転生した俺はポンコツ女神と迷宮の防衛?をすることになったようです。~転生のダンマス!~

トキノトキオ

ヒカルは亜スライムの夢を見るのか?


「あのさぁ……」
「なんだ? ディアーナ」

 31階層へと降りていくと、前を歩くディアーナがマジメな表情でヒカルの方を振り返った。

「さっきは……その……カ、カッコ良かったゾ」
「フ、フフフ……そうか………フハハハハッ! うまくいったようだなあ~」
「な、なによ」
「敵を騙すにはまず味方からってヤツだよ」
「だからなんだってのよ!」
「俺はエルフちゃんと仲良くなりたい! アリアちゃん巨乳だったしな!」
「マ、マジなの? そ、そんな理由なの?」
「ああ本気さ。言ったろ? 俺は巨乳ハーレムを築く男だと!」
「うわー、信じられなーい。見直しかけた自分が情けないわ」
「ヒカル氏。その腹黒さ、ナイスデス!」

 エレナが親指を突き立ててナイス! というポーズをしたから、ヒカルも仕返した。

「に、してもだ。なんか、息苦しいな」

 31階層に降りたときも感じたが、32階層、33階層と進むにつれて、ヒカルはどんどん息苦しくなっていくように感じたのだ。

「まあ〜30階層より下は深層階の入り口だからね」
「深層階?」
「そそ、地圧だか霊圧だかが急に大きくなって息苦しくなったり、動きづらくなるのよ。まあ〜本当の深層階は50階層から下なんだけどね」
「そうか……そ~言えば壁の色も違うなあ〜」

 ダンジョンを形成する穴は自然にできた洞窟のようなものだった。その壁面を形成する素材も、上の階層の方はどちらかと言うと茶色く、土っぽかったのに、ここらあたりは灰色で岩のよな箇所が増えていた。

「にしても居ないな」
「だね〜すぐそばまで来てると思ってたのに。大丈夫かなあ」
「アリア氏とテト氏だけじゃなく、モンスターもいませんデスね」
「そ、そ~言えばそうだなあ〜」

 言われてみれば3階層ほど降りてきたのにモンスターの一匹も見ていなかった。自分より下層にいるモンスターには支配力を行使できないから、用心してはいたのだが。

 ――フゴゴゴゴゴォォオオオ

 しかし、それは深く切り立った巨大な縦穴の前に立ったときのことだった。絶壁の真ん中に橋のように一筋に伸びる道を渡り終わろうとした時、橋の向こうに開いているほら穴の奥から獣の声のような、風の音のような何かが聴こえた。

 ――グチャア ブチ ブチャチャチャチャア

 つづいて何かを引きずるような、なにかの液体が垂れるような音がする。

「あー、なんか、スゴーく嫌な予感がするんですけどー」

 先頭を歩いていたディアーナがヒカルの後ろに下がった。

 ――シュゴゴゴゴゴォォオオオ!!!!

「で、でた! でたし! で、でもスライム? なんか違う気もするけど」
「あれは改造されたデミスライムデスね」

 橋の向こう、どす黒いドロドロしたモノが洞窟の入り口いっぱいに広がって、行き先をふさいでいた。

「デミスライム?」
「デス。カワイイスライムちゃんをあんな姿にするなんて許せないのデス」

 珍しくエレナがやる気を出していた。

「ま、待ちなさいエレナ。アンタのスキルじゃみんな死んじゃうわよ」
「デスが、ディアーナさんのスキルだって同じじゃないデスか」

 その時、別の声がした。
 
「お、おまえら……早く逃げろ……」
「え?」

 目を凝らしてみれば、黒光りするスライムのカラダの中に一人のエルフが囚われているのが見えた。

「ア、アリア……さん?」
「間違いない。あの胸は……アリアだ!」

 アリアの衣服は半ば溶け、その大きな胸にかかる布切れもあとわずかな状態だった。

「アンタ、よくこんな状況でそんなコト言うわね」
「うむ、あの状況は……もしや……よし! オマエラ! 突撃だ! スライムに凸ってみろ!」
「はーあ? なにアンタ。目的はスケスケでしょ? バレバレなんだけど?」
「分かりました! エレナ凸りますデス!」
「って、エレナ? おーいエレナちゃん?」

 ――フォォォオオオ――ハッ

 ディアーナの呼びかけも虚しく、エレナは亜スライムに突撃した。

 ――プニょんっ ぷにぷにぷにぃ〜

 そしてあっけなく取り込まれた。

「ひゃっふひゃひゃひゃひゃひゃひゃあ〜ヤ、ヤバイのデス。服が溶けるのデス」

 エレナの服もどんどんと溶けていった。

「ふむ。あれは服を溶かすスライムだな。なんとも素晴らしい……いや、けしからんモンスターだ」
「ってアンタ。知ってて突っ込ませたんでしょ。エロ目的でしょ」
「いやいやいや、そんなコトないしー。俺を見くびるな〜だしー。しかし……エレナの『胸のカップを小さく見せてます偽装』の疑惑は……本当かもな」
「え?」
「ほら、サラシっぽいの見えてきたぞ。胸、締め付けてるヤツ」
「なぬを! そんなコトはない! ハズ! さあ、二人が丸裸になる前に助け出すのよ!」
「ちぇっ、まー後でアリアさんにのぞき見がバレるとなんだから、そろそろ助けるか」
 
 ヒカルはしばらく、上から、下から、左から、右から、スライムを、いいやスライムに囚われたエレナとアリアをガン見していた。



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