創作に役立たない、「映画の感想」

しーとみ@映画ディレッタント

撃たれても死なない菅原文太 『太陽を盗んだ男』

冴えない理科教師が原発からプルトニウムを盗み、原子爆弾を作成。政府を脅す話。
だが、日本の警察はプルトニウムを一般人に盗まれたことをひた隠すため、犯人の存在を隠蔽。別の犯人にすげ替える。

・沢田研二が扮する理科の授業は、「原爆の作り方」。
しかも、誰ひとり授業を聞いてない。
優等生でさえ、参考書を広げて受験勉強をしている始末。

・原発の内装が、「ボトムズの最終回」みたいな見た目。

・主人公の中学がバスジャックに遭う。
「天皇陛下に合わせろ」という犯人の要求に応じるシーンは、
「皇居前でロケ」
(セットかも知れないが)

・確かに「材料さえあれば台所でも原爆は作れる」という説がある。
主人公は「本当に台所で」作る。

・オーブンでプルトニウムを粉状にするが、
「野球に夢中になっていたらオーブンが破裂して、主人公が被爆」

・金属プルトニウムの破片を、「飼ってる猫が食って被爆」。即死

・金属プルトニウム完成。なのに、時限装置の外見が、
「大友克洋の『スチームボーイ』調の出来」。

・警察側が、逆探知時間を強引に短縮させるため、電電公社に頼んで、
「東京じゅうの電話を一瞬だけ止める」。
四回以上も。

・一度は原爆を警察の手に渡した主人公。
しかし、ヒロインのDJにそそのかされて警視庁に殴り込む。
「チャカ一丁で、原爆の強奪に成功する」

・「ピストルを全弾喰らっても死なない」刑事、「菅原文太」。
転落してやっと死亡。

SF好きに見せて反応を見たい、ツッコミどころ満載の作品。なのに、魅力的な映画である。

主人公は中盤、何を要求すべきか悩む。
ヒロインのDJにラジオ番組で相談を持ちかけ、「ローリングストーンズを呼べ」と要求する。
ストーンズはシャブ中だったため、一度は来日を見送られた彼らを、もう一度日本に呼ぶようにと。

だいたい、この主人公は原爆を作っただけで満足し、そこから先は何も考えていなかったように描写されている。
要求も「野球中継を延長しろ」とかしょうもない要求ばかりだ。
具体的な要求は「多額の現金をメーデーの会場にばらまけ」くらいか。
しかも、それは彼が袋小路から逃げるための詭弁である。

まるで、親がどれだけ自分のワカママに付き合ってくれるかを試しているかのように。

この主人公は、今で言う「承認欲求の強い人」と捉えると面白いのではないかと思う。

コメント

コメントを書く

「エッセイ」の人気作品

書籍化作品