詩集 - ②
詩集 - ②
『大事な匂い』
目が覚めた朝の空。
暗い時間に明るい空。
見上げると朝焼けと月の空。
季節が重なる朝の空。
湿ったり渇いたりが続いた空。
今の空は匂わないきれいな空。
地上が明るく匂う頃。
空が見おろす桜色の命たち。
昼も夜も匂う時…
『物干し竿』
古い家が建ち並ぶ近所。
昔から変わらない生活がある。
三軒隣の平屋に住むご老人。
朝の洗濯物干しをする。
竿に洗濯物の裾袖通し。
Y字の引っ掛け棒で二段の竹竿。
高めのブロック塀を見おろす位置。
今日も元気に起きたかな?
通勤前に確認してる。
帰宅途中は薄暗く。
裸電球がぼんやり点いている。
温かい灯りがお出迎え。
今日も一日お疲れ様と。
ある日の夜…
物干し台の横の軒。
今までの裸電球とは違う灯り。
センサーで感知するLED電灯に。
暗くてさみしい色に見えた。
あんなに輝いている灯りなのに…
便利な時代には逆らえない。
翌日からは朝陽に反射した。
ステンレスの物干し竿に。
通勤帰宅の愉しみ減った…だけど。
竿に洗濯物の裾袖通し。
これだけは変わらない。
少しだけ、嬉しくなった朝だった…
『月の糸』
同じ空に同じ月、
滲んでいたりはっきりしたり、
真夜中より早朝だったり、
明るい時を長くする様に、
空が見おろす木々花々のために、
月灯りが乱れる雲に、
山々を照らしたり陰にしたり、
白い空気が月に照らされ銀色に、
木々から木々へ草から草へ、
銀の糸で結ばれる時、
月は銀の糸を引っ張って、
ひょうたんみたいな蕾に伝える、
枯れた色一面明るくなる頃、
月は節気を迎える準備する。
コメント