おっさん、魔王の玉座になる -幼女魔王と一緒に座っているだけでレベルMAX!-

しーとみ@映画ディレッタント

第7話 幼女魔王と朝チュン

翌朝、ボクは鳥の声で目を覚ます。

空はすっかり、晴れ渡っていた。
異世界って聞いていたから、てっきり魔界っぽくずっと真っ暗な世界だと思っていたけど。

「重いな」
ボクは伸びをして、腹の上にある重しを確かめる。

いた。チサちゃんが。

魔王様と朝チュンするとは。

あの日のことは夢ではないと、リアルで思い知らされる。

しかし、すごい寝相だ。
どうやって、ボクの腹に登ったのか。

ボクもよく押しつぶさなかったことだよ。

「おはよ」
ボクの腹上に載ったまま、チサちゃんがうっすらと目を覚ます。

「おはようございます」

チサちゃんが、ボクの服を引っ張った。
起きろと言いたいらしい。

「はいはい。起きますよ」
ムクリと身体を起こす。
社会人時代は、割と規則正しい生活を心がけていた。

ボクを待っていたかのように、チサちゃんはボクの間に座った。
ここが定位置だと言わんばかりだ。

「おはようございます。魔王・チサ様、玉座・大毅様」
「うん、おはよ」

セイさんが、チサちゃんに挨拶をする。

さすがに身支度をするときは、チサちゃんはボクから距離を取った。
更衣室でカーテンを閉めて、着替えを終える。
昨日と同じ服装だが、色が紫に変わっていた。

ボクの着替えは、ゆったりした冒険者風の装備だ。
各部位にプロテクターがついている。
武器などは持たされていない。

一緒に歯を磨いて、再びボクはチサちゃん専用の玉座と化す。

「食事です」
黒い服を着たメイドさんが、チサちゃん用に朝ご飯を用意してくれる。

ボクの分までだ。

メイドさんに牙や角は生えていない。
どうやら、ボクと同じ人間のようだ。

切ったレタスのサラダ、カッチカチに硬いパン、ゆで卵が、コタツテーブルに並ぶ。

タマゴがあるから、ニワトリもいるワケか。

ボクとチサちゃんは、同じようにカフェオレを飲む。

硬いパンのスープをパンに浸して、チサちゃんはにこやかに食べる。

おいいしそうだったので、ボクもマネをしてみた。

「うん、カボチャのスープだ。おいしいです」

わずかに甘くて、パンの塩加減とマッチする。

「ありがとうございます。カボチャは当国家の名産なのです」
料理を褒められ、メイドさんは心なしかうれしそうだ。

チサちゃんの統べるこの国は、カボチャを売って生計を立てているらしい。

「あ、すいません。気がつかなくて」

そういえば、昨日は何も片付けないで寝てしまった。
疲れていたんだろう。
次は気をつけないと。

「お気になさらず。魔王様の身の回りのお世話は、玉座様には求めていませんので」

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