気が付いたら家のリビングの机の下に居た。ヤンもキャリーバッグの中で、片手にはホームセンターの買い物袋を持ったままだ…その手中には銀色のあの装置。


幻覚や夢では無かったみたいだな…
やれやれ。


タイムマシンと噂され、興味本位ではじまったトランジスタラジオ…
これからどうなるんだろうか?
"ニャーーッ"


「あっ、ヤンを出してあげないと。
ほら、お前もお疲れさんだったなぁ…」


ヤンをキャリーバッグから出し、喜んで餌の器へ向かった…とその時電話が鳴った。
ディスプレイを見ると…よっちゃんだ!
「あ、もしもーし!ごめんねーなかなか出られなくって。」


「ぉう!出来たよー例のダミー、いつでも取りに来いよーじゃあなぁー!プチッ」


すっかり忘れていた…ラジオのダミー。
今更、要らなくなったなんて言えないし、
これからでも取りに行こうかなぁ…
辺りは日が暮れかかり夕焼けが眩しいくらいの空だ。よっちゃんには、悪いからこれから受け取りに行くと連絡した後、また自転車でよっちゃん家へ向かう事にした。


玄関で、自転車の鍵をポケットから出そうとした。銀色のメモリ型の転送装置が手中に入りそれを暫く眺めて居た…


「これから…どうなるんだろう。」


そう呟いて、ドアの鍵をかけよっちゃん家へ向かうために力一杯にペダルを立ち漕ぎしていった。










おわり…かな? 
それとも…
(一応、終わりです。)





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