それでは問題、で・す・が!

しーとみ@映画ディレッタント

4-6

モールの隣にある国立公園を、収録現場として使うことになった。
あちこちで、家族らしき団体がビニールシートを広げてピクニックをしている。
飼い主とフリスビーを用いて遊んでいる犬もいた。
人もまばらだ。多少騒いでも迷惑にはならないだろう。

「おまたせー」

やなせ姉が現れた。慶介と腕を組んで、スキップをしながら。彼女も、ガウチョパンツで揃えてきた。
「いつの間にそんなの買ったんだよ?」
「さっきよー。イエーイ!」
彼女の服装は、七分丈のデニム柄ガウチョと、木の皮を編み込んだサンダルである。さっき買ったばかりなのに、まるでオーダーメイドのように似合っていた。

「さあ、始まってしまいました。本日のクイズ番組研究会! 今回はなんと! 初の、野外ロケでございます!」

僕がセリフを言うと、嘉穂さん達が「わーっ」と拍手してくれた。
慶介にデジカメを持ってもらっている。ポータブルサイズの八ミリだ。スマホでもいいが、画質や確実性を考えるとビデオの方がいいだろう。
「では、クイズ番組研究会番外編、スタートします」
画面の向こう側にいる想定視聴者を煽りつつ、僕はカメラに顔を近づけた。
女性陣をなめるように、慶介がカメラを動かす。
「わーいわーい」
女性陣は、僕の周りをコント走りで駆け回る。かなり張り切ってるな。
気がつけば、何事かとギャラリーができていた。といっても子供とお年寄りばかりだが。
屋外でカメラを回しているせいか、女性陣のテンションが妙に高い。
「福原くん、今日はどんな形式のクイズなんですか?」
嘉穂さんが質問してきた。
「えっと、今日はですね」
「何なのだ?」
「何だろーねー?」
のんと湊がこちらのタイミングを無視して問答する。やっぱりテンションが高いな。
「今回のクイズ形式は、一問多答クイズです!」
「おおおおおーっ!」
大げさに、女性グループが驚いた。
複数の回答がある問題を、一人ずつ答えてもらう形式のクイズである。
「今回は、番組研の四人で答えてもらいます」
やなせ姉が前に出た。
「ということは、ワタシも参加で?」
彼女は、自分の胸に手を当てる。

「はい。今回は特別編と言うことで、来住先輩も選手として参加してもらいます!」

「いえーい!」
女性陣がハイタッチでやなせ姉を迎え入れた。
「アシスタント改め来住選手。今日の意気込みを一言でお願いします!」
「足を引っ張らないように頑張りまーす」
マジでテンションが高いな、今日の番組研は。

「全部で、四問出題します。一問だけ間違えでも構いません。ですが、二問間違えると、番組側の勝利となります」

「二問間違えたらどうするんだ?」
「誰かが代表してインタビュー動画を撮って、福原のオカズになるんだよね?」
「するか!」
個人的に楽しむわけないだろ!

「三問無事に正解したら、何かあげましょう! 今日は急な企画にも付いてきてくれましたし」

「いえーい!」
僕が提案すると、拍手はより大きな物へと変わった。
「それでは参りましょう! 第一も――」
「待った!」
突然、西畑からストップが掛かる。何か問題があったか?
「どうした、西畑?」
「すまん、男には言いにくい。やなせさん、ちょっと」
なぜか西畑は、僕ではなくやなせ姉を呼ぶ。
彼の耳打ちを受けた後、やなせねえが僕に近づいてきた。
「どうしたの、やなせ姉?」

「それがね、湊ちゃんのガウチョから下着が透けてるって」

僕は絶句する。一瞬湊の方を見た。
確かに、彼女のガウチョパンツだけ生地が薄い。そのため、わずかに光を通している。
そのせいで、ブルーの布地がぼやけて見えていた。
中にスパッツを穿いているのんは無事。
厚手の生地で決めた嘉穂さんも、セーフだ。

やなせ姉の発言を聞いた湊は、頬を真っ赤に染める。

「ひゃあああああああ!」

突如、湊は悲鳴を上げて、しゃがみ込んでしまった。

鋭い視線が、僕に突き刺さる。
「福原! どうして教えてくれなかったのさ!」
西畑は、「逆光になってようやく判明した」と弁解した。
「別に西畑君はいいんだよ。、今ウチの格好を見たんだから! 福原はずっと見てたんだろ?」
「お前はそういうの気にしないタイプなんだな、って思ってたんだよ!」
「気にするよ! プライベートなら構わないよ? でも撮影だったら話は別だっての!」
半分涙目になって、湊が訴えかけてくる。
「悪かったよ。撮影は中止にするから」
「やだ。着替えて出直してくる」
彼女が着替え終わるまで、撮影は中断になった。
のんが湊についていくことに。

それにしても、あんな湊は初めて見た。
普段からは想像できない一面を見て、嘉穂さんでさえ面食らっている。
ボケ回答といい、湊は案外、照れ屋なのかも知れないな。

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