螺旋階段

山田 みつき

2

家には車と言う高級品は存在しなかった。
母、恭子は毎日毎日仕事に出掛け、私は幼稚園は当然、保育園も通っていなかった。

それもその筈、紀一が井川家から金を取ってゆく。
まるで家に泥棒を飼ってる様だった。

恭子には私を迎えに来る手段や時間がないから、当然、この年にして『協調性』と言うものを知らない。

カラスが空を自由に舞っていた。
私には、鷹や鷲よりも気高くて、高貴に映っていた。

暫くしてから階段の下からスリッパの音が近付いて来るのが解った。

恭子は誰よりも潔癖症なので、手袋の様なものすら身に付けていた。


恭子「・・・香澄。お父さんのいつも飲んでいるお酒、急いで買って来なさい。」

香澄「うん。・・・ねぇ、マ・・・いや、なんでもない、行ってくる。」


恭子は白いハンカチで細くて長い髪を、拭って私にお札一枚渡した。
恭子からは異様なアルコール臭が漂う。
滴り落ちる度、スリッパのまま、二階の部屋を掃除し始めた。

私はお金を受け取ってから見たら、恭子の先程、頭から被った一升瓶の中身か、涙か解らないものが付着していて、微かに滲んだ血痕も付着していた。

香澄「・・・行ってくるね!」

険しい顔つきで恭子は溜息を吐く。

香澄「・・・?何か言った?」


多分、聞こえたけど、其れも無視した。

恭子「貴方なんか、存在しなければ・・・。」

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