異世界に飛ばされたが選択肢を間違うと必ず死んでしまうなんてあんまりだ!~早く元の世界に帰らせてくれ!~

やまと餅

■森の少女

 目を開くとやはり初めにいた草原に戻っていた。


 辺りを見渡すと、むしったはずの草が生えている。この世界の植物は極端に成長が早いということじゃなければ、死んだら時間ごと巻き戻っているのだろう。
 持っていた草はどうなってるか確認する為、ポケットに手を入れてみると、むしった草が入っていた。




「死ぬ前に持っていれば一緒にループするのか……何か条件とかもあるんだろうか?」




 色々考えてはみたが、いくら考えてもループの原因や条件はわからない為、考えるのをやめた……その時だった。俺は目を見開く。
 目の前の草の一部が突然むしられたような状態になったのだ。




「死ぬ前に持っていた物は一緒にループする。そして元々あった場所からは、手にした時間に合わせて消える……のか?」




 絶対にそうだとは言い切れないが、前回死んだときにむしった時間は、多分今くらいの時間だっただろう。それに、むしられたような状態になった草の数もちょうどポケットに入れていた分と一致する。
 ……そうすると、手にした時間がくるまでは"1つの物が2つになっている"という謎の現象が起きていることになるが、そもそもこのループ自体が謎な為、これ以上考えるのをやめた。
 そんな事を思っていると、またあの選択肢が現れた。


「とりあえず今の仮説をまとめたいし、今回はもう少しここで考えと今後の動きをまとめようかな。」


 此処に留まり続けてしまうと餓死してしまうが、選択肢は何回か出る。一先ず此処に留まるを選びメモをとることにした。
 前回も前々回も使う機会が無かったが、学校帰りに突然草原に居た為、通学バッグをもっていたのだ。
 バッグの中身は、筆箱とノートと教科書、あとは携帯だけだ。因みに携帯は圏外だった。


 ペンとノートを取り出し、死んだら初めの場所に戻る。死ぬ前に持っている物は一緒にループする。一緒にループした物は俺が手にした時間に合わせて突然消える。とメモをとった。


「ループしたときに選択した選択肢もメモっといた方がいいか」


 死んでしまった選択肢を間違えて選ばないように、一応選択肢のメモもとることにした。


「森とは反対方向に移動し続けるのと、此処に留まり続けると死亡……森に行って歌の聴こえる方に走ると死亡……っと。」


 こうして書き出してみると、これ生き延びることできるのか? と不安になってきた。
 そもそも前回は何故殺されたんだろう? と頭を捻る。弓を持っていたしきっとあの矢を放ったのは最後に見た耳の尖った少女なのだろう。


 走っていたしモンスターか何かに間違われたのだろうか? そしてあんな場所に少女がいたということは、あの森には集落か何かがあるのだろうか。


「綺麗だったし可愛かったなぁ」


 色々疑問はあったはずだが、口から出たのは全然関係ない言葉だった。
 それもそのはず、元の世界では見たことのないレベルの整い方だったのだ。女優やモデル、アイドルだってあの美しさと可愛さには叶わないだろう。
 死ぬ前の一瞬ではあったが、この子に殺されたんなら仕方ないか……なんて思えてしまう位には可愛かった。




「…よし! 前回はモンスターに間違われてしまったのかもしれないし、今回はゆっくり近づいて話しかけてみよう! 」


 そう意気込んだ直後また選択肢が出る。
 勿論選択するのは、である。前回とは時間がずれてしまっているが、まだ彼女は居るだろうか? 少し早足で森の中へと進んでいく。























「……聴こえた! 」


 暫く歩いたところであの歌声が聴こえた。今度はを選択する。
 歌声が近くなるにつれて、静かに、なるべく音をたてないようにゆっくりと近づく。
 前回は近くまできたと思った時にとまった歌声も、今回はとまることはなかった。




 木陰からようやく少女が見えた。
 一瞬でも可愛かったと思えたが、改めて見ると、息をするのを忘れるくらい整っていた。
 陶器のように美しく、滲み一つないやわらかそうな白い肌、細く光があたる度光輝くブロンドヘアー、目をつぶって歌っているから瞳の色はわからないが、遠目からでもわかるくらい長い睫毛。


 森という場所も相まって神秘的な存在に見える。いや、耳も尖っているし実際神秘的な存在なのかもしれない。


<a href="//30339.mitemin.net/i402711/" target="_blank"><img src="//30339.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i402711/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>




 ほぅ…と見とれていると新しい選択肢が現れた。


 ――――――――――――――――――――


 ・声をかける
 ・更にゆっくりと近づく
 ・襲いかかる


 ――――――――――――――――――――




 上二つはまだわかる。一番下の襲いかかるって選択肢はなんだ!? 性的な意味か? 性的な意味なのか? 正直凄く気になるし、ゲームならばここで一旦セーブして襲いかかるを選んでみるが、俺にとってこれは現実で、また殺されてはかなわない。
 少しガッカリしながら残る選択肢で悩む。
 普通だったら声をかけるところだが、もしかしたら言語が違う可能性もある。とりあえず様子を見るという意味で、更にゆっくりと近づくを選ぶことにした。




















 ある程度近づいたところで、歌声をゆっくりと止め、目を開き彼女は言葉を発した。


「……誰? 」


 エメラルドグリーンの瞳がキラリと輝いていた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品