バーチャル美少年受肉異世界転生ゾンビヤクザおじさんとか設定盛り過ぎだろぉー!
さらば、愛しきヴァンパイア
ついに、この時が。
「これより、国家転覆を謀ったアンデッド、カーミラ・カルンスタインの処刑を始めます」
カルンスタイン騎士団長司会の元、カーミラの処刑は、定刻通り行われた。
とはいえ、カーミラ本人は縛られてすらいない。オレのすぐ側に、カミュの姿として彼女は立っている。
適当に罪状を読み上げ、カルンスタインの騎士団長はそそそくさと、カーミラを象ったワラ人形に火を放つ。
カーミラの服を着た案山子が、勢いよく燃え上がる。
「はーい。これで魔王の娘カーミラ・カルンスタインらしき人物は、死にましたっと! 終わり! 閉廷!」
騎士団長が、パンと手を叩いて、ギャラリーを追い払う。
まさか、王様の命令も含めて、全部芝居だったとは。
ギャラリーも、すべてはリ・ッキが悪いのであって、カーミラの処刑に何の意味もないと知っている。
カーミラは何ら、自らの権利を主張していないのだから。
国を治めろとか、税金の一部を寄越せなど言ってこない。
帰国したからと言って、カルンスタインと積極的に関わろうとしなかった。
「あんたら主役も、もう帰っていいよ。こういうの、形式だから」
しっしっ、といった感じで、騎士団長に追い払われる。
「本当に、あんな手順でカーミラが死んだことにしても構わないのか?」
カルンスタインの騎士団長に尋ねてみた。
「いいよいいよ。こんなの形式だし。街をあんたらが救ったのは事実だし。市民が納得するならそれで構わないさ」
フンと鼻を鳴らし、カルンスタインの騎士たちは黙々と処刑場を片付ける。
カルンスタインとペダンの協力があってリ・ッキは退治されたと、世界中に報告した。
カミュは協力者の一人であり、深くは関与していないと。
とはいえ、カルンスタインに手柄を渡したのは正解だった。
そのおかげで、カミュは今も生きている。
自軍で不安要素を消したのだから。
「それに、あの国王の下なら、友人にはなれても、配下にはなれない」
まったくだ。オレは同意して、頭を掻く。
国王が、カミュに跡を継がせたかった理由は、自国の防衛力を増強するためだろう。
とはいえ、カミュにそんな気持ちはまったくない。
いくら身内の頼みとはいえ、だ。
人の手下になるようなタマじゃないからな。
「確かに、旧カルンスタイン王の一粒種が生きていたとなれば、ここに住む魔物たちは盛り上がる。だけど、人間族には関係ないことだ。ボクが前に出れば、みんな受動的になってしまう。せっかく結束力が強まっているのに、水を差すことになる。となれば、絶対に国家内で軋轢が生じる。ボクが離れていくしかなかったんだ」
それが、今回の偽装処刑だった。
一応、不安分子は死にました、としておけば、ひとまず国はまとまるはず。
国民たちの意識が高いうちは。
しかし、収穫はあった。
これで、国王に借りを作れたのだし。
「ありがとう、トウタス。これからもよろしくね」
「こちらこそ頼む。カミュ」
オレとカミュが、妙に意識してしまう。
「これからどうするんだ、カミュ」
「分からない」
空を見上げながら、カミュは首を振った。
「ひとまず、ここに拠点を置く。ボクたち以外にも、リ・ッキのようなヤツがいるかも知れない。そいつのせいで苦しんでいる魔物がいると思うんだ。ボクは彼らのために力を振るうよ」
カミュが手を差し伸べてくる。
「力になるぜ、カミュ」
オレは、カミュの手を強く握りしめた。
「ああ。頼むよトウタス」
カミュが、オレの手を引っ張ってくる。オレの背中に手を回し、抱き寄せた。
カミュの体温を全身に感じる。
「ん、あんた!?」
びっくりして、オレは、とっさに離れようとした。
見た目は同じだが、カミュの骨格が違っていたからだ。
だが、がっちりとカミュにホールドされて、動けない。
「男? オレが裸を見たときは、確かに……」
「ボクはどっちにでもなれるのさ。これでも魔族だからね」
魔族の特性上、両方の性別をもっているのだとか。
「なんなら、もっと触ってみるかい?」
オレの手首を持って、カミュが自身を撫でさせる。
男の体型だったり、また女の体型に戻ったりと、服越しにでも伝わってきた。
「分かった、もう十分に分かった」
「キミは分かりやすいね」
ドギマギするオレを見て、カミュがおどけてみせる。
「キミは、どっちのボクでいて欲しい? 男かな、それとも」
急に、カミュがしおらしくなった。
「トウタスがいいなら、どっちの性別も受け入れるよ」
「お前さんがなりたい方になればいいぜ」
決して決断を放棄したわけじゃなく。
カミュはカミュのままでいて欲しい。
気高く、優雅で、けれど、威圧感がない親分。
カミュの魅力に、性別は関係ないのだ。
「だからよ、オレはどんなヤツだろうと、カミュ、お前さんを受け入れるぜ」
「ありがとう、トウタス」
再び、カミュから強く抱きしめられた。
「辛い旅になるけど、ついてきて欲しい」
「もちろんだ。オレとアンタは、一蓮托生だからな」
「うん」
カミュの体温が、急激に熱くなるのを感じる。
「ぶばっちゅ!」
オレたちのやりとりを見て、セェレがまた噴火した。
青空の下、血液の虹が架かる。
(完)
「これより、国家転覆を謀ったアンデッド、カーミラ・カルンスタインの処刑を始めます」
カルンスタイン騎士団長司会の元、カーミラの処刑は、定刻通り行われた。
とはいえ、カーミラ本人は縛られてすらいない。オレのすぐ側に、カミュの姿として彼女は立っている。
適当に罪状を読み上げ、カルンスタインの騎士団長はそそそくさと、カーミラを象ったワラ人形に火を放つ。
カーミラの服を着た案山子が、勢いよく燃え上がる。
「はーい。これで魔王の娘カーミラ・カルンスタインらしき人物は、死にましたっと! 終わり! 閉廷!」
騎士団長が、パンと手を叩いて、ギャラリーを追い払う。
まさか、王様の命令も含めて、全部芝居だったとは。
ギャラリーも、すべてはリ・ッキが悪いのであって、カーミラの処刑に何の意味もないと知っている。
カーミラは何ら、自らの権利を主張していないのだから。
国を治めろとか、税金の一部を寄越せなど言ってこない。
帰国したからと言って、カルンスタインと積極的に関わろうとしなかった。
「あんたら主役も、もう帰っていいよ。こういうの、形式だから」
しっしっ、といった感じで、騎士団長に追い払われる。
「本当に、あんな手順でカーミラが死んだことにしても構わないのか?」
カルンスタインの騎士団長に尋ねてみた。
「いいよいいよ。こんなの形式だし。街をあんたらが救ったのは事実だし。市民が納得するならそれで構わないさ」
フンと鼻を鳴らし、カルンスタインの騎士たちは黙々と処刑場を片付ける。
カルンスタインとペダンの協力があってリ・ッキは退治されたと、世界中に報告した。
カミュは協力者の一人であり、深くは関与していないと。
とはいえ、カルンスタインに手柄を渡したのは正解だった。
そのおかげで、カミュは今も生きている。
自軍で不安要素を消したのだから。
「それに、あの国王の下なら、友人にはなれても、配下にはなれない」
まったくだ。オレは同意して、頭を掻く。
国王が、カミュに跡を継がせたかった理由は、自国の防衛力を増強するためだろう。
とはいえ、カミュにそんな気持ちはまったくない。
いくら身内の頼みとはいえ、だ。
人の手下になるようなタマじゃないからな。
「確かに、旧カルンスタイン王の一粒種が生きていたとなれば、ここに住む魔物たちは盛り上がる。だけど、人間族には関係ないことだ。ボクが前に出れば、みんな受動的になってしまう。せっかく結束力が強まっているのに、水を差すことになる。となれば、絶対に国家内で軋轢が生じる。ボクが離れていくしかなかったんだ」
それが、今回の偽装処刑だった。
一応、不安分子は死にました、としておけば、ひとまず国はまとまるはず。
国民たちの意識が高いうちは。
しかし、収穫はあった。
これで、国王に借りを作れたのだし。
「ありがとう、トウタス。これからもよろしくね」
「こちらこそ頼む。カミュ」
オレとカミュが、妙に意識してしまう。
「これからどうするんだ、カミュ」
「分からない」
空を見上げながら、カミュは首を振った。
「ひとまず、ここに拠点を置く。ボクたち以外にも、リ・ッキのようなヤツがいるかも知れない。そいつのせいで苦しんでいる魔物がいると思うんだ。ボクは彼らのために力を振るうよ」
カミュが手を差し伸べてくる。
「力になるぜ、カミュ」
オレは、カミュの手を強く握りしめた。
「ああ。頼むよトウタス」
カミュが、オレの手を引っ張ってくる。オレの背中に手を回し、抱き寄せた。
カミュの体温を全身に感じる。
「ん、あんた!?」
びっくりして、オレは、とっさに離れようとした。
見た目は同じだが、カミュの骨格が違っていたからだ。
だが、がっちりとカミュにホールドされて、動けない。
「男? オレが裸を見たときは、確かに……」
「ボクはどっちにでもなれるのさ。これでも魔族だからね」
魔族の特性上、両方の性別をもっているのだとか。
「なんなら、もっと触ってみるかい?」
オレの手首を持って、カミュが自身を撫でさせる。
男の体型だったり、また女の体型に戻ったりと、服越しにでも伝わってきた。
「分かった、もう十分に分かった」
「キミは分かりやすいね」
ドギマギするオレを見て、カミュがおどけてみせる。
「キミは、どっちのボクでいて欲しい? 男かな、それとも」
急に、カミュがしおらしくなった。
「トウタスがいいなら、どっちの性別も受け入れるよ」
「お前さんがなりたい方になればいいぜ」
決して決断を放棄したわけじゃなく。
カミュはカミュのままでいて欲しい。
気高く、優雅で、けれど、威圧感がない親分。
カミュの魅力に、性別は関係ないのだ。
「だからよ、オレはどんなヤツだろうと、カミュ、お前さんを受け入れるぜ」
「ありがとう、トウタス」
再び、カミュから強く抱きしめられた。
「辛い旅になるけど、ついてきて欲しい」
「もちろんだ。オレとアンタは、一蓮托生だからな」
「うん」
カミュの体温が、急激に熱くなるのを感じる。
「ぶばっちゅ!」
オレたちのやりとりを見て、セェレがまた噴火した。
青空の下、血液の虹が架かる。
(完)
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