チートスキル『死者蘇生』が覚醒して、いにしえの魔王軍を復活させてしまいました〜誰も死なせない最強ヒーラー〜
《妖精使役》と《精霊使役》
「どこよ、ここ……地下のダンジョンに入ったはずなのに……」
シズクが立っていたのは、自然に溢れた森のような場所である。
アレンたちと一緒に地下ダンジョンへ入ったにも関わらず、気が付いたらここにいた。
周りにもアレンやジョゼの姿はなく、隔離されてしまった状況だ。
今すぐ二人を探すべきだろうが、どこに移動すれば良いか見当がつかない。
それほどに、広大な領域であった。
「お姉さまお姉さま。人間が来た」
「そうね、イリスちゃん」
そんな困惑しているシズクの前に現れたのは、金髪のエルフの姉妹だ。
美しい――同性のシズクでさえ、そう思ってしまうほどの美貌がそこにある。
自然豊かなこの領域も相まって、一つの絵画を見ているような気分になった。
「お姉さまお姉さま、この人間倒した方が良い?」
「そうよ、イリスちゃん。魔王様の命令だから頑張らないと」
見とれているシズクを余所に、姉妹の間ではシズクへの認識が決まってしまったようだ。
それも、敵として認識されてしまったらしい。
やはり、ここは地下ダンジョンの中であると再認識させられる。
このエルフの姉妹も、自分を殺そうとしている立派な敵であった。
シズクは、敵意を見せつけるように剣を抜く。
「エルフさん。今すぐ逃げるのなら、見逃してあげるわ。選びなさい」
「ティセお姉さま、何か言ってる。自分の立場が分かってないみたい」
「まあまあ。人間だから仕方がないんじゃないかしら」
シズクのハッタリも、二人には全く効果が見られない。むしろ小馬鹿にされているくらいだ。
自分たちの能力に、絶対の自信を持っている故の態度なのだろう。
数的不利に加えて能力差まであるとしたら、かなり厳しい戦いを強いられることになる。
「《妖精使役》」
先に動いたのは、エルフの姉妹の方だ。
イリスと呼ばれた妹の方は、数匹の妖精をシズクに向かって仕掛けさせた。
何ともエルフらしい能力であり、範囲攻撃の乏しいシズクには厄介な戦い方である。
「〈繚乱斬〉!」
妖精がどのような効果を持っているか分からない今では、不用意に近寄らせるわけにはいかない。
鍛え抜かれた剣術で、トンボほどの大きさの妖精を切り裂く。
器用に切り裂いた妖精は、美しさすら覚える光を放って消えた。
イリスの使役できる妖精の量に限界があるのかは不明だが、シズクにはこの作業を続けるしか選択肢が残されていない。
しかし、集中力が切れ始めてきた二十匹目で事件は起きる。
「――キャア!?」
突然腕に走る痛み。
その箇所を見ると、シズクの剣術から逃れた妖精が張り付いていた。
何とか引き剥がそうとするも、既に手遅れになっている。
その妖精は、皮膚に溶けるようにして内部へと消えていく。
皮膚と同化した――という表現がピッタリだった。
「――か、体が」
妖精が内部に入ったことで、シズクの体は雷に撃たれたかのように痺れ始める。
麻痺状態になった時の典型的な症状だ。
耐性によって長年味わっていなかった症状が、まるで復讐するかのようにシズクの体を走った。
「お姉さま、作戦成功! 褒めて褒めて」
「よしよし。《精霊使役》」
ティセは、イリスの頭を撫でる片手間に精霊を呼び出す。
エルフらしく、姉妹揃って使役する能力だ。
妖精の方は何とか防いでいたものの、麻痺してしまった今では、逃げることすらできない。
目の前で精霊が、自分の腕に溶けてゆく。
「――ウッ! ウプッ……」
シズクに訪れたのは、押し寄せるような吐き気だった。
死んでしまった方が楽とさえ思えるほど、体が悲鳴をあげている。
(状態異常にステータスダウン……!? まさか同時にやってくるなんて――とにかく、このままじゃヤバい!)
シズクは、この状況の恐ろしさに気付く。
状態異常とステータスダウンであるため、命には直接影響しない。
しかし、意識を保っていられるのが奇跡と思えるほど体は衰弱しつつある。
動けないまま生かされているというのが、何よりも恐ろしかった。
「お姉さま、この人間はどうするの?」
「そうね……それに関しては何も言われてないから、ロゼにでもあげようかしら」
「それは有効活用。お姉さま天才」
シズクは薄れゆく意識の中で、これから自分の身に起こることに恐怖するしかできなかった。
シズクが立っていたのは、自然に溢れた森のような場所である。
アレンたちと一緒に地下ダンジョンへ入ったにも関わらず、気が付いたらここにいた。
周りにもアレンやジョゼの姿はなく、隔離されてしまった状況だ。
今すぐ二人を探すべきだろうが、どこに移動すれば良いか見当がつかない。
それほどに、広大な領域であった。
「お姉さまお姉さま。人間が来た」
「そうね、イリスちゃん」
そんな困惑しているシズクの前に現れたのは、金髪のエルフの姉妹だ。
美しい――同性のシズクでさえ、そう思ってしまうほどの美貌がそこにある。
自然豊かなこの領域も相まって、一つの絵画を見ているような気分になった。
「お姉さまお姉さま、この人間倒した方が良い?」
「そうよ、イリスちゃん。魔王様の命令だから頑張らないと」
見とれているシズクを余所に、姉妹の間ではシズクへの認識が決まってしまったようだ。
それも、敵として認識されてしまったらしい。
やはり、ここは地下ダンジョンの中であると再認識させられる。
このエルフの姉妹も、自分を殺そうとしている立派な敵であった。
シズクは、敵意を見せつけるように剣を抜く。
「エルフさん。今すぐ逃げるのなら、見逃してあげるわ。選びなさい」
「ティセお姉さま、何か言ってる。自分の立場が分かってないみたい」
「まあまあ。人間だから仕方がないんじゃないかしら」
シズクのハッタリも、二人には全く効果が見られない。むしろ小馬鹿にされているくらいだ。
自分たちの能力に、絶対の自信を持っている故の態度なのだろう。
数的不利に加えて能力差まであるとしたら、かなり厳しい戦いを強いられることになる。
「《妖精使役》」
先に動いたのは、エルフの姉妹の方だ。
イリスと呼ばれた妹の方は、数匹の妖精をシズクに向かって仕掛けさせた。
何ともエルフらしい能力であり、範囲攻撃の乏しいシズクには厄介な戦い方である。
「〈繚乱斬〉!」
妖精がどのような効果を持っているか分からない今では、不用意に近寄らせるわけにはいかない。
鍛え抜かれた剣術で、トンボほどの大きさの妖精を切り裂く。
器用に切り裂いた妖精は、美しさすら覚える光を放って消えた。
イリスの使役できる妖精の量に限界があるのかは不明だが、シズクにはこの作業を続けるしか選択肢が残されていない。
しかし、集中力が切れ始めてきた二十匹目で事件は起きる。
「――キャア!?」
突然腕に走る痛み。
その箇所を見ると、シズクの剣術から逃れた妖精が張り付いていた。
何とか引き剥がそうとするも、既に手遅れになっている。
その妖精は、皮膚に溶けるようにして内部へと消えていく。
皮膚と同化した――という表現がピッタリだった。
「――か、体が」
妖精が内部に入ったことで、シズクの体は雷に撃たれたかのように痺れ始める。
麻痺状態になった時の典型的な症状だ。
耐性によって長年味わっていなかった症状が、まるで復讐するかのようにシズクの体を走った。
「お姉さま、作戦成功! 褒めて褒めて」
「よしよし。《精霊使役》」
ティセは、イリスの頭を撫でる片手間に精霊を呼び出す。
エルフらしく、姉妹揃って使役する能力だ。
妖精の方は何とか防いでいたものの、麻痺してしまった今では、逃げることすらできない。
目の前で精霊が、自分の腕に溶けてゆく。
「――ウッ! ウプッ……」
シズクに訪れたのは、押し寄せるような吐き気だった。
死んでしまった方が楽とさえ思えるほど、体が悲鳴をあげている。
(状態異常にステータスダウン……!? まさか同時にやってくるなんて――とにかく、このままじゃヤバい!)
シズクは、この状況の恐ろしさに気付く。
状態異常とステータスダウンであるため、命には直接影響しない。
しかし、意識を保っていられるのが奇跡と思えるほど体は衰弱しつつある。
動けないまま生かされているというのが、何よりも恐ろしかった。
「お姉さま、この人間はどうするの?」
「そうね……それに関しては何も言われてないから、ロゼにでもあげようかしら」
「それは有効活用。お姉さま天才」
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