魔王、なぜか冒険者学校の先生になって、英雄の子孫を鍛え直す

しーとみ@映画愛好家

堕天使セラフィマのイヤミ

 この街で、一番大きな建物が見えてきた。


 アメーヌ国立冒険者学校。


 世界各国の未熟な冒険者志望者ばかりを集めた訓練場である。


 かつて、魔王という階級がこの大陸を支配していた時代のこと。


 冒険者の手によって、世界じゅうにいた魔王たちは滅ぼされた。


 とはいえ、魔王の家系で高位な種族の「魔族」は、貴族階級を捨てきれない。いまだ人類と敵対している。
 世界じゅうに住まう「魔物」を操り、再び地上に君臨することを虎視眈々と狙う。


「魔物」の一部は、魔族の支配に抵抗している。自分たちで世界を支配しようとする魔物もいた。
 世界征服に関心がなく、人類に味方している種族も多い。
 種族ごとに「最悪を超えし者ビヨンド・オブ・ワースト」と名乗り、自分たちの領土を維持している。


「魔族」と、「魔物」による争いは、年々激化している。


 魔王の復活が近いのでは、と、各国は考えた。
 冒険者稼業も、世代交代の波が押し寄せている。そこで、このような施設が設けられたのだ。


 とはいえ、魔族の数も減り、冒険者ギルドも閑古鳥が鳴いているのだが。


「あら、ドゥエスダンさん、ナナオウギさん、ごきげんよう」
 廊下にて、金髪の女性が嫌味を言いに来る。動く度に、縦ロールのツインテールがふんわりと揺れた。
 となりのクラスにいるセラフィマ・エルショフだ。
 堕天使種族で、背中に黒い羽が生えている。
 ことあるごとにエステルに噛み付くのは、彼女の日課らしい。


「相変わらず、お二方はパーティを組んでらっしゃるのね」
 セラフィマが、廊下の壁に目をやる。


 成績表が貼られていた。エステルがトップだ。ちなみにセラフィマは二位である。
 彼女は魔法石を扱う商人の令嬢だ。生まれもってのエリートである。
 しかし戦闘は門外漢。
 だからこそ、英雄の血を引くエステルが気にくわない。


「順位で戦績が決まるわけじゃないわ、エルショフ。マノンにだって、何か取り柄があるはずよ」
 エステルは、自分より身体も胸も大きいセラフィマに物怖じしない。毅然と言い返す。


「ご執心ですこと。まあ、組んでくれと頼まれても、わたくしはあなたとのパーティなんて御免被りますけど」
 セラフィマは、紫色の鉄扇で顔を隠した。


 何を言ってるんだ? といった表情をエステルは見せる。


「ところで、ナナオウギさん」
 セラフィマの視線が、今度はマノンの方へ。


「先日は、本当にありがとうございました」


 セラフィマが、マノンに頭を下げた。
 商業ギルドを牛耳る世界有数の大企業、エルショフ商会のご令嬢が、だ。

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