クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら、魔王に遭遇したんですけど...
62話 転移魔法の復活
風舞
「おはようフーマくん」
「なぁ、マイム。お前は普通に起こすことができないのか?」
フレンダさんとしっぽりと遊んだ翌朝、舞の声に反応して目を覚ますと目の前に舞の顔があった。
もっと正確に言うのなら、舞が俺の頭の上で逆立ちをしている。
何をどうしたらこういうアクロバティックな起こし方をしようと思ったのだろうか。
「ふふ。私はフーマくんに飽きられないように斬新な起こし方を日々追及してるのよ」
「飽きるも何も普通の起こされ方を一回もされた事がない気がするんだけど」
「あら、そうだったかしら?」
舞はそう言うと、逆立ちしたままジャンプをして俺の寝ていたベッドの横にスタリと着地した。
今の今まで舞の髪の毛に阻まれて視界が若干暗かったため、窓から射し込む太陽の光が凄く眩しく感じる。
最近は夏が近づいてきたためか気温が高くなってきたし、今日は日差しが強そうだから結構暑そうだな。
そんな事を考えながら伸びをしつつ窓の外を眺めていると、寝癖で髪の毛をボサボサにしたローズが俺のベッドの方にやって来た。
「おはようフーマ。今日はフレンはいるのかの?」
「えーっと」
『おはようございますフーマ』
「いますね」
「そうか。それでは、遂に妾の刀を披露する事が出来そうじゃな」
ローズはそう言いながらニッと笑うと、俺が寝ていたベッドの上に腰かけた。
『あぁ、お姉様。子供用の可愛らしい寝間着も凄くお似合いです』
「さて、それじゃあ妾の髪にブラシをかけてくれ」
「別にそれは良いけど、ここまでの寝癖なら風呂に入って来た方が早いんじゃないか?」
「むぅ、今日の妾はフーマに髪を結ってもらうつもりだったんじゃが」
「それじゃあ後でやってやるから、とりあえず寝癖を直してこいよ。マイムも朝風呂に行くんだろ?」
「ええ。そのつもりよ」
「では、先に風呂に行ってくるとするか」
ローズはそう言うと、ベッドの上にブラシを放り投げて自分の荷物を漁りに行った。
さて、それじゃあ俺も部屋の風呂で軽くシャワーでも浴びて寝汗を流しますかね。
「あ、転移魔法の事伝え忘れてた」
『はぁ、相変わらずフーマは愚鈍ですね』
俺はそんなフレンダさんの小言を聞きながら、ベッドから出て寝汗を流すために風呂場に向かった。
◇◆◇
風舞
軽く汗を流してスッキリした後、大風呂に行った舞達が帰って来るまで暇になってしまった俺は、フレンダさんのおかげでまた使えるようになった転移魔法の試験運用をして時間を潰すことにした。
「さてと、それじゃあ早速ソレイドまでかっ飛びますか」
『貴方はアホですか?』
「え?  もう転移魔法を使えるんじゃないんですか?」
『確かに私はそのためにフーマの魂を治療しましたが、万が一転移魔法に何か不備があったらどうするのですか?」
「それじゃあ、アイテムボックスとかなら良いですかね?」
『まぁ、そのあたりが無難ですね』
アイテムボックスか。
そういえばずっとステータスカードを見てなかったし、今のレベルがいくつになってるのかも気になる。
よし、ステータスカードを取り出してみるか。
「じゃあ、早速やってみますね」
『出来るだけ小さい物を取り出すんですよ』
「分かってますって」
『はぁ、どうだか』
さて、久しぶりの転移魔法だし簡単なアイテムボックスでも集中してやるとしよう。
そう思った俺は体の中の魔力を転移魔法のパターンにゆっくりと流し込みながら、目を閉じて集中を始めた。
あぁ、これだよこれ。
何で最近まで転移魔法の使い方が分からなかったんだろうか。
数十日前まで何回も繰り返してきた転移魔法がかなり懐かしく感じる。
「あ、出来ました」
『何か不具合とかはありませんでしたか?』
「まぁ、特にないですね。むしろ、こんなにすんなりいくもんなのかと思うぐらいです」
『そうですか。それで、それは貴方のステータスカードですか?』
「はい。ずっとアイテムボックスに入れっぱなしだったから、俺も見るのは久しぶりなんですよね」
俺はそう言いながら、ステータスカードの確認を始めた。
わお、レベルがめっちゃ上がってる。
◇◆◇
フウマ タカネ
レベル 40  
体力132/132
魔力 1515/1517
知能 1500
攻撃力 127
防御力  125
魔法攻撃力 163
魔法防御力 161
俊敏性 127
魔法 転移魔法LV8 (火魔法LV4)
スキル ランバルディア共通語 魔力操作LV4 気配遮断LV2 剣術LV2  豪運 直感LV6
称号 異世界からの来訪者 勇者 大物食い
ステータスポイント 64
◇◆◇
「おお、火魔法が二つも上がってる」
『以前はいくつだったのですか?』
「確かアセイダルと戦う前に確認した時はLV2だったと思います」
『あぁ、悪魔と戦ったというあの時ですか。それ以降は火魔法は使ってないのですよね?』
「そうっすね。あの戦い以降は魔法が使えなくなってましたし」
『しかし、一つの戦闘で2つも魔法のLVが上がるとは珍しいですね』
「まぁ、何回も死にかけながら戦ってましたからね。むしろ、こんくらいは上がっててくれないと割りに合わないかもです」
『確かにあの時のフーマは死ぬ一歩手前でしたし、それもそうですね』
「でも、やっぱり火魔法は使えなさそうですね」
『そうですね。フーマの様な事例は私も初めてですが、ステータスカードがこうなるとは知りませんでした』
フレンダさんの言う様にステータスカードに書かれている火魔法という文字が薄く表示されている。
おそらくこれが火魔法を覚えてはいるが使えないという状況を表す表記なのだろう。
「あと、アセイダル戦で使った氷魔法は載ってないんですね」
『氷魔法はあくまでギフトの力によって発動させたものだからではないですか?』
「ギフトで一度使った魔法を覚えられたら便利だったんですけど、そう上手くはいかないんですね」
『まぁ、ギフトは確かに強力なものが多いですが、他者を圧倒的に出し抜くものはあまり無いですからね』
やっぱりあのギフトはあくまで魔法の使い方をカンニングするだけのものであって、一度使った魔法を直ぐに覚える事が出来るという訳ではないのか。
まぁ、使い方を知らない魔法を使えるだけでも便利なのに、その上魔法の習得まで出来たら強すぎるか。
舞は俺の事をチートキャラと言ってくれるが、流石にそこまで強すぎるギフトを持っていても持て余すだけだろうし、このぐらいがちょうど良いのかもしれない。
「さてと、それじゃあ次は近場への転移をしてみますね」
『はい。念のため注意しながら発動させるのですよ』
その後、フレンダさんに見守られながら何回か転移魔法を使ってみて調子を整えていたところで、大浴場に行っていた舞とローズが戻って来た。
どうやら転移魔法はフレンダさんのお蔭で完全に以前の様に使えるようになったみたいだし、これで世界樹の探索も少しは楽になるか。
俺はそんな事を考えながら、俺に髪を結われた舞とローズと共にターニャさんとの朝食の場へと向かった。
◇◆◇
風舞
今日も美味しい和食もどきをたっぷりと頂いた後、水を飲みながら食休みをしていると、円卓で俺の正面の席に座っていたターニャさんがふと思い出した様に口を開いた。
ちなみに、ファルゴさんと団長さんは世界樹の魔物の発生に関する簡単な報告書を里長に作ってもらうために朝から面会に行っているため、今朝は俺と舞とローズとターニャさんだけで朝食を摂った。
一応配膳まではエルフの使用人さん達がやってくれたが、今はターニャさんが人払いをしたためここには俺達しかいない。
「あ、そういえばマイムに頼まれてた世界樹の朝露手に入ったよ」
「あら、もう少し時間がかかるものだと思っていたのだけれど、随分と早く手に入ったのね」
「うん。もしもの場合に備えて宮殿に世界樹の朝露を常備するようにしてるんだけど、丁度昨日新しい奴が届いたから古いのならマイムにあげても良いって」
「む?  古いのとはどのくらい前からあるものなのじゃ?」
「あぁ、古いとは言っても世界樹で採取して数日しか経ってないからまだ劣化はしてないよ。ミレン先生はアイテムボックスが使えるからそれでも大丈夫なんでしょ?」
「うむ。助かったぞターニャ。礼を言うのじゃ」
「良いって良いって。それじゃあ、忘れちゃう前に先に渡しとこっか」
こうして、俺達三人はターニャさんに連れられて彼女の私室に足を運ぶことになった。
そういえば舞と団長さんがエルセーヌさんと喧嘩をしたのもターニャさんの私室だって言ってた気がするけど、被害は無かったのだろうか。
「なぁマイム。ターニャさんの部屋って団長さんとマイムに爆破されたって聞いたんだけど、大丈夫だったのか?」
「ええ。悔しい事にエルセーヌが部屋の中に結界を張っていたから、ドアを吹き飛ばすのみで部屋の中に大した被害は無かったのよ」
「あぁ、なるほど」
確かにエルセーヌさんなら舞達に絡みに行く前に周りに被害を出さないよう、予め結界を張っておくぐらいの事はしそうな気がする。
エルセーヌさんはどうしても狡猾で小悪党なところが目立つけど、なんだかんだ言ってフレンダさんの英才教育を受けて彼女の専属で働いていたくらいだし、かなり優秀なのだろう。
そんな事を考えながら歩いていると、先頭を歩いていたターニャさんが顔だけで振り返りながら俺に声をかけて来た。
「そういえば、今日はフーマも訓練場に来ない?」
「午後からは少し用事があるので、それまでなら良いですよ」
「あぁ、それじゃあマイムとミレン先生と同じか。午後になったら皆で遊びに行くの?」
「まぁ、そんな感じですね。まだユーリアくん達と無事にエルフの里にたどり着いた打ち上げをしてなかったので、それをやる予定なんです」
『よくそんな嘘がポンポンと出てきますね』
「へぇ。それじゃあ、後でユーリアの好物の美味しいお肉を渡すからそれも持ってってよ」
「ありがとうございます」
気を使って打ち上げのための食材をくれるというターニャさんには悪いが、もちろん打ち上げ云々の話は嘘である。
昨日の晩エルセーヌさんを通じて俺達三人とファルゴさんと団長さん、それにユーリアくんの六人で世界樹攻略会議の予定を今日の午後に入れておいたのだ。
もともと諜報のスペシャリストであるエルセーヌさんにとってこの程度の伝達の仕事は楽なものだったらしく、最後に俺達の部屋に戻って来た時にはドヤ顔で「オホホ。この宮殿の警備はザルですわね」とか言っていた。
「何から何まで悪いわね」
「いーって、いーって。私がやりたいからやってる事なんだからマイムは気にしなくても良いんだよ」
「でも、流石にここまで色々やってもらってばかりだと流石に気が引けるわ。魔物退治とか何か私達に出来そうな事があれば手伝うわよ?」
「うーん。魔物退治と言ってもほとんど森の中で警備兵が倒しちゃうし、特に困ったりはしてないからなぁ」
「では、世界樹の朝露の採取の手伝いはどうじゃ?  あれはかなり採取が難しいんじゃろ?」
「ん?  朝露の採取は別に難しくないよ?」
「む?そうなのかの?」
「うん。トウカの家に行ったとき、家の中に観葉植物みたいなの無かった?」
「あぁ、そういえば壁際に葉っぱが生えてた気がします」
「うん。当然だけどそれも世界樹の葉だから、室温と湿度を調節すれば結構簡単に作れるんだよね。まぁ、ちゃんと回復効果がある世界樹の葉はあんまり数は多く無いから少しだけ面倒だけど、朝露はその気になれば無限に作り出せるよ」
「マジかいな」
俺の横を歩いていた舞が驚いた様な顔をしながらそう言った。
何となく俺のセリフが取られた気がしないでもないが、世界樹の朝露がそんな単純な方法で作れるなんて俺も思いもしなかったし、舞が驚くのも無理はないかもしれない。
ただ、思い返してみればトウカさんは世界樹の朝露を常用している可能性がある訳だし、そうなると世界樹の朝露の採取の難易度がそこまで高くなくてもおかしくないか。
「何と言うか、知りたくなかった事を知ってしまったような感覚じゃな」
「ああ。世界樹の朝露が簡単に生産可能って微妙に残念だよな」
俺とローズは顔を見合わせてそんな事を言いながら、やれやれと首を振った。
「おはようフーマくん」
「なぁ、マイム。お前は普通に起こすことができないのか?」
フレンダさんとしっぽりと遊んだ翌朝、舞の声に反応して目を覚ますと目の前に舞の顔があった。
もっと正確に言うのなら、舞が俺の頭の上で逆立ちをしている。
何をどうしたらこういうアクロバティックな起こし方をしようと思ったのだろうか。
「ふふ。私はフーマくんに飽きられないように斬新な起こし方を日々追及してるのよ」
「飽きるも何も普通の起こされ方を一回もされた事がない気がするんだけど」
「あら、そうだったかしら?」
舞はそう言うと、逆立ちしたままジャンプをして俺の寝ていたベッドの横にスタリと着地した。
今の今まで舞の髪の毛に阻まれて視界が若干暗かったため、窓から射し込む太陽の光が凄く眩しく感じる。
最近は夏が近づいてきたためか気温が高くなってきたし、今日は日差しが強そうだから結構暑そうだな。
そんな事を考えながら伸びをしつつ窓の外を眺めていると、寝癖で髪の毛をボサボサにしたローズが俺のベッドの方にやって来た。
「おはようフーマ。今日はフレンはいるのかの?」
「えーっと」
『おはようございますフーマ』
「いますね」
「そうか。それでは、遂に妾の刀を披露する事が出来そうじゃな」
ローズはそう言いながらニッと笑うと、俺が寝ていたベッドの上に腰かけた。
『あぁ、お姉様。子供用の可愛らしい寝間着も凄くお似合いです』
「さて、それじゃあ妾の髪にブラシをかけてくれ」
「別にそれは良いけど、ここまでの寝癖なら風呂に入って来た方が早いんじゃないか?」
「むぅ、今日の妾はフーマに髪を結ってもらうつもりだったんじゃが」
「それじゃあ後でやってやるから、とりあえず寝癖を直してこいよ。マイムも朝風呂に行くんだろ?」
「ええ。そのつもりよ」
「では、先に風呂に行ってくるとするか」
ローズはそう言うと、ベッドの上にブラシを放り投げて自分の荷物を漁りに行った。
さて、それじゃあ俺も部屋の風呂で軽くシャワーでも浴びて寝汗を流しますかね。
「あ、転移魔法の事伝え忘れてた」
『はぁ、相変わらずフーマは愚鈍ですね』
俺はそんなフレンダさんの小言を聞きながら、ベッドから出て寝汗を流すために風呂場に向かった。
◇◆◇
風舞
軽く汗を流してスッキリした後、大風呂に行った舞達が帰って来るまで暇になってしまった俺は、フレンダさんのおかげでまた使えるようになった転移魔法の試験運用をして時間を潰すことにした。
「さてと、それじゃあ早速ソレイドまでかっ飛びますか」
『貴方はアホですか?』
「え?  もう転移魔法を使えるんじゃないんですか?」
『確かに私はそのためにフーマの魂を治療しましたが、万が一転移魔法に何か不備があったらどうするのですか?」
「それじゃあ、アイテムボックスとかなら良いですかね?」
『まぁ、そのあたりが無難ですね』
アイテムボックスか。
そういえばずっとステータスカードを見てなかったし、今のレベルがいくつになってるのかも気になる。
よし、ステータスカードを取り出してみるか。
「じゃあ、早速やってみますね」
『出来るだけ小さい物を取り出すんですよ』
「分かってますって」
『はぁ、どうだか』
さて、久しぶりの転移魔法だし簡単なアイテムボックスでも集中してやるとしよう。
そう思った俺は体の中の魔力を転移魔法のパターンにゆっくりと流し込みながら、目を閉じて集中を始めた。
あぁ、これだよこれ。
何で最近まで転移魔法の使い方が分からなかったんだろうか。
数十日前まで何回も繰り返してきた転移魔法がかなり懐かしく感じる。
「あ、出来ました」
『何か不具合とかはありませんでしたか?』
「まぁ、特にないですね。むしろ、こんなにすんなりいくもんなのかと思うぐらいです」
『そうですか。それで、それは貴方のステータスカードですか?』
「はい。ずっとアイテムボックスに入れっぱなしだったから、俺も見るのは久しぶりなんですよね」
俺はそう言いながら、ステータスカードの確認を始めた。
わお、レベルがめっちゃ上がってる。
◇◆◇
フウマ タカネ
レベル 40  
体力132/132
魔力 1515/1517
知能 1500
攻撃力 127
防御力  125
魔法攻撃力 163
魔法防御力 161
俊敏性 127
魔法 転移魔法LV8 (火魔法LV4)
スキル ランバルディア共通語 魔力操作LV4 気配遮断LV2 剣術LV2  豪運 直感LV6
称号 異世界からの来訪者 勇者 大物食い
ステータスポイント 64
◇◆◇
「おお、火魔法が二つも上がってる」
『以前はいくつだったのですか?』
「確かアセイダルと戦う前に確認した時はLV2だったと思います」
『あぁ、悪魔と戦ったというあの時ですか。それ以降は火魔法は使ってないのですよね?』
「そうっすね。あの戦い以降は魔法が使えなくなってましたし」
『しかし、一つの戦闘で2つも魔法のLVが上がるとは珍しいですね』
「まぁ、何回も死にかけながら戦ってましたからね。むしろ、こんくらいは上がっててくれないと割りに合わないかもです」
『確かにあの時のフーマは死ぬ一歩手前でしたし、それもそうですね』
「でも、やっぱり火魔法は使えなさそうですね」
『そうですね。フーマの様な事例は私も初めてですが、ステータスカードがこうなるとは知りませんでした』
フレンダさんの言う様にステータスカードに書かれている火魔法という文字が薄く表示されている。
おそらくこれが火魔法を覚えてはいるが使えないという状況を表す表記なのだろう。
「あと、アセイダル戦で使った氷魔法は載ってないんですね」
『氷魔法はあくまでギフトの力によって発動させたものだからではないですか?』
「ギフトで一度使った魔法を覚えられたら便利だったんですけど、そう上手くはいかないんですね」
『まぁ、ギフトは確かに強力なものが多いですが、他者を圧倒的に出し抜くものはあまり無いですからね』
やっぱりあのギフトはあくまで魔法の使い方をカンニングするだけのものであって、一度使った魔法を直ぐに覚える事が出来るという訳ではないのか。
まぁ、使い方を知らない魔法を使えるだけでも便利なのに、その上魔法の習得まで出来たら強すぎるか。
舞は俺の事をチートキャラと言ってくれるが、流石にそこまで強すぎるギフトを持っていても持て余すだけだろうし、このぐらいがちょうど良いのかもしれない。
「さてと、それじゃあ次は近場への転移をしてみますね」
『はい。念のため注意しながら発動させるのですよ』
その後、フレンダさんに見守られながら何回か転移魔法を使ってみて調子を整えていたところで、大浴場に行っていた舞とローズが戻って来た。
どうやら転移魔法はフレンダさんのお蔭で完全に以前の様に使えるようになったみたいだし、これで世界樹の探索も少しは楽になるか。
俺はそんな事を考えながら、俺に髪を結われた舞とローズと共にターニャさんとの朝食の場へと向かった。
◇◆◇
風舞
今日も美味しい和食もどきをたっぷりと頂いた後、水を飲みながら食休みをしていると、円卓で俺の正面の席に座っていたターニャさんがふと思い出した様に口を開いた。
ちなみに、ファルゴさんと団長さんは世界樹の魔物の発生に関する簡単な報告書を里長に作ってもらうために朝から面会に行っているため、今朝は俺と舞とローズとターニャさんだけで朝食を摂った。
一応配膳まではエルフの使用人さん達がやってくれたが、今はターニャさんが人払いをしたためここには俺達しかいない。
「あ、そういえばマイムに頼まれてた世界樹の朝露手に入ったよ」
「あら、もう少し時間がかかるものだと思っていたのだけれど、随分と早く手に入ったのね」
「うん。もしもの場合に備えて宮殿に世界樹の朝露を常備するようにしてるんだけど、丁度昨日新しい奴が届いたから古いのならマイムにあげても良いって」
「む?  古いのとはどのくらい前からあるものなのじゃ?」
「あぁ、古いとは言っても世界樹で採取して数日しか経ってないからまだ劣化はしてないよ。ミレン先生はアイテムボックスが使えるからそれでも大丈夫なんでしょ?」
「うむ。助かったぞターニャ。礼を言うのじゃ」
「良いって良いって。それじゃあ、忘れちゃう前に先に渡しとこっか」
こうして、俺達三人はターニャさんに連れられて彼女の私室に足を運ぶことになった。
そういえば舞と団長さんがエルセーヌさんと喧嘩をしたのもターニャさんの私室だって言ってた気がするけど、被害は無かったのだろうか。
「なぁマイム。ターニャさんの部屋って団長さんとマイムに爆破されたって聞いたんだけど、大丈夫だったのか?」
「ええ。悔しい事にエルセーヌが部屋の中に結界を張っていたから、ドアを吹き飛ばすのみで部屋の中に大した被害は無かったのよ」
「あぁ、なるほど」
確かにエルセーヌさんなら舞達に絡みに行く前に周りに被害を出さないよう、予め結界を張っておくぐらいの事はしそうな気がする。
エルセーヌさんはどうしても狡猾で小悪党なところが目立つけど、なんだかんだ言ってフレンダさんの英才教育を受けて彼女の専属で働いていたくらいだし、かなり優秀なのだろう。
そんな事を考えながら歩いていると、先頭を歩いていたターニャさんが顔だけで振り返りながら俺に声をかけて来た。
「そういえば、今日はフーマも訓練場に来ない?」
「午後からは少し用事があるので、それまでなら良いですよ」
「あぁ、それじゃあマイムとミレン先生と同じか。午後になったら皆で遊びに行くの?」
「まぁ、そんな感じですね。まだユーリアくん達と無事にエルフの里にたどり着いた打ち上げをしてなかったので、それをやる予定なんです」
『よくそんな嘘がポンポンと出てきますね』
「へぇ。それじゃあ、後でユーリアの好物の美味しいお肉を渡すからそれも持ってってよ」
「ありがとうございます」
気を使って打ち上げのための食材をくれるというターニャさんには悪いが、もちろん打ち上げ云々の話は嘘である。
昨日の晩エルセーヌさんを通じて俺達三人とファルゴさんと団長さん、それにユーリアくんの六人で世界樹攻略会議の予定を今日の午後に入れておいたのだ。
もともと諜報のスペシャリストであるエルセーヌさんにとってこの程度の伝達の仕事は楽なものだったらしく、最後に俺達の部屋に戻って来た時にはドヤ顔で「オホホ。この宮殿の警備はザルですわね」とか言っていた。
「何から何まで悪いわね」
「いーって、いーって。私がやりたいからやってる事なんだからマイムは気にしなくても良いんだよ」
「でも、流石にここまで色々やってもらってばかりだと流石に気が引けるわ。魔物退治とか何か私達に出来そうな事があれば手伝うわよ?」
「うーん。魔物退治と言ってもほとんど森の中で警備兵が倒しちゃうし、特に困ったりはしてないからなぁ」
「では、世界樹の朝露の採取の手伝いはどうじゃ?  あれはかなり採取が難しいんじゃろ?」
「ん?  朝露の採取は別に難しくないよ?」
「む?そうなのかの?」
「うん。トウカの家に行ったとき、家の中に観葉植物みたいなの無かった?」
「あぁ、そういえば壁際に葉っぱが生えてた気がします」
「うん。当然だけどそれも世界樹の葉だから、室温と湿度を調節すれば結構簡単に作れるんだよね。まぁ、ちゃんと回復効果がある世界樹の葉はあんまり数は多く無いから少しだけ面倒だけど、朝露はその気になれば無限に作り出せるよ」
「マジかいな」
俺の横を歩いていた舞が驚いた様な顔をしながらそう言った。
何となく俺のセリフが取られた気がしないでもないが、世界樹の朝露がそんな単純な方法で作れるなんて俺も思いもしなかったし、舞が驚くのも無理はないかもしれない。
ただ、思い返してみればトウカさんは世界樹の朝露を常用している可能性がある訳だし、そうなると世界樹の朝露の採取の難易度がそこまで高くなくてもおかしくないか。
「何と言うか、知りたくなかった事を知ってしまったような感覚じゃな」
「ああ。世界樹の朝露が簡単に生産可能って微妙に残念だよな」
俺とローズは顔を見合わせてそんな事を言いながら、やれやれと首を振った。
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