乙女ゲームの村人に転生した俺だけど悪役令嬢を救いたい

白濁壺&タンペンおでん

金貨自動回収装置

 納屋に戻ろうとするビィティは決意する目指すなら王都だと。
 小さい町では13歳の子供が金貨を使ったら騒ぎになる。
 王都なら子供が金貨を使っても召し使いが、お使いをさせられてるくらいの認識で問題なく買い物ができる。

 それに知識だ。ビィティは文字を全く読めない。勉強のために本を買うにしても写本は高価だ、普通の村や町で手に入るかも分からない。

 それに都会と言うのは人に無関心だ。人は多ければ多いほど関係が希薄になる。
 そう言うことも見越して王都を目指すのが一番なのだ。

 納屋に戻ったビィティは地面に村長の部屋で覚えた地図を書き、王城の位置を頭に叩きこむ。
 王城へはどう考えても一日や二日で行けるような距離ではない。食料もなく水も無しでは確実にのたれ死ぬ。だがいかなければ未来は開かれない。
 そこで彼は1週間分の食料と王都についてから使う金を十日で貯めることにした。

 まずはダンジョンで旅に必要なアイテムとお金を金貨1000枚手にいれ。
 食料は川でとった魚を薫製にして保存食1週間分を確保する。
 水は水筒がないので竹筒を水筒にする日本式を採用し、ビィティは明日早くから行動に移すために早めに就寝した。

 翌朝、ビィティはズタ袋に必要なものを摘め、早い時間からダンジョンへと向かった。
 村に帰る意味がなくなったので、今日からここに寝泊まりをすると決め、前日稼いだお金は滝の裏にあるへこみに隠し石で蓋をした。
 仮に村の連中が探しに来たときの対策だった。お金だけは絶対に渡せないのだ。

 まずはビィティは竹を採取する。この世界の竹は1年毎に直径が1cm大きくなり最大1mにまで成長する。
 直径20cm程の竹を選び、短く切り分ける。

 その竹をまっぷたつに割ると節を取り除き、割った竹をつたで合わせ元の筒に戻す。
 そこにズタ袋をつけ川の石で固定して水中に沈める。

 ビィティは魚取り用の罠を作っていたのだ。

 罠が出来上がると、また竹を加工する。
 今度は細い竹を斜めに切り数本の竹槍を作った。それを横に並べつたで縛ると竹槍を何本も取り付けた武器が出来上がり、名前を扇子竹槍せんすたけやりとセンスの無い名前をつけて喜んでいた。

 扇子竹槍を持ってダンジョンに入ると早速魔物が現れ竹槍に貫かれ金貨を落とす。
 だがビィティは喜ばない、本番はこれからだからだ。ビ彼は危険をおかして地下二階に降りる。

 危険を冒してまで二階に降りるのは二階以降の魔物はアイテムをドロップするからだ。
 今後の旅に必要なものを手に入れるためには地下二階に行くのは必須だった。
 二階に降りるとすぐに二匹の魔物が現れたが、魔物たちは扇形に繋がれた扇子竹槍に突かれ絶命した。

「成功だ!」

 ビィティは二階の階段付近で前に進んでは下がるを繰り返し魔物を倒しては金貨を得た。
 魔物討伐数も3桁に迫ろうと言うころ、一体の魔物がアイテムをドロップした。

「やっと出たか。これで荷物を持っていける」
 
 それは一見するとただのバックだがゲーム内ではアイテム所持数拡張バッグなのだ。
 ビィティはそのアイテム所持数拡張バッグを普通のバッグとして使おうと言う考えなのだ。

 今までドロップしたアイテムをそのバッグに入れているときにビィティはバッグに重さがないことに気がついた。
 バッグの中を見ると今まで入れたアイテムが一つもない。焦ったビィティはバッグを逆さまにして出てこい出てこいと唱えると今まで入れたアイテムが一瞬で出てきた。

「これアイテムストレージみたいなものなのか?」

 村人AであるビィティにはUユーザーIインターフェースはない。だから拡張アイテムも適用されない。それゆえにアイテム数拡張バッグは収納アイテムへと姿を変えたのだ。

 アイテムバッグは拡張用だと言うこともあり10種類のアイテムしか入れることができない。
 使用方法はアイテムバッグの中に手を入れて、欲しいものを考えると出てくる。
 ちなみに全部だしたいと思えばすべて排出されるので、忘れたアイテムが取り出せないと言うことはない。

 ビィティは更にアイテムバッグを手に入れ、それをアイテムバックに入れることで収納力をアップさせた。
 10個しか入らないアイテムバッグにアイテムバッグを入れることで無限にアイテム所持数を増やすことができるのだ。

 そしてアイテム数拡張バッグを手にいれる副産物として革鎧一式と短剣を手にいれた。
 この革鎧は自動調整機能がついており体に合わせサイズを変えてくれる優れものだった。
 だがビィティは不満そうに自分の装備を見る。

「うーんコートとか欲しいよな。でもこのダンジョンでドロップするのは基本女物だしな……」
 ビィティは自分で言っていておいて自分の言葉に矛盾があることに気がついた。
 元々バッグを手にいれるために魔物を狩っていたので革鎧が出たときは深く考えずに着てしまったビィティだが、乙女ゲーで男性用装備など出るわけがないのだ。

「もしかして倒した性別のアイテムが出るのか?」
 それを調べるには地下三階に行かなければならなかった。三階からはドレスや女性用の小物が出るからだ。
 しかし三階の敵は桁違いに強くなる。一撃で殺せなかった場合逆に反撃され一撃で殺されてしまうそれがレベルなしの村人の現実なのだ。

 この竹槍戦法も、この階が限界なのだ。レベルがないビィティに三階で戦うすべは無い。

「無理をしても仕方ないな引き換えそう」
 ビィティには考えがあった。レベルはないが強くなる方法はあるのだと。

 ダンジョンから出るとビィティは竹細工を作る。竹槍を四方に巡らせた箱だ。それに足を作り高さを調整する。

 ビィティはそれを作り終わると川の仕掛けを見に行った。
 罠には3匹の魚がかかっている。
 ニジマスに似た魚で25cmくらいの大きさだ。

 そのうちの一匹を直径50cm程の竹で作った桶に水を入れ泳がせた。
 先程の竹槍の箱をダンジョンの中に入れ、その中央に魚の入った桶を入れた。
 しばらくすると魔物が現れては竹槍に刺されて消滅し、金貨を落とした。
 そして、また同じように魔物が現れては竹槍に刺されて消えていくのである。
 これで全自動金貨収集装置が完成したのである。

「結構うまくいくもんだな」

 ビィティは自嘲ぎみに呟くとダンジョンの外へと戻った。薪を集め、納屋から持ってきたわらに火花を飛ばし火をつける。
 小さな枯れ葉の付いた枝を置いて燃え移らせ薪を置く。
 焚き火の火が落ち着くとビィティは竹で作ったナイフをつくり、桶に入れておいた魚を取り出すと、内蔵を処理して竹串を刺し、火から少し離れた地面に刺した。

「強火の遠火、これ基本」

 魚から取った内蔵はズタ袋に入れ罠を再設置した。

 食事を取り腹がふくれたビィティは眠気に襲われる。今日一日頑張ったからなと意識を失う前に毛布にくるまり、焚き火の側で就寝した。
 こんなに満腹で寝るのは両親が死んで以来始めてだった。

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