ギャル二人が『魔法効果付与《デコ》』で異世界を守るんですけど!?

しーとみ@映画ディレッタント

ギャル、街に入る

あの後、およそ一時間ほど歩いて、小さな都市に到着した。

「着いたぞ。ここがウィートの街だ。メイプリアスという国家に属している」

いかにも、RPGに出てくるような村だ。風車がある。小麦粉が作れるのだろう。

「冒険者ギルドはあそこだ」

石造りの建物の中でも、一際大きな建物が。
入り口の上に、国旗が飾られている。
長方形の白い布には、カエデをモチーフにした盾のイラストだ。

建物に入る。
巨大なコルクボードが目に飛び込んできた。木綿でできた紙なんて初めて見る。
中世の欧米ではポピュラーな紙だったらしいが。
この世界の文明レベルは、約一六世紀くらいだろうか。
紙にはどれも、依頼が書かれている。

受付に、ショートカットの男が立っていた。
布製の服に身を包む。

壁の側に人型があった。
皮と金属で製造された鎧が掛けられている。
おそらく受付の男が着るのだろう。

「えっと、ココが、冒険者ギルドってとこ?」
警戒心ゼロの様子で、チョ子が受付の男性に話しかける。

「おう。ここが冒険者ギルドだ。オレはギルド長のフィン。冒険者の登録を希望……か?」
フィンは、遙香たちの他に客がいることに気づいたようだ。

「そちらのベッピンさんも、登録をご所望か?」

「ワタシだよ、フィン。エクレールだ」
ベッピンさんはムスッとした。

「スマンな、冗談だ」
腰に手を当てて、ギルドマスターのフィンは白い歯を見せる。

「エクレールの依頼の方を先に済ませるか?」
「いや。ワタシより彼女たちの冒険者登録を頼む」
エクレールは、遙香たちを見守るかのように、後ろへ下がった。

「登録なら、この書類に名前を書いてくれ」
小さな用紙と羽ペンを、フィンが差し出す。

異世界の字が読めた。どこに何を記入すべきか分かる。
指示通り、用紙を埋めていく。異世界の文字で名前を書けているか、エクレールにチェックしてもらう。

「OKだ」と、エクレールは頷いた。

チョ子は何の疑いもなく、右手を動かしている。
だが、ピタッと筆が止まった。
「チーム名?」

「冒険者のグループをひとくくりにしているんだ。別にソロ、独りで冒険者を続けても構わん。旅に慣れていないなら、パーティを組んだ方がお得だ。別のパーティに参加してもいいんだぞ?」

「チーム、パーティ、ねえ……」
遙香は難色を示す。

グループ行動は苦手だ。周囲の空気に飲まれるのは好まない。
社会科見学ですらあのザマだった。特別視され、気を遣われて。

かといって、この世界にチョ子を置いていくのは気が引ける。
器用なので見知らぬ土地でも順応できそうだ。
が、彼女には寂しがり屋な一面もある。気心の知れる相手がいないとナーバスになるかも。

仕方ない。チョ子と組むべきだ。
自分が孤独なのが不安なワケではない。断じて。

「ハッカ、ウチとチームで登録しといたから」
こちらが悩んでいる間に、チョ子が勝手にチーム扱いしていた。

「エクレール、できればアンタも参加して欲しいんだけど」
チョ子がエクレールに切り出す。

「よせよせ、お嬢ちゃんたち。『雷帝らいてい』エクレールが誰かと組むかよ?」
手をヒラヒラとさせながら、フィンが笑う。

「雷帝エクレールって?」
聞き覚えのない単語が出てきた。遙香がフィンに尋ねる。

「エクレール・キールストラの二つ名だ。これまで、二つの国を危機から救っている。目にもとまらぬ剣技を操り、付いた渾名が雷ってわけだ」

普通の冒険物語なら、新参はベテラン冒険者に絡まれるはず。
なのに、周囲の冒険者たちが誰一人として因縁をつけてこない。

不思議だと思っていた。どうやら、自分たちはとんでもない達人を連れて歩いていたらしい。

「だが、彼女に釣り合う強さを持つ冒険者なんて、数えるほどしかいなくてな」

エクレールに妙な親近感が湧く。
彼女も自分と同じで、一人なのか。
遙香は、エクレールが他人とは思えなくなっていた。

「いや、ワタシは組むぞ」
「え!?」と、フィンが大声でのけぞる。

その声に反応して、他の冒険者たちの視線が遙香らに集まる。

「この二人と一緒なら、おそらく退屈しない。旅のガイドも必要だろう。なにより、二人が気に入った」

「まあ、アンタがいれば百人力だな。よかったな、お二人さん」

「じゃ、『チーム・チョコミント』と。できた」
早々と書き終わったチョ子が、紙をフィンに渡す。

          

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品