螺旋階段

山田 みつき

11

ぼんやりしてると、うるさい足音が廊下に響き渡る。
私に反響して近付いて来るのが解る。

私はポケットから手鏡を取り出し、わざとらしく髪を直す様な真似をする。


「ねぇ、井川さん…?」


誰こいつ…?
見た事もないんだけど。


真冬「あ、私貴方と同じ三年の。私五組なんだけど。…真冬って呼んで!」


バッカみたい。
なんでこんな面倒な奴らと関わらないといけないの。


そう思っていた矢先、その女は周りの女子共を蹴散らした。


真冬「今、井川さんと話してるから。ちょっと外してくれる?」


私は、この女の頭からつま先まで、撫でる様に見た。

スカートの丈。
染めてないロングの髪。
はい、普通。
目線は同じぐらい。
何かイライラする。


私は言葉を放つ。


香澄「…なんだっけ?真冬?だっけ。あたし、そんな暇じゃないんだけど。」

真冬「とりあえずあの子らはいーのいーの。御免。私、あの人達とツルんでて、退屈してたんだ。ちょっと付き合ってくんない?」

香澄「…いいよ。別に。」


何なの?
ズケズケと入ってくんなよ。

そう思いながらまずは一言。


香澄「あんたさ、どーゆーつもりであたしに話掛けて来たんだよ。あたしはあんたの事も知らないよ。」


その女は脅えた表情も何一つ見せなかった。


真冬「いいじゃん。ね、妹居るんだよね?」


お前に関係あるかって。
ってゆうか、私の事、怖くないわけ?


香澄「…居るよ。バカな妹。で?」

真冬「私も。弟だけど。…妹っていいよね。ウチは弟だからね。良くわかんない。不良ぶってんの。」


私に話を合わせているのかは解らない。
けれど、私に怖がる事をしない奴って上等じゃん?
仲良く出来るかもって思った。
この学校で、初めて誰かと話した。


きっと、もしかしたらこの女も解るかもしれない。
そう思った。
だから思い切って、顔立ちとは不似合いな事を言ってみる。


香澄「…あのさぁ。話なら、屋上で聞くけど。」


彼女は少し笑って見せた。
あ、隙を見せたかもしれないと思った。
でも言葉を撤回するのは違う。


真冬「屋上?いいね、行こ。この人達、邪魔だし。」


可愛い気ない女。
無邪気なの?
それ素なの?
生意気だなぁ。


でもまぁ、誘ったの私だし。


…ってえ?
同じにおい?

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