転生した俺はポンコツ女神と迷宮の防衛?をすることになったようです。~転生のダンマス!~

トキノトキオ

エマとデート!?


「そこな男よ」

 エマとはぐれ、ひとりでしばらく行くと、路地の奥から声がした。

「ん? 俺か?」
「そうだ、お前さんだ」
「なんか用か?」
「うむ。お前さん、厄災の相が見えるゾ」
「ほほ〜う。俺は占いのたぐいは信じないのだが?」
「3人の災いに取り憑かれておる」
「く、詳しく!」

 それからしばらく占い師の巧みな話術に脅されたり、透かされたり、励まされたりして大金を巻き上げられた。それでも収穫はあった。

「お前さん冒険者……なのか? いや、しかし……」
「あ、ああ、まあ冒険者みたいなもんだ」
「しかし、なんのスキルも開放しておらんな?」
「スキル?」
「ああ、知らんのか? 冒険者なら1つや2つ、中には10以上持つ者もおるスキルを1つも開放しておらんだろ? 経験値はそれなりに貯まっておるようじゃが……」

 そう。ヒカルのカラダの基本能力は前世のままであったが、転生した際にこの世界の者が持つ標準要素自体は与えられていたのだった。この世界では経験値をスキルに変換して自らを強化することができる。だから、冒険という危険な行為がさかんだったのだ。
 ヒカルはダンマスとして強敵と対峙する中、経験値だけはかなり稼げていた。特に、瀕死状態からの復活でたくさんの経験値が得られるのだが、ヒカルの場合、死からの生還であるから、その数値はかなりのものだった。

「な、なるほど……知らなかった。なんで誰も教えてくれなかったんだ……」
「常識だからじゃろ。この世界では」
「な、なるほど……」

 スキル、スキルか……俺でも魔法とか使えるようになんのか? そんなコトをアレコレ考えていたときエマが現れた。

「あー、いたいた! ドコ行ってたのさ、探したんだぜ?」
「って、オマエが消えたんだろーが!」

 エマは両手にアイスクリームを持っていた。

「そ、そうか? ま、まあ。アイスクリーム屋を見つけたからな。コレは速攻で売り切れちまうんだ。ホレ」
「あ、ああ。ありがとう」

 それから二人は一段高くなった公園から町を見下ろしながらアイスクリームを食べた。

「こうしていると、恋人同士みたいだな?」
「うひゃっ! な、なんてコト言うんだよ!」

 あまり深く考えず口にした言葉にエマが驚いて、アイスを落としてしまった。

「あ、あーゴメンゴメン。ほら、俺のやるよ」
「そ、それはヒカルの食べかけだろ……」

 喋りかけのエマの口に、ヒカルは半ば強引にアイスを押し込んだ。

「はむぅ」
「イヤか?」
「イヤってことは……ないかもしれないかもしれないケド」
「なら食えよ」

 それから一日、エマと市場を回り、食べ歩いたり、骨董屋に騙されそうになったり、アクセサリー屋でエマをからかったりしながら過ごした。やがて陽も傾き、店々には明かりが灯っていく。
 
「なあエマ……」
「な、なんだよ。あらたまって」
「俺たちって……」
「な、なんだってんだよ」
「俺たちって何しにきたんだっけ?」
「あ! ヤバい! ボスの買い出し忘れてた! じゃ、あとは一人で帰ってね!」
「えええ――っ!」
「あ、あとヒカル」

 立ち上がると、あっという間に走り出したエマがふり返った。

「な、なんだよ」
「今日は楽しかったよ。ありがと!」
「お、おう……」

 こうしてヒカルとエマ、ふたりの間にほんわかな空気が流れ、やさしい気分で安息日の一日が静かに終わった…………りはしなかった。
 
「おいヒカル! なに一人でほっつき歩いてるんだよ!」
「あ、フィオリナたん! と、その取り巻き!」
「っておい! なんで私が取り巻きなんだよ!」
「そーデスよ。ディアーナさんはともかく、ワタシまで同列に語られるのは不快デス」
「あの……その……前から気になっていたのですが……たんって……なんですか?」

 ヒカルは昼の占い師の言葉を思い出していた。

「オマエに取り憑く3人の厄災によって、オマエは身を滅ぼすであろう……」

 その、まさに厄災の3女神が現れたのだ。

「ま、いっか」

 そうしていつものように、いいや、いつも以上に飲んで騒いで夜が更けていった。



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