『異世界ニート』~転移したら幼い女神と旅をすることになった件について~

小町 レン

第四話 出会い。そして固結。

 街から少し外れた草原……現世で言う公園のような場所にやって来た俺は早速に取り掛かる。

「俺の考えが正しければ、恐らく適当な詠唱を唱えることで、物凄い爆炎とか落雷とかが起こるはずだ……フフフッ」

 不気味な笑みを浮かべ、自信満々に詠唱を唱える。


「灼熱なる赤き魔神よ! 偉大なる我に力をかしたまえ! アグモスフレぇぇぇぇイム!」

『……………………………』

 胸が張り裂けるくらい恥ずかしい。心のそこから誰もいなくてよかったと思った。だが、ここで引き下がる訳にはいかない。次は成功するかも知れない。そんな気持ちがうずめく。


「世界へ轟く雷神よ! 偉大なる我の剣となれ! ナイフスパぁぁぁぁぁクル!」

『……………………………』

 だめだ。ただただ恥ずかしい。それしかこみ上げて来ない。やはり人生そんなに甘くない。しかし、羞恥心と言うものは、謎の怒りが生まれる。要するに逆ギレ。


「この世に存在する全ての女の子よ!最強なる我の仲間となれ!うおおおおおおおお!インフィニティハぁーーーーーレム!」



 意味もなく伸ばした右手





 その先に一人の幼女。


「……………あ、あの……大丈夫です……か?」


 これが、女神 イズモとの初めての出会いだった。



 ◇




「…………………………」

「…………………………」

 ただ沈黙が流れる。

 ガチ引きするイズモ。俺は次第に状況を把握し始める。

(まてまてまてまて、何が起こった。沢山の美女がいないから魔法が発動した訳ではない。更に目の前にいるのは少しかわいいだ。俺にロリコンなんて趣味は無い。まず胸がない時点でm………………)


         (……見られてしまった!)


 その瞬間、俺はまるでトマトの様に赤面していく。滲み出る冷や汗。潤む目。こんなに恥ずかしい思いをしたことがあるであろうか。…いや、断じてない。少しの硬直後、アホみたく前に出していた手をゆっくりと首筋に持って行く。

「……って言う詠唱を唱えたら超強い能力が身につくらしいんだよね!」

 なんて酷い言い訳だ。こんな言い訳通せるわけがない。

 少しの沈黙が流れる

「……そ、そうなんですか!初めてそんな詠唱聞きました!」

「……へっ?」

 意外な返答に思わず声が漏れてしまう。

 そして幼女は一冊のの様なものを異次元空間?から取り出し、記し出す。

「【強化魔法】  詠唱トリガーはインフィニティハーレムっと!」

 こんな幼い子になんて言葉を覚えさせてしまったんだ……。と、俺は心底後悔した。
 そしてとっさに話を切り替える。

「……えっとさ!君、名前はなんて言うの?」

「……あっ、私ですか? 私の名前はイズモって言います!イズと呼んでくださいねっ!」

 耳はエルフほど特徴的ではないが、人間って訳でもなさそうだ。恐らくハーフエルフと言った所であろうか。
 なんといっても笑顔がかわいい。さっきまでの羞恥は彼女の満面の笑みによって何処かに消えてしまった様だ。

「イズモって言うのかー……いい名前だな!俺の名前はユウム!よろしくな!イズ!」

「はい!末永くよろしくお願いします!」

 “末永く”の意味を分かって使っているのかは知らないが、悪い気はしないから良しとしよう。
 ……俺は不思議に思った事が一つあった。

「なーイズ。君はどうしてこんな街から外れた草原に来たんだい?」

 そう、普通に考えておかしいのだ。何故こんなに幼く見える子が、街から外れ、全く人通りのないこの場所にいるのか。

「イズ、ここは人通りも無いから危ないよ。お母さん達も心配してると思うよ?」

「……私に親はいませんよ…?」

 少し間が空き、彼女が首を可愛らしく傾げる。

「……………………………」

「……………………………」

「あっ、伝えるのを忘れてました!私は超時空イデアの女神。そして、あなたを“転移”させた張本人なんですっ」

 突然の言葉に一瞬思考が停止する。恐らくあらゆる機能が停止していたであろう。

(……この幼女イズが女神?俺はこの子に転移させられてここに来たってことなのか?)

 気を保ちながら頭を再起動させ得意の自称【状況判断スキル】を発動させる。

 だが、続け様に彼女が話す。

「あ、あの……もしよかったら、その……私と、この世界の【天辺ウスト】まで行って見ませんか?」

 彼女はその空色に輝く瞳を、そらす事なく俺に向けていた。


コメント

  • 小町 レン

    ありがとうございます!いい展開作れるように頑張っていこうと思います!!

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