魔王、なぜか冒険者学校の先生になって、英雄の子孫を鍛え直す

しーとみ@映画ディレッタント

マノンVSオデット 決着!

 雷獣の魔力が、更に膨れあがった。吹雪を弾き飛ばす勢いで。


 それでいい。今はもっと魔力を放出させておけば。


 尚も、マノンは吹雪を強めていく。


「無駄なことを!」


「ムダじゃねえさ! 見せてやれマノン、お前の持ってる真の力をな!」
 担任は、マノンに対して絶対の信頼を寄せている。その根拠は何だ?


 雷獣を覆い尽くす雪は、放射される熱で更に溶け出す。


『だからムダですと何度も……』




 パァン! と何かが弾けた音がした。




『な、何事、ですか?』


 途端に、オデットの身体が小さくなっていく。
 膝を突き、首をもたげた。
 グリフォンの形も維持できていない。


「あなたの、負け」
 ヒザをついたオデットに、マノンは刀の切っ先を突きつけた。


「オーバーヒート。あなたは寒さには強くても、水には弱い」


 マノンが狙っていたのは、魔力の発動源である。


 雷獣オデットの体内にいた人型だけが標的だったのだ。


 溶けた雪をオデットの身体にまとわりつかせ、体に水分をため込ませた。


 やがて、温度差で人型にヒビが入ることを見越して。


『どうして、私が人間に』 


「言っただろ。足を引っ張っていたのは、オデット、お前さんの方だってな」
 担任が、突き放すように言う。


「強い相手なら、弱体化させればいい」


『そうでしたか。あなたも成長したのですね』


 雷の集合体が霧散し、人型だけが残った。


「マノン、お前の勝ちだ。弱体化しているとは言え、よく魔王を倒したな」
 担任から賞賛の言葉をもらう。


「わたしが、魔王を?」


「そうだ。誇っていい」


 緊張が解け、マノンは脱力した。
 刀が手から滑り落ちる。
 柄に血がべっとりと付いていた。


「見せてみなさい、マノン! うわ、血まみれじゃない!」
 エステルが駆け寄って、治癒魔法をマノンに施してくれる。


 マノンの手の平は、とても人に見せられるような状態ではなかった。
 皮膚が剥がれ、流血がひどい。


 エステルが怒るわけだ。


 自力で直そうにも、魔力の消耗も激しい。


「よく頑張ったわね、マノン。やっぱり、あんたはあたしのパートナーよ」


「ありがとう、エステル。わたし、エステルに近づけたかな?」


「あんたはたとえ大天才でも、どんなダメ人間でも、あたしの友達よ」


 治癒を受けながら、マノンはエステルの言葉を噛みしめる。


「なあ、こいつどうしようか?」
 担任が、オデットを親指で差した。
「やっぱ処分するしかねえよな?」


 そうなるだろう。仮にも人を襲おうとした魔王だ。放置するわけにはいかない。


「待った待った!」
 猛ダッシュでやって来たのは、ネリーである。


「オオ、ネリーじゃねえか」


「この子、うちで預からせてくんない?」


「いいけど、壊すなよ? 拷問もナシだ」


「あったり前じゃん! じゃ、この中に入ってねー」
 ネリーが、球状の物質を差し出す。魔法石のようだが。


『危険性は?』
 オデットの入った人型が、魔法石を警戒する。


「ないない。ノームが発掘した極上魔法石だから、多分大丈夫」


『ではお言葉に甘えます』
 球状の魔法石に、オデットの魂が入り込んだ。


「じゃあ、この子に相応しい身体を作るから!」

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