転移先がゴミ屋敷だったので、掃除スキル最強の俺がキレイにする! 

しーとみ@映画ディレッタント

魔導ピザ

今日は一日じゅう、二人の姿を見ていない。

仕方なく、残ったクヌギと共に清掃活動。

クヌギの着ている藤色の着物は、パイロンのお下がりの浴衣だ。上に羽織っているのは、パイロンが小学校の時に使っていた割烹着である。

パイロンと真琴は、フリマの準備で忙しい。

俺も誘われたが、まだ掃除できていない場所も多く、時間もない。準備と言っても俺ができる仕事もないはず。結果、俺は城に残ることにした。

クヌギは外で、掃き掃除をしている。

まあ、イカ焼きの作り方は教えたから、本番当日は二人に任せて大丈夫だろう。

スケルトンに指示を送りつつ、自分でも玄関周りの掃除をしていたら、ドアベルが鳴った。

出ていいものかどうか悩んだが、とりあえず用件だけでも聞くか、と対応することに。

「まいどー。魔導ピザです」
現れたのは、丸々と太った短足の中年であった。服装はパリッとして、雷のようなカイゼルヒゲを携えている。オーバーオールが窮屈そうだ。

「頼んでないのだが?」

「あれー? 確かに魔王城ですよねぇ。おっかしいいなあ」

怪しいオッサンだ。けれど、害があるとは思えない。

「ああ。そうだが?」

いつの間に頼んだのだろうか。

「いやね、ここのお嬢さんに頼まれたんですよ。ミックスピザ」
おっさんが、平べったい箱を開けた。

サラミとピーマン、挽肉で構築された、オーソドックスなピザだ。できたてなのか、まだチーズがプチプチとうまそうな音を立てている。

銘柄を見ると、確かにパイロンがいつも食べている銘柄だ。オッサンの制服も同様である。

「いくらだ?」
俺は財布を取り出す。あとで真琴に立て替えてもらえばいい。

「Lサイズですから、銀二〇枚でございます」

二〇〇〇円相当か。Lサイズでこの値段は安いな。店員に銀貨を数枚渡す。

「毎度あり」
銀貨を受け取った店員は、そそくさと去って行った。

「どうした?」
入れ替わりで、クヌギが掃除から帰ってくる。

「いい匂いだのう」
「ピザだってよ」

料理人の娘であるクヌギに確認してもらう。

問題点はないと分かった。至って普通のピザであると。

「このピザ、どうするか」
「食べてしまっていいんじゃないか?」
「そうだな。少し食べて、二人が帰ってきたら、残りを食わせてやるか」

クヌギの意見を取り入れ、少量だけ食べることに。

「うん、うまい」

普通のピザだが、労働後の腹に染み渡るような深みのある味だ。

「ただいまー。爽慈郎、来てくれたんだ。クヌギちゃんもお疲れ様」

パイロンたちが戻ってきた。

「ところで、お前らピザなんか頼んでたんだな」

「え?」と、パイロンが頭に疑問符を生やす。

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