魔王、なぜか冒険者学校の先生になって、英雄の子孫を鍛え直す

しーとみ@映画愛好家

即墜ち2コマ

「な……」
 まさか担任に感謝されるとは思っていなかったのか、エステルが絶句した。




「何が楽しかったかって、お前、物怖じしなかったよな? いや、できなかった」


「それがどうしたのよ?」
 からかわれたと思ったのか、エステルはさらに嫌悪感をあらわにする。


「もしお前さんが、オレ様のキャノンを相殺していなかったら、少なくとも街の一部が吹っ飛んでいた」
 担任が銃口を街の方角へ向けた。


「だから、お前は退かなかったんだろ?」
「ええ。そうよ。あんた信用できないんですもの」


「オレ様も、お前が避けないで迎え撃つって分かっていた。冒険者なら、度胸があるならって」


「そんな賭けを! やっぱりモンスターはモンスターね!」
 エステルがそっぽを向く。


「オレの評価なんて、それで結構だ。けど、お前さん大したもんだぜ。普通は、あんなもん向けられたら逃げる。魔物の貴族さえ逃げ出したんだからな!」
 自慢げに、担任が高笑いをした。が、すぐ真顔になる。


「オレ様の攻撃を真正面から受け止めたのは、たったの二人だけだ。お前と、お前のおっ母さんさ。お前さんには、あの冒険者の血が流れている。誇ってもいいんだぜ」


 無言のまま、エステルは賞賛の言葉を受け止めていた。
 心に響いたかは分からない。


「まあまあ、二人とも今日はこのぐらいにして、矛を収めよ」
 ウスターシュ校長が、温厚な言葉をかけてエステルをなだめる。


「気にすることないよ、エステ、ル?」
 マノンは俯いているエステルの顔を覗き込む。








 エステルの顔が、真っ赤になっていた。
「むむむううう」とうなりながら。
 先ほどのセリフが、相当こたえたと見受けられる。








「あっれー、ひょっとして『即墜ち二コマ』ってヤツ?」


「うるさい、ネリー。あんたは黙ってなさいよ!」
 エステルが、からかってきたネリーを軽く叱り飛ばす。


 これだけ元気があれば、大丈夫だと思うけれど。


「少し休も」と、エステルに肩を貸し、マノンは医務室へ向かう。


「待て」と、担任がマノンを呼び止めた。「お前の戦闘がまだ終わってないぜ」


「いいんです、私は」


「なんでだ?」


「私は、別に先生のこと、嫌いじゃないから。追い出すつもりはない」


「それと戦闘訓練と、どう関係があるんだ?」
 担任の言葉は冷淡だ。


「ちょっと、それは言いすぎじゃない? マノンはあんたに敵意がないって言ってるでしょ? 素直に受け取りなさいよ」
 負傷しているにもかかわらず、エステルは強気に反論する。


「戦闘のトレーニングだって言ってるだろ。だから、全員の戦力を判定する」
 担任も、譲らない。どうしても、マノンと勝負がしたいようだ。


「分かりました。ちょっと待っていてください。エステルを連れていきますので」


「いいえ。ここで見てるわ」
 マノンから離れ、エステルは自らしゃがみ込む。膝を抱えて三角座りになる。


「ダメだよ、エステル! 休まなきゃ」


「こんな大事な試合、アタシに見せない気?」
 エステルの顔は、笑っている。


「わかった。じゃあ、がんばる」
 マノンも腹をくくった。


「やっちゃえ。あの天狗ヤローに目にもの見せてあげなさい!」
 友人からのエールに、マノンはうなずく。


「では、行きます!」
 刀の柄に、マノンは手をかけた。


 瞬間、チャイムが鳴る。


「いいかげんにせい。昼食の時間ではないか」


 ウスターシュが、マノンと担任の間に割り込んだ。


 戦闘ムードがすっかりなくなり、教室へ強制提供させられる。

「魔王、なぜか冒険者学校の先生になって、英雄の子孫を鍛え直す」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く