クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら、魔王に遭遇したんですけど...
20話 運ばれる男
シルビア ソレイドのローズ邸にて
「さて、フーマ様達はもう出て行ってしまったしこの人どうしようかな」
ソレイドにあるローズ様の家のリビングにて、一人待機することになった私は部屋の隅の方に転がっているゲードを眺めながらそう呟いた。
「話を聞き出す為に連れて来たけど正直ここにいられても迷惑だし、気絶したままで話を聞く必要も特になかったからもう邪魔なだけなんだよね。うーん…そうだ。私はここを離れる訳にはいかないし外に転がしておこう」
そう思い立った私はゲードを引きずって外に連れ出し、家の前の路上に放り投げた。
「これで良し。服も破って脱がせたし誰かが自治兵に通報してその内回収してくれるよね」
私はいい仕事をして出た額の汗を拭ってから、フーマ様達のいるダンジョンの方へ顔を向けた。
私とアンを救ってくれてアンの病を治すのにも協力してくれると言ってくれた私の勇者様であるフーマ様は今も戦ってらっしゃるはずだ。
私はフーマ様の従者として皆様の帰る場所をしっかりと守り通そう。
心の中でそう決意した。
「無事なご帰還をお待ちしておりますフーマ様」
私はダンジョンの方を向いてフーマ様の無事を願って頭を下げた後、アンの看病をするために家の中に戻った。
◇◆◇
風舞
ミレイユさんに地図と未調査領域の情報をもらった俺達は、第27階層を目指して破竹の勢いでダンジョンを攻略していた。
「なぁ、確かに俺の足はお前らより遅いし魔力を温存しなくちゃいけないっていうのは分かるんだけど、流石にこれはなくない?」
「なんじゃ?  この緊急事態に何か文句でもあるのか?」
「いや、それを言われたら何も返せないんだけどさ」
俺はローズの頭に手を置きつつそう答えた。
俺とローズの俊敏性の差は300ぐらいで舞との差に至っては600ぐらいあるため、足の速さで全く敵わない俺はダンジョンまで転移魔法を駆使してなんとか二人について来たのだが、ダンジョンに入った辺りでローズに「お主にはこれから戦闘以外で魔力を使うことを控えてもらう」と言われてしまった為に、移動で転移魔法を使えなくなってしまった。
レベルを少しでも上げるために魔物を倒しながら進みたいが、俺の場合はここにいる魔物は転移魔法なしで倒せるような相手じゃないし、その上移動にまで転移魔法を使っていたらアセイダル戦で魔力が足りないなんて事になりかねない。
だけどさぁ…。
「何で俺はダンジョンの中でローズに肩車されてんだろ」
俺はもう何度目かわからないため息をつきながらそう呟いた。
転移魔法を使わなければ二人に追いつけない俺は、ローズの提案というか命令で肩車されて運ばれる羽目になったのである。
ローズが言うには俺が両手をフリーにできてローズ自身も走り安い肩車がベストという事になったのだが、男子高校生が自分よりも背が低い女の子に肩車されて、その理由が担いだ方が速いからってどうなのよ。
因みに、第21階層からはダンジョンが遺跡風になっていて天井が平らなため頭をぶつける心配がないのも俺が肩車をされている原因の一つだったりする。
そこは空気読んで元の洞窟スタイルにしとけよダンジョン。
「おいフウマ。前からレッサーサラマンダー2匹じゃ」
「ああ、はいよ」
俺は走るローズの上から、レッサーサラマンダーの真上にアイテムボックスから取り出した巨石を転移させて2匹ともベチャっと潰して倒した。
因みにこの巨石はレイズニウム公国からソレイドに帰ってくる途中、ボタンさんに山を切り崩して作って貰ったもので、俺の転移魔法で敵をぶっ潰すためにアイテムボックスに大量にストックされている物の一つである。
第21階層に入ってからは全ての魔物をこのスタイルで倒してきた。
この方法なら魔物に接敵したら直ぐに敵を倒せるため、今まで出会った全ての魔物を倒してきているが一度も足を止めていない。
まぁ、俺の足は一切動いてないんだけど。
「ねぇローズちゃん。さっきから魔物は全て風舞くんが全て倒していて私は露払いの必要がないみたいだから変わってちょうだいよ。ローズちゃんばかり風舞くんを肩車しててズルいわ。私の方がローズちゃんよりもステータスが高いし、その方が速く走れるでしょう?」
「ふむ。両手剣を使う舞が露払いには最適じゃと思っておったがそれもそうじゃな。ほれ」
ローズが俺が巨石に触れてアイテムボックスに巨石を仕舞ったのを確認すると、俺の足首を掴んで舞に向かって投げつけた。
突然の事に一切対応できなかった俺は姿勢を変えることなくそのまま舞の方へ飛んでいく。
「よっと。ここからは私が運ぶから任せてちょうだい!」
舞が俺を優しくキャッチしてお姫様だっこをすると、俺の顔を見下ろして笑顔でそう言った。
何が悲しくて俺は異世界にまで来て好きな女の子にお姫様だっこされているのだろうか。
そう考えるとなんだか泣きたい気分になった。
「ちょっと風舞くん!?  どうして泣いているの?  私は風舞くんの味方よ。困ったことがあるなら何でも相談してちょうだい!」
俺は迷惑をかけないように大人しく舞の腕に抱かれながら、男の涙で頬を濡らした。
ちくしょう! 絶対舞より強くなってお姫様抱っこし返してやるからな!
◇◆◇
第27階層未調査領域にて
「ホウ。ヤハリアノ人間共二持タセテイタ魔道具ヲ奪ワレタヨウダナ」
暗闇の中で一人椅子に腰掛ける赤黒い肌の男は手に持つ魔道具を一瞥してそう呟いた。
男の額には一本の黒い角が生えていて、その黄色い瞳は暗闇の中でも爛々と輝いている。
「ドウセモウコノマチニ用ハ無イ。強化薬ノ実験データモ十分取レタシ、思ワヌ収穫モアッタカラナ」
男は机の上で炎の様に光り輝く宝石を眺めながら始めての挑戦者が現れるのを待ち望み、不気味な笑みを浮かべて再び口を開いた。
「クヒヒヒヒ。何者カハ分カランガ早ク来イ。コノアセイダル様ガ直々ニブッ殺シテヤロウ」
◇◆◇
風舞
「あ、またレベル上がってる。やったー」
「おめでとう風舞くん。ってどうしてそんなに世界に絶望した顔をしているのかしら?」
「そんな事ないぞ。異世界マジ最高。あはははは、はぁ」
「ローズちゃん!  風舞くんの様子がおかしいわ!」
「はぁ、難儀な奴達じゃな」
現在俺達がいるのは第25階層。
ここに来るまでに出会った魔物は全て俺が倒して来たので、俺のレベルはぐんぐん上がり今では30になっていた。
「ステータスポイントも64かー。いっぱいあって嬉しいなー」
「おいフウマ。そろそろしゃっきりするのじゃ。ほれ、もう26階層に入るぞ」
その声を聞いて先頭を走るローズの方へ顔を向けると第26階層へ続く階段が見えた。
「舞、そろそろ下ろしてくれ。決勝前に体を温めておきたい。それに舞も準備運動くらい必要だろ?」
「それもそうね。非常に残念だけど下ろしてあげるわ」
こうして俺は舞のお姫様抱っこという甘い地獄から解放された。
「自由だ!  やっぱり自分の足で立つって素晴らしいな!」
「まったく、大袈裟な奴じゃな」
足を止めて俺達のやり取りを見ていてローズがヤレヤレと両手挙げながら呆れた顔をしている。
「さて、気を引き締めて行こうぜ!  大量の経験値が俺を待っている!」
「ねぇ、ローズちゃん。風舞くんがアセイダルの事を経験値呼ばわりし始めたわ」
「やる気は十分なようじゃし、良いんじゃないかの」
待ってろよアセイダル!
俺がブッ殺して舞に近づくための踏み台にしてやるからな!
俺は心の中でそう決意した。
◇◆◇
風舞
「はぁはぁはぁ。ちょ、ちょっとタンマ」
「まったく。さっきまでのやる気はどうしたんじゃ」
やる気満々で走り初めて数分後、目的地の第27階層の壁画の前で俺は膝に手をついて息を整えていた。
まぁ、第26階層に入ってから舞とローズが魔物を張り倒しながら走るのをずっと全力で追いかけて来た訳だから息が切れるのも無理はないだろう。
だってこの2人魔物が見えたなと思ったら黒い霧に変えてんだもん。
そんなんにまともに走って追いつくなんて無理じゃん。
「まぁ良いんじゃないかしら。ほら、美味しいお水よ」
「ああ、ありがとう」
舞が俺の取り出したコップに水を注いで渡してくれた。
久し振りに飲んだけど、この水なんでかわからないんだけど本当に美味しいんだよな。
なんか入ってんのか?
そんな事を考えながら俺がコップに入った水を座り込んで飲んでいると、ローズが難しい顔をして壁画を見ているのに気がついた。
「どうしたローズ?」
「うむ。どうやらこの先に妾の力が封じられておる魔封結晶があるようじゃ」
「それって、もしかして」
「うむ。アセイダルが魔封結晶を持っておるとみて間違いないじゃろうな」
「マジかいな」
以前、ローズは魔封結晶は近くにいる魔物を活性化すると言っていた。
魔物の一種である悪魔もその例外ではないだろうし、多分アセイダルの力も強化されている事だろう。
「これは一筋縄ではいかなそうじゃな。お主ら、覚悟は良いか?」
「何を今更。ここまで来て引き下がれる訳ねぇだろ。さっさとアセイダルを倒して帰ろうぜ!」
「風舞くんの言う通りよ。そもそもソレイドに来たのはローズちゃんの魔封結晶を回収するためなんだし、ここで怖気付いては女が廃るわ!」
「よし、では行くぞ!」
「おう!」「ええ!」
こうして俺達は壁画に隠されていた仕掛けを作動させて未調査領域へと足を踏み入れた。
3人の中で最弱の俺ではここに立つには力不足だが、舞とローズだけを強大な相手と戦わせる訳にはいかない。
いざとなったら俺の魔力を全部使ってでも2人を逃がそう。
俺はそう決意しながら新たなスキルを習得しつつ2人に続いた。
「さて、フーマ様達はもう出て行ってしまったしこの人どうしようかな」
ソレイドにあるローズ様の家のリビングにて、一人待機することになった私は部屋の隅の方に転がっているゲードを眺めながらそう呟いた。
「話を聞き出す為に連れて来たけど正直ここにいられても迷惑だし、気絶したままで話を聞く必要も特になかったからもう邪魔なだけなんだよね。うーん…そうだ。私はここを離れる訳にはいかないし外に転がしておこう」
そう思い立った私はゲードを引きずって外に連れ出し、家の前の路上に放り投げた。
「これで良し。服も破って脱がせたし誰かが自治兵に通報してその内回収してくれるよね」
私はいい仕事をして出た額の汗を拭ってから、フーマ様達のいるダンジョンの方へ顔を向けた。
私とアンを救ってくれてアンの病を治すのにも協力してくれると言ってくれた私の勇者様であるフーマ様は今も戦ってらっしゃるはずだ。
私はフーマ様の従者として皆様の帰る場所をしっかりと守り通そう。
心の中でそう決意した。
「無事なご帰還をお待ちしておりますフーマ様」
私はダンジョンの方を向いてフーマ様の無事を願って頭を下げた後、アンの看病をするために家の中に戻った。
◇◆◇
風舞
ミレイユさんに地図と未調査領域の情報をもらった俺達は、第27階層を目指して破竹の勢いでダンジョンを攻略していた。
「なぁ、確かに俺の足はお前らより遅いし魔力を温存しなくちゃいけないっていうのは分かるんだけど、流石にこれはなくない?」
「なんじゃ?  この緊急事態に何か文句でもあるのか?」
「いや、それを言われたら何も返せないんだけどさ」
俺はローズの頭に手を置きつつそう答えた。
俺とローズの俊敏性の差は300ぐらいで舞との差に至っては600ぐらいあるため、足の速さで全く敵わない俺はダンジョンまで転移魔法を駆使してなんとか二人について来たのだが、ダンジョンに入った辺りでローズに「お主にはこれから戦闘以外で魔力を使うことを控えてもらう」と言われてしまった為に、移動で転移魔法を使えなくなってしまった。
レベルを少しでも上げるために魔物を倒しながら進みたいが、俺の場合はここにいる魔物は転移魔法なしで倒せるような相手じゃないし、その上移動にまで転移魔法を使っていたらアセイダル戦で魔力が足りないなんて事になりかねない。
だけどさぁ…。
「何で俺はダンジョンの中でローズに肩車されてんだろ」
俺はもう何度目かわからないため息をつきながらそう呟いた。
転移魔法を使わなければ二人に追いつけない俺は、ローズの提案というか命令で肩車されて運ばれる羽目になったのである。
ローズが言うには俺が両手をフリーにできてローズ自身も走り安い肩車がベストという事になったのだが、男子高校生が自分よりも背が低い女の子に肩車されて、その理由が担いだ方が速いからってどうなのよ。
因みに、第21階層からはダンジョンが遺跡風になっていて天井が平らなため頭をぶつける心配がないのも俺が肩車をされている原因の一つだったりする。
そこは空気読んで元の洞窟スタイルにしとけよダンジョン。
「おいフウマ。前からレッサーサラマンダー2匹じゃ」
「ああ、はいよ」
俺は走るローズの上から、レッサーサラマンダーの真上にアイテムボックスから取り出した巨石を転移させて2匹ともベチャっと潰して倒した。
因みにこの巨石はレイズニウム公国からソレイドに帰ってくる途中、ボタンさんに山を切り崩して作って貰ったもので、俺の転移魔法で敵をぶっ潰すためにアイテムボックスに大量にストックされている物の一つである。
第21階層に入ってからは全ての魔物をこのスタイルで倒してきた。
この方法なら魔物に接敵したら直ぐに敵を倒せるため、今まで出会った全ての魔物を倒してきているが一度も足を止めていない。
まぁ、俺の足は一切動いてないんだけど。
「ねぇローズちゃん。さっきから魔物は全て風舞くんが全て倒していて私は露払いの必要がないみたいだから変わってちょうだいよ。ローズちゃんばかり風舞くんを肩車しててズルいわ。私の方がローズちゃんよりもステータスが高いし、その方が速く走れるでしょう?」
「ふむ。両手剣を使う舞が露払いには最適じゃと思っておったがそれもそうじゃな。ほれ」
ローズが俺が巨石に触れてアイテムボックスに巨石を仕舞ったのを確認すると、俺の足首を掴んで舞に向かって投げつけた。
突然の事に一切対応できなかった俺は姿勢を変えることなくそのまま舞の方へ飛んでいく。
「よっと。ここからは私が運ぶから任せてちょうだい!」
舞が俺を優しくキャッチしてお姫様だっこをすると、俺の顔を見下ろして笑顔でそう言った。
何が悲しくて俺は異世界にまで来て好きな女の子にお姫様だっこされているのだろうか。
そう考えるとなんだか泣きたい気分になった。
「ちょっと風舞くん!?  どうして泣いているの?  私は風舞くんの味方よ。困ったことがあるなら何でも相談してちょうだい!」
俺は迷惑をかけないように大人しく舞の腕に抱かれながら、男の涙で頬を濡らした。
ちくしょう! 絶対舞より強くなってお姫様抱っこし返してやるからな!
◇◆◇
第27階層未調査領域にて
「ホウ。ヤハリアノ人間共二持タセテイタ魔道具ヲ奪ワレタヨウダナ」
暗闇の中で一人椅子に腰掛ける赤黒い肌の男は手に持つ魔道具を一瞥してそう呟いた。
男の額には一本の黒い角が生えていて、その黄色い瞳は暗闇の中でも爛々と輝いている。
「ドウセモウコノマチニ用ハ無イ。強化薬ノ実験データモ十分取レタシ、思ワヌ収穫モアッタカラナ」
男は机の上で炎の様に光り輝く宝石を眺めながら始めての挑戦者が現れるのを待ち望み、不気味な笑みを浮かべて再び口を開いた。
「クヒヒヒヒ。何者カハ分カランガ早ク来イ。コノアセイダル様ガ直々ニブッ殺シテヤロウ」
◇◆◇
風舞
「あ、またレベル上がってる。やったー」
「おめでとう風舞くん。ってどうしてそんなに世界に絶望した顔をしているのかしら?」
「そんな事ないぞ。異世界マジ最高。あはははは、はぁ」
「ローズちゃん!  風舞くんの様子がおかしいわ!」
「はぁ、難儀な奴達じゃな」
現在俺達がいるのは第25階層。
ここに来るまでに出会った魔物は全て俺が倒して来たので、俺のレベルはぐんぐん上がり今では30になっていた。
「ステータスポイントも64かー。いっぱいあって嬉しいなー」
「おいフウマ。そろそろしゃっきりするのじゃ。ほれ、もう26階層に入るぞ」
その声を聞いて先頭を走るローズの方へ顔を向けると第26階層へ続く階段が見えた。
「舞、そろそろ下ろしてくれ。決勝前に体を温めておきたい。それに舞も準備運動くらい必要だろ?」
「それもそうね。非常に残念だけど下ろしてあげるわ」
こうして俺は舞のお姫様抱っこという甘い地獄から解放された。
「自由だ!  やっぱり自分の足で立つって素晴らしいな!」
「まったく、大袈裟な奴じゃな」
足を止めて俺達のやり取りを見ていてローズがヤレヤレと両手挙げながら呆れた顔をしている。
「さて、気を引き締めて行こうぜ!  大量の経験値が俺を待っている!」
「ねぇ、ローズちゃん。風舞くんがアセイダルの事を経験値呼ばわりし始めたわ」
「やる気は十分なようじゃし、良いんじゃないかの」
待ってろよアセイダル!
俺がブッ殺して舞に近づくための踏み台にしてやるからな!
俺は心の中でそう決意した。
◇◆◇
風舞
「はぁはぁはぁ。ちょ、ちょっとタンマ」
「まったく。さっきまでのやる気はどうしたんじゃ」
やる気満々で走り初めて数分後、目的地の第27階層の壁画の前で俺は膝に手をついて息を整えていた。
まぁ、第26階層に入ってから舞とローズが魔物を張り倒しながら走るのをずっと全力で追いかけて来た訳だから息が切れるのも無理はないだろう。
だってこの2人魔物が見えたなと思ったら黒い霧に変えてんだもん。
そんなんにまともに走って追いつくなんて無理じゃん。
「まぁ良いんじゃないかしら。ほら、美味しいお水よ」
「ああ、ありがとう」
舞が俺の取り出したコップに水を注いで渡してくれた。
久し振りに飲んだけど、この水なんでかわからないんだけど本当に美味しいんだよな。
なんか入ってんのか?
そんな事を考えながら俺がコップに入った水を座り込んで飲んでいると、ローズが難しい顔をして壁画を見ているのに気がついた。
「どうしたローズ?」
「うむ。どうやらこの先に妾の力が封じられておる魔封結晶があるようじゃ」
「それって、もしかして」
「うむ。アセイダルが魔封結晶を持っておるとみて間違いないじゃろうな」
「マジかいな」
以前、ローズは魔封結晶は近くにいる魔物を活性化すると言っていた。
魔物の一種である悪魔もその例外ではないだろうし、多分アセイダルの力も強化されている事だろう。
「これは一筋縄ではいかなそうじゃな。お主ら、覚悟は良いか?」
「何を今更。ここまで来て引き下がれる訳ねぇだろ。さっさとアセイダルを倒して帰ろうぜ!」
「風舞くんの言う通りよ。そもそもソレイドに来たのはローズちゃんの魔封結晶を回収するためなんだし、ここで怖気付いては女が廃るわ!」
「よし、では行くぞ!」
「おう!」「ええ!」
こうして俺達は壁画に隠されていた仕掛けを作動させて未調査領域へと足を踏み入れた。
3人の中で最弱の俺ではここに立つには力不足だが、舞とローズだけを強大な相手と戦わせる訳にはいかない。
いざとなったら俺の魔力を全部使ってでも2人を逃がそう。
俺はそう決意しながら新たなスキルを習得しつつ2人に続いた。
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