魔王、なぜか冒険者学校の先生になって、英雄の子孫を鍛え直す
一仕事終えて
「ご苦労だったな、ジャレス」
純白のローブに身を包んだ三〇代ほどの男性が、ジャレスの功績をねぎらう。
アメーヌ国冒険者ギルド長にして、国立冒険者養成学園の学園長、ウスターシュ・ワトーだ。
若そうに見えるが、実年齢は七〇を超えている。体内の魔力を活性化し、老いを制御しているのだ。
「へっ。ショボい仕事を押しつけやがって」
「仕事があるだけ、マシだと思っていただけませんコト?」
ウスターシュのショルダーバッグが、美しい声で罵声を浴びせてきた。バッグのポケットから、光り輝く妖精が顔を出す。サイズはウスターシュの手の平くらいしかない。
「うっせガキ」
「ガキとは失礼なの! あなたも人のこと言えなくて、なの!」
ジャレスの方も、成人男性の腰くらい低いため、「オッサン顔の子ども」に見られることもあった。
「そのショボいお仕事のおかげで、あなた方ゴブリン族のお財布が潤っているのをお忘れなくなのっ!」
「よさんか副学長。まったくお前たちは、顔を合わせればケンカばかりしおって」
「フンだ、なのっ」
ツインテールの妖精ピエレットは、子どものように見える。
が、冒険者学校の副学長という肩書きがある。歳も、彼女よりウスターシュの方が若い。
「盗賊団総勢一五七名、全員を捕らえました。盗賊及び人質全員、誰も死傷者はありません」
アメーヌ王国の騎士団長が、ウスターシュに礼をする。
「ご苦労、騎士団長」
一五七人もいたとは。どうりで多いなと思ったが。
「なんだってこんな大部隊が、アメーヌのようなド田舎に?」
「ド田舎と言うな」と、ウスターシュがジャレスをたしなめた。
アメーヌは伝統ある冒険者学園が建っている。野盗や敵対する冒険者を幾度も退けてきた。
中でも魔族討伐の実績が高い。
魔族は人をさらっては血を吸うか自分で食べる。人間を、魔王復活の生贄に捧げたりも。
手段はほとんど自分で狩るが、野盗と手を組んでさらうことさえあった。
魔界でも貴族階級に位置する魔族は、自分たち以外の存在を家畜同然と考えている。
その認識を改めなかったせいで、一時期人間と魔物の混成舞台にネコソギ討伐されたというのに。
「これも、魔神絡みかよ?」
「そのようだが、調べてみんとな」
魔神とは、魔族の神のことだ。数ある魔王の中でも、頂点に位置する。
今回の一件も、魔神復活を企む魔族の仕業と踏んでいたが、真相は野盗に聞き出さねば。
「とにかくジャレス。報酬だ」
ジャラジャラ音が鳴る袋を、ジャレスは受け取った。
雀の涙ほどしかない金貨を確認する。すぐに配下へ渡す。
「全額じゃねえですか。いいんですかい?」
金貨袋を受け取った子分が、ジャレスに確認を取る。
「もらっておけ。お前らの方が大変だったからな。オレ様は魔王業で稼いでるし」
今日の依頼は、半ば配下を訓練する為に引き受けたのだ。彼らに払うのがスジだろう。
「おいお前ら、引き上げ――」
部下に指示を出そうとして、ジャレスは猛スピードで走ってきた何かに撥ね飛ばされた。
純白のローブに身を包んだ三〇代ほどの男性が、ジャレスの功績をねぎらう。
アメーヌ国冒険者ギルド長にして、国立冒険者養成学園の学園長、ウスターシュ・ワトーだ。
若そうに見えるが、実年齢は七〇を超えている。体内の魔力を活性化し、老いを制御しているのだ。
「へっ。ショボい仕事を押しつけやがって」
「仕事があるだけ、マシだと思っていただけませんコト?」
ウスターシュのショルダーバッグが、美しい声で罵声を浴びせてきた。バッグのポケットから、光り輝く妖精が顔を出す。サイズはウスターシュの手の平くらいしかない。
「うっせガキ」
「ガキとは失礼なの! あなたも人のこと言えなくて、なの!」
ジャレスの方も、成人男性の腰くらい低いため、「オッサン顔の子ども」に見られることもあった。
「そのショボいお仕事のおかげで、あなた方ゴブリン族のお財布が潤っているのをお忘れなくなのっ!」
「よさんか副学長。まったくお前たちは、顔を合わせればケンカばかりしおって」
「フンだ、なのっ」
ツインテールの妖精ピエレットは、子どものように見える。
が、冒険者学校の副学長という肩書きがある。歳も、彼女よりウスターシュの方が若い。
「盗賊団総勢一五七名、全員を捕らえました。盗賊及び人質全員、誰も死傷者はありません」
アメーヌ王国の騎士団長が、ウスターシュに礼をする。
「ご苦労、騎士団長」
一五七人もいたとは。どうりで多いなと思ったが。
「なんだってこんな大部隊が、アメーヌのようなド田舎に?」
「ド田舎と言うな」と、ウスターシュがジャレスをたしなめた。
アメーヌは伝統ある冒険者学園が建っている。野盗や敵対する冒険者を幾度も退けてきた。
中でも魔族討伐の実績が高い。
魔族は人をさらっては血を吸うか自分で食べる。人間を、魔王復活の生贄に捧げたりも。
手段はほとんど自分で狩るが、野盗と手を組んでさらうことさえあった。
魔界でも貴族階級に位置する魔族は、自分たち以外の存在を家畜同然と考えている。
その認識を改めなかったせいで、一時期人間と魔物の混成舞台にネコソギ討伐されたというのに。
「これも、魔神絡みかよ?」
「そのようだが、調べてみんとな」
魔神とは、魔族の神のことだ。数ある魔王の中でも、頂点に位置する。
今回の一件も、魔神復活を企む魔族の仕業と踏んでいたが、真相は野盗に聞き出さねば。
「とにかくジャレス。報酬だ」
ジャラジャラ音が鳴る袋を、ジャレスは受け取った。
雀の涙ほどしかない金貨を確認する。すぐに配下へ渡す。
「全額じゃねえですか。いいんですかい?」
金貨袋を受け取った子分が、ジャレスに確認を取る。
「もらっておけ。お前らの方が大変だったからな。オレ様は魔王業で稼いでるし」
今日の依頼は、半ば配下を訓練する為に引き受けたのだ。彼らに払うのがスジだろう。
「おいお前ら、引き上げ――」
部下に指示を出そうとして、ジャレスは猛スピードで走ってきた何かに撥ね飛ばされた。
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