螺旋階段

山田 みつき

7 付き纏う影

桜「お前ら、いい加減にしないと姉貴に言うぞ。」

「ひぃい、桜さん、すみません!」


廊下で、桜の怒鳴り声を聞いた。
妹である桜は三年の廊下迄、どうやら来たようだ。
桜は、一年でも、立派な不良と化していた。
それどころか、性別も曖昧になった妹は、どうやら弟になってしまった様だ。
彼女みたいなのも家に連れてきた。
私は正直、どうでも良かったし、恭子の言葉を想い出したりもした。

私には幼少期から見てきた桜の凛とした男勝り、そして、飲み込みの早さから見て男の子になるとは思って居たものの、其は私にとって、とんでもない迷惑だった。


香澄「おい。桜。いい加減にしないとブチのめすぞ。そしてお前ら、何年だ?」


私は何故、妹か弟か解らない、桜の為にこんな事を叫ばないといけないのかとフと我にかえる。


桜「あっあ…姉貴、御免!!いや、同級生がウチに喧嘩売って来るもんだから。」

香澄「とりあえず…桜の事は構うなよ。あと、ガキ共。あたしの事、何だと思ってんの?桜を三年の廊下迄連れて来るぐらい根性ねぇって事だよな?」


桜の事も言えたモンじゃないってぐらい、私も有名になっていた。
別になんて事をしてる訳じゃないんだけれども、外見のせいと、多分、紀一や恭子の言葉遣いが私に住みついたせいなんだろうと自己解釈した。

こんな毎日だから、普通に幸せになるなんて有り得る訳がない。
クラスや後輩からも怖がられている私。
そして、桜は何かあれば私の名前を行使する。

私も桜も校則違反なんて当然で、紀一はあの頃とちっとも変わってはなかった。
寧ろ加速するばかりで、私は恭子に呆れ返ると同時に、成長過程で、初潮を迎えた小学五年で、三年の桜が未だ女じゃない事に安心をしていたが、其は思いのほか、随分と覆してくれたみたいで。


香澄「桜?話がある。ちょっとあたしの教室に来な、話がある。」


桜はいつも姉の私に対しては、忠実だ。
どんな顔色をしても、いつもヘラヘラと笑う不気味な軽々しい態度が最も気に入らない。


桜「あん?姉貴、どうしたの?何か文句ある?」

香澄「そんな生意気な態度であたしに迫るなら、自分の力でコイツらを潰せば良かったじゃん。」


桜は何も返せない。
いや、返す言葉もないのだ。

桜は見てしまった。
私は口止めと共に、桜へ大きな威圧をかけていた。

コメント

コメントを書く

「その他」の人気作品

書籍化作品