クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら、魔王に遭遇したんですけど...
1話 救出と逃亡
舞
「ふう。とりあえずこれで応急処置は終わりました。外傷的には命に別状はありませんが、何か病に侵されているようで、そちらの方が心配です」
私達は急に家に現れた獣人さんを客間に運び込み、ミレイユさんが応急処置を済ませた所で一息ついた。
「ふむ。こやつは以前妾達がダンジョンで出会った悪魔の祝福を使っておった獣人で間違いないの。同じ気配がする」
「そう。それじゃあ病というのは悪魔の祝福の副作用によるものね」
「うむ。おそらくそれで間違いあるまい。身体を蝕んでおる呪術の方は今の妾では完全には解けぬが、これ以上悪化させない事と行動の制約を解く事は出来るはずじゃ。こやつが起きたら話を聞いてみるかの」
「そうね。それが良いと思うわ」
どうやらこの獣人さんにかけられた呪術はローズちゃんが一部だが解けるらしい。
これで麻薬組織についての情報が掴めるわね。
そう私が考えていた所でミレイユさんが私に声をかけてきた。
「マイムさん。大丈夫ですか?」
「ええ、私は問題ないわ。それよりも今は…」
そこまで言った所で私はミレイユさんの不安げな顔を見てハッとした。
どうやら今の私はミレイユさんにこんな顔をさせてしまう程酷い顔をしていたらしい。
私は自分の顔を両手でほぐしてから再度ミレイユさんへ言葉を投げかけた。
「いえ。やっぱりフーマくんの身に何かあったと判って焦っていたわ。心配かけたわね」
「気にしないでください。フーマさんが心配なのは私も同じ事ですから、無理はないです」
「まあ、あやつに貼っておいた魔法の反応が弱くはなっているが、まだ感じられる。おそらく生きてはいるじゃろうよ」
ローズちゃんがそう言って私を励ましてくれた。
それにしても、ローズちゃんはそんな魔法をいつの間に風舞くんに仕掛けていたのね。
私も後で教えてもらわないと。
そう思っていた所でミレイユさんが両手をパンと合わせて笑顔で提案をした。
少しでも雰囲気を良くしようと明るくしてくれているのだろう。
「この獣人の方が起きるまでまだ時間がかかりそうですし、まずは腹ごしらえをしませんか?」
「そうね。私もペコペコだったのを忘れていたわ。少し遅いけれど昼食にしましょう」
風舞くんはまだ生きている。
それが判っただけでも十分だ。
風舞くんがどんな危機な目に会っていても絶対に私が助けに行くわ。
だって、私は風舞くんに助けられっぱなしですもの。
そろそろ恩を返さなくては女が廃るってものよ。
◇◆◇
風舞
「知らない部屋だ」
俺が目を覚ました所は見た事もない薄暗い部屋だった。
俺は木製の椅子に金属製の手枷と足枷で固定されている。
全身が酷く痛むし血が足りていない為か意識も若干朦朧とする。
「えーっと。どうしてこうなったんだっけ」
俺はついさっきまで自分の身に何が起こっていたのかを思い出してみる事にした。
◇◆◇
風舞
シルビアさんが転移魔法陣でダンジョンの中から脱出するのを見送った俺は、過度の疲労の為かダンジョンで寝落ちしてしまった。
俺が起きたのは魔力の回復量的に20分後くらいであったと思う。
「お、魔力も76まで回復してるな。さて、そろそろ俺もダンジョンを出るか」
俺はアイテムボックスからリュックを取り出して冒険者として怪しまれない格好になってからダンジョンを後にした。
傷だらけではあるが、冒険者としてはそこまで珍しいものではないだろう。
そう考えながら俺がダンジョンから出ると男性の冒険者ギルドの職員から声をかけられた。
何回か冒険者ギルドで見かけた事がある気がする。
「第10階層突破おめでとうございます。ゴブリンキングを見事打ち滅ぼしたのですね」
「俺が第10階層に来た時にはゴブリンキングはいませんでしたよ?  つい最近別の誰かが倒したんじゃないですか?」
「いえ。前回ゴブリンキングが倒されたのは2週間ほど前ですし、それ以降ゴブリンキングが倒されたという報告は受けてませんね」
「そんな訳ありませんよ。俺はゴブリンキングなんて見た事もありませんし」
「はっはっは。おかしな事を言う人だ。私は朝からここでこうやって立っていますが、今日その転移魔法陣を使って出て来た人は貴方一人ですよ」
そこまで話を聞いた俺はこの男性職員の目を見て気がついた。
ああ、こいつは悪魔の祝福に関与している人間で、転移魔法陣でダンジョンから出てきたシルビアさんに何かをした張本人なのだと。
確かに俺が何も知らない冒険者ならゴブリンキングを倒したと言われたら、自分の手柄にする為に「はい、そうです」と言っていたかもしれない。
しかし、俺はシルビアさんの事情を知っているし、こいつが嘘を言っている事にも既に気づいている。
「こいつは敵だ」と思った俺は気がついたら剣を抜き転移魔法で男の背後に周り剣を首筋に当てていた。
「俺が出てくる10分ほど前にシルビアという獣人の女性が出て来たはずだ。その人をどこにやった」
俺は自分でも驚くくらい低い声が出ているのを感じた。
どうやらかなり頭にきているらしい。
「し、知らない!  俺はそんなやつ見ていない!」
「とぼけるなよ。俺はお前の首をここで跳ね飛ばしても良いんだぞ」
俺が本気でそう言っている事に気がついたのか、男性職員は思わず声を漏らした。
「ヒィッ!  ろ、6番通りの3つ目の角を曲がって路地を進んだところにある酒場に行けと言った。俺はその後あの女がどうなった知らない」
「あっそ」
俺は男性職員を突き飛ばしてから剣の側面で頭を殴って気絶させて、6番通りの建物の上へ転移魔法で跳んだ。
ソレイドの街は中心にあるダンジョンを起点に8つの大きな通りがあり、それぞれ北から右回りに1番通りから8番通りまで順に名付けられている。
「クソッ!  いきなりシルビアさんがこんな事になるとは思ってなかった。甘かったか」
俺は屋根の上を走って目当ての酒場を路地の上から見つけると、転移魔法でその店の前に立ちドアを蹴破って中に入った。
店の中では一人の獣人の男と人間の男が酒を飲んでいたので、俺は転移魔法で獣人の男の背後に回って頭を机に叩きつけ、もう一人の男の背後に転移魔法で回り込み先程と同じように首筋に剣を当てた。
「シルビアという獣人の女性に用がある。命が惜しければさっさと話せ」
「そ、そこの通路を奥に行くと地下室への階段がある。その女は下にいるはずだ」
「ふん」
俺が剣術を使って男の背中を峰で打ち付けると、男はそのまま吹っ飛び壁にぶち当たって気絶した。
おそらくレベルも一桁しかない只の見張りなのだろう。
その後、俺は男が指し示した通路を進むと地下へ向かう階段があるのを見つけた。
「ここか」
俺は足音を忍ばせながら階段をゆっくりと降りて行った。
地下への階段は重い扉で閉じられていたし、俺が酒場に押しかけて来た事には未だ気付かれていないだろう。
そう考えての行動だ。
しかし、地下に降りてみると俺の思惑とは反して、俺が階段を降りて行くと武器を持った男達がニタニタとこちらを笑って見ていた。
「よぉ、ルーキー。お早い到着だなぁ」
「シルビアさんはどこだ」
「どこってそこに居るだろ」
男が親指で指差した先を目で追うと部屋の隅でシルビアさんが倒れているのを見つけた。
彼女の顔には殴られた後があり、身体には無数の切り傷がついたいた。
切り傷はどれも浅く、彼女を甚振る為に付けられたもののように見える。
「何故彼女を傷つけた」
「私を騙したのですかってうるさかったからな。呪術で口を閉じさせても良かったが、どうせだから殴った。そしたら弱ってたみたいで直ぐに倒れちまったんだけどな」
「クズいな」
俺は剣を構えて男達を睨みつけた。
男達は全部で5人。
装備を見る限り高ランクの冒険者ではないようだが、戦闘慣れしていないようには見えない相手だ。
それにシルビアさんの傷自体は深くなさそうだが、失血死の心配もある。一刻も早く彼女を助け出さなくてはならない。
「お?  Eランクの駆け出し冒険者が俺達とやろうってのか?」
「縮地」
俺はそう言ってシルビアさんのすぐそばへ転移した。男達は俺が急に背後に現れた事で驚いた声を上げた。
「何!?  こいつは新人の癖に縮地が使えんのかよ!」
「出口を塞げ!  縮地は言ってみりゃ速く移動しているだけだ。逃げ場さえ塞いじまえば大した事はねえ!」
「遅ぇよ」
俺はシルビアさんを抱き抱えて地上へ続く階段まで転移した。
本当はシルビアさんを抱えたまま家まで転移したかったが、残り魔力が少なかった為にそれは出来なかった。
俺はシルビアさんを抱えたまま街を走り、後ろから走って追いかけてくる男達から逃げ周る。
どこにあの男の仲間がいるのかわからない俺は人気のない路地を進むしかなかった。
そうして路地を進む事数分。
ゴブリンキングとの戦いで肋骨を折った為に、直ぐに上がってしまった息を身を隠して整えていると、気を失っていたシルビアさんが目を覚ました。
「ん、フーマさん?」
「おう。無事か?」
「はい。全身が痛いですが。えっと、私はいったい、」
「ああ、今はいいから休んどけ」
そう俺が言ったところで、俺を追っていた男の一人が隠れていた路地に入ってくるのが視界の端に入った。俺は舌打ちをしてからシルビアさんを下ろして彼女の顔を見ながら言った。
「今から俺の家にシルビアさんを転移させる。何か困った事があったらミレンという金髪の女の子か、マイムという女神のような黒髪の女の子に相談しろ。きっと助けてくれるはずだ」
「フーマさん?」
「悪いな」
俺はそう言ってシルビアさんの肩に手を置いて転移させた。
「おいお前!  今何をした!」
こちらに走って来ていた男がそう吠えるのが聞こえる。
俺は魔力切れ寸前で頭がガンガン痛むのを抑えながら最後の魔力を振り絞って男の背後に回り込み、首を剣術で斬りつけた。
男のステータスが意外にも高かった為か首を飛ばすまでには至らなかったが、もの凄い量の血を吹き出して倒れていくのを確認した。
「くそ。ここまでか」
俺はそう小さく呟くと一人路地裏で気絶した。
「ふう。とりあえずこれで応急処置は終わりました。外傷的には命に別状はありませんが、何か病に侵されているようで、そちらの方が心配です」
私達は急に家に現れた獣人さんを客間に運び込み、ミレイユさんが応急処置を済ませた所で一息ついた。
「ふむ。こやつは以前妾達がダンジョンで出会った悪魔の祝福を使っておった獣人で間違いないの。同じ気配がする」
「そう。それじゃあ病というのは悪魔の祝福の副作用によるものね」
「うむ。おそらくそれで間違いあるまい。身体を蝕んでおる呪術の方は今の妾では完全には解けぬが、これ以上悪化させない事と行動の制約を解く事は出来るはずじゃ。こやつが起きたら話を聞いてみるかの」
「そうね。それが良いと思うわ」
どうやらこの獣人さんにかけられた呪術はローズちゃんが一部だが解けるらしい。
これで麻薬組織についての情報が掴めるわね。
そう私が考えていた所でミレイユさんが私に声をかけてきた。
「マイムさん。大丈夫ですか?」
「ええ、私は問題ないわ。それよりも今は…」
そこまで言った所で私はミレイユさんの不安げな顔を見てハッとした。
どうやら今の私はミレイユさんにこんな顔をさせてしまう程酷い顔をしていたらしい。
私は自分の顔を両手でほぐしてから再度ミレイユさんへ言葉を投げかけた。
「いえ。やっぱりフーマくんの身に何かあったと判って焦っていたわ。心配かけたわね」
「気にしないでください。フーマさんが心配なのは私も同じ事ですから、無理はないです」
「まあ、あやつに貼っておいた魔法の反応が弱くはなっているが、まだ感じられる。おそらく生きてはいるじゃろうよ」
ローズちゃんがそう言って私を励ましてくれた。
それにしても、ローズちゃんはそんな魔法をいつの間に風舞くんに仕掛けていたのね。
私も後で教えてもらわないと。
そう思っていた所でミレイユさんが両手をパンと合わせて笑顔で提案をした。
少しでも雰囲気を良くしようと明るくしてくれているのだろう。
「この獣人の方が起きるまでまだ時間がかかりそうですし、まずは腹ごしらえをしませんか?」
「そうね。私もペコペコだったのを忘れていたわ。少し遅いけれど昼食にしましょう」
風舞くんはまだ生きている。
それが判っただけでも十分だ。
風舞くんがどんな危機な目に会っていても絶対に私が助けに行くわ。
だって、私は風舞くんに助けられっぱなしですもの。
そろそろ恩を返さなくては女が廃るってものよ。
◇◆◇
風舞
「知らない部屋だ」
俺が目を覚ました所は見た事もない薄暗い部屋だった。
俺は木製の椅子に金属製の手枷と足枷で固定されている。
全身が酷く痛むし血が足りていない為か意識も若干朦朧とする。
「えーっと。どうしてこうなったんだっけ」
俺はついさっきまで自分の身に何が起こっていたのかを思い出してみる事にした。
◇◆◇
風舞
シルビアさんが転移魔法陣でダンジョンの中から脱出するのを見送った俺は、過度の疲労の為かダンジョンで寝落ちしてしまった。
俺が起きたのは魔力の回復量的に20分後くらいであったと思う。
「お、魔力も76まで回復してるな。さて、そろそろ俺もダンジョンを出るか」
俺はアイテムボックスからリュックを取り出して冒険者として怪しまれない格好になってからダンジョンを後にした。
傷だらけではあるが、冒険者としてはそこまで珍しいものではないだろう。
そう考えながら俺がダンジョンから出ると男性の冒険者ギルドの職員から声をかけられた。
何回か冒険者ギルドで見かけた事がある気がする。
「第10階層突破おめでとうございます。ゴブリンキングを見事打ち滅ぼしたのですね」
「俺が第10階層に来た時にはゴブリンキングはいませんでしたよ?  つい最近別の誰かが倒したんじゃないですか?」
「いえ。前回ゴブリンキングが倒されたのは2週間ほど前ですし、それ以降ゴブリンキングが倒されたという報告は受けてませんね」
「そんな訳ありませんよ。俺はゴブリンキングなんて見た事もありませんし」
「はっはっは。おかしな事を言う人だ。私は朝からここでこうやって立っていますが、今日その転移魔法陣を使って出て来た人は貴方一人ですよ」
そこまで話を聞いた俺はこの男性職員の目を見て気がついた。
ああ、こいつは悪魔の祝福に関与している人間で、転移魔法陣でダンジョンから出てきたシルビアさんに何かをした張本人なのだと。
確かに俺が何も知らない冒険者ならゴブリンキングを倒したと言われたら、自分の手柄にする為に「はい、そうです」と言っていたかもしれない。
しかし、俺はシルビアさんの事情を知っているし、こいつが嘘を言っている事にも既に気づいている。
「こいつは敵だ」と思った俺は気がついたら剣を抜き転移魔法で男の背後に周り剣を首筋に当てていた。
「俺が出てくる10分ほど前にシルビアという獣人の女性が出て来たはずだ。その人をどこにやった」
俺は自分でも驚くくらい低い声が出ているのを感じた。
どうやらかなり頭にきているらしい。
「し、知らない!  俺はそんなやつ見ていない!」
「とぼけるなよ。俺はお前の首をここで跳ね飛ばしても良いんだぞ」
俺が本気でそう言っている事に気がついたのか、男性職員は思わず声を漏らした。
「ヒィッ!  ろ、6番通りの3つ目の角を曲がって路地を進んだところにある酒場に行けと言った。俺はその後あの女がどうなった知らない」
「あっそ」
俺は男性職員を突き飛ばしてから剣の側面で頭を殴って気絶させて、6番通りの建物の上へ転移魔法で跳んだ。
ソレイドの街は中心にあるダンジョンを起点に8つの大きな通りがあり、それぞれ北から右回りに1番通りから8番通りまで順に名付けられている。
「クソッ!  いきなりシルビアさんがこんな事になるとは思ってなかった。甘かったか」
俺は屋根の上を走って目当ての酒場を路地の上から見つけると、転移魔法でその店の前に立ちドアを蹴破って中に入った。
店の中では一人の獣人の男と人間の男が酒を飲んでいたので、俺は転移魔法で獣人の男の背後に回って頭を机に叩きつけ、もう一人の男の背後に転移魔法で回り込み先程と同じように首筋に剣を当てた。
「シルビアという獣人の女性に用がある。命が惜しければさっさと話せ」
「そ、そこの通路を奥に行くと地下室への階段がある。その女は下にいるはずだ」
「ふん」
俺が剣術を使って男の背中を峰で打ち付けると、男はそのまま吹っ飛び壁にぶち当たって気絶した。
おそらくレベルも一桁しかない只の見張りなのだろう。
その後、俺は男が指し示した通路を進むと地下へ向かう階段があるのを見つけた。
「ここか」
俺は足音を忍ばせながら階段をゆっくりと降りて行った。
地下への階段は重い扉で閉じられていたし、俺が酒場に押しかけて来た事には未だ気付かれていないだろう。
そう考えての行動だ。
しかし、地下に降りてみると俺の思惑とは反して、俺が階段を降りて行くと武器を持った男達がニタニタとこちらを笑って見ていた。
「よぉ、ルーキー。お早い到着だなぁ」
「シルビアさんはどこだ」
「どこってそこに居るだろ」
男が親指で指差した先を目で追うと部屋の隅でシルビアさんが倒れているのを見つけた。
彼女の顔には殴られた後があり、身体には無数の切り傷がついたいた。
切り傷はどれも浅く、彼女を甚振る為に付けられたもののように見える。
「何故彼女を傷つけた」
「私を騙したのですかってうるさかったからな。呪術で口を閉じさせても良かったが、どうせだから殴った。そしたら弱ってたみたいで直ぐに倒れちまったんだけどな」
「クズいな」
俺は剣を構えて男達を睨みつけた。
男達は全部で5人。
装備を見る限り高ランクの冒険者ではないようだが、戦闘慣れしていないようには見えない相手だ。
それにシルビアさんの傷自体は深くなさそうだが、失血死の心配もある。一刻も早く彼女を助け出さなくてはならない。
「お?  Eランクの駆け出し冒険者が俺達とやろうってのか?」
「縮地」
俺はそう言ってシルビアさんのすぐそばへ転移した。男達は俺が急に背後に現れた事で驚いた声を上げた。
「何!?  こいつは新人の癖に縮地が使えんのかよ!」
「出口を塞げ!  縮地は言ってみりゃ速く移動しているだけだ。逃げ場さえ塞いじまえば大した事はねえ!」
「遅ぇよ」
俺はシルビアさんを抱き抱えて地上へ続く階段まで転移した。
本当はシルビアさんを抱えたまま家まで転移したかったが、残り魔力が少なかった為にそれは出来なかった。
俺はシルビアさんを抱えたまま街を走り、後ろから走って追いかけてくる男達から逃げ周る。
どこにあの男の仲間がいるのかわからない俺は人気のない路地を進むしかなかった。
そうして路地を進む事数分。
ゴブリンキングとの戦いで肋骨を折った為に、直ぐに上がってしまった息を身を隠して整えていると、気を失っていたシルビアさんが目を覚ました。
「ん、フーマさん?」
「おう。無事か?」
「はい。全身が痛いですが。えっと、私はいったい、」
「ああ、今はいいから休んどけ」
そう俺が言ったところで、俺を追っていた男の一人が隠れていた路地に入ってくるのが視界の端に入った。俺は舌打ちをしてからシルビアさんを下ろして彼女の顔を見ながら言った。
「今から俺の家にシルビアさんを転移させる。何か困った事があったらミレンという金髪の女の子か、マイムという女神のような黒髪の女の子に相談しろ。きっと助けてくれるはずだ」
「フーマさん?」
「悪いな」
俺はそう言ってシルビアさんの肩に手を置いて転移させた。
「おいお前!  今何をした!」
こちらに走って来ていた男がそう吠えるのが聞こえる。
俺は魔力切れ寸前で頭がガンガン痛むのを抑えながら最後の魔力を振り絞って男の背後に回り込み、首を剣術で斬りつけた。
男のステータスが意外にも高かった為か首を飛ばすまでには至らなかったが、もの凄い量の血を吹き出して倒れていくのを確認した。
「くそ。ここまでか」
俺はそう小さく呟くと一人路地裏で気絶した。
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