鮮血のレクイエム

あじたま

Genocide編 6話 生き残りをかけた戦い

「ルーミアはとってもお腹がすいてるのだ―。」
「…だから、俺たちを食べるってか?」
「そうなのだーー!!」
そう言い放った瞬間、少女の周りに無数の黒い光の玉が放たれ、俺に向かって飛んできた!
「…っく!なんだこれ!」
すぐさまかわそうとしたが、いくつかの弾幕は捌ききれずそのまま直撃してしまう。
「ぐあああああああーーーーー!!!」
「アレン!!」
なんだ…これ!!銃弾をもろに喰らったのと同じような痛みが俺を襲った。俺を心配たのかアリスが俺に向かって走ってくる。
「むーー!よそ見はいけないのだーー!!」
「なっ…!!アリス!こっちに来るな!」
「えっ、きゃあ!?」
くっそ!…一か八かだがやるしかない!!俺はすぐさまアリスの前まで走り、迫りくる弾幕に向けてファイティングナイフを構える。
「はぁーーーーせいやぁー!!!」
弾幕を斬るようにファイティングナイフを振り下ろす、するとなんの感触もなく消え去った。なるほど…当たる前に衝撃を加えればこの光の玉は相殺出来るのか。
「ご、ごめんなさい!不注意だったわ。」
「そんなこと言っている暇はないみたいだぜ…。」
少女はすでに次の弾幕を展開していた。俺は懐からベレッタを取り出し、少女に向けて構える。
「アリス、お前は足手まといだから下がってろ。」
「……分かったわ。」
少し不服そうにしていたが、アリスも自分の力量くらいは理解しているようだ。
「さて…ルーミアと言ったか。そっちが俺を殺す気なら、こちらも本気でお前を殺させてもらうぜ。」
「そーなのかーー。」
「……行くぞ!!」
俺は少女に向かって全力で走り出した!
「むー、大人しく食料になるのだーーー!」
そういうと少女はポケットから一枚のカードを取り出した。…ん、カードだと?
「スペルカード!月符『ムーンライトレイ』」
「なっ!スペルカード!?」
少女がそう宣言した瞬間左右から二つのレーザーが俺に向って迫ってきた。それと同時に少女を中心に弾幕が全方位に飛び出していく!俺はそれを持ち前の動体視力で何とかかわし、避けられないものはナイフとベレッタで相殺する。
「はぁ…はぁ……。」
「ぶー。こんなに苦戦した人間は久しぶりなのだーー。」

サイドチェンジ アリス

悔しかった。悔しくて、悔しくて仕方がなかった。
『アリス、お前は足手まといだから下がってろ。』
分かってる。自分の力量が分からない程私は馬鹿ではない。
「……でも!!」
この世界に来てから私はずっとアレンに守られてばかりだ。さっきもあの少女の攻撃を自力で避けれず、結果としてアレンに助けられた。…嫌だ。何もしないでただ眺めているだけなんて…嫌だ。何故?…分からない。でも、このままの自分が許せなくて。
『ここは私と魔理沙に任せてあんたは逃げなさい!』
プライドがそうさせてるようで、見下されている様で…嫌だった。…戦いたい。私も、みんなと一緒に命を懸けて戦いたい!!
「……これ、私が持ってた人形…。」
たしか…そう。上海人形と蓬莱人形。…この子たちを見てると、次第と勇気が湧いてくる。何故だかは分からないけど…。そう思いその人形に触れた瞬間、謎の力が私に流れていくのを感じた。…そしてその手には何枚ものカードが握りしめられていた。

サイドチェンジ アレン

「久しぶりって…どういう意味だ。」
「そのままの意味なのだー。今までの人間はちょっと攻撃すればすぐご飯になったのに、今回はぜんぜんご飯にならないのだーー。」
「……。」
どうやら俺より前にも何人もの人間を殺してきたらしい。……俺と同類…か。
「そろそろ本気で行くのだーー!スペルカード!夜符『ナイトバード』」
「っち、またか!」
このままではずっと向こうの遠距離攻撃を捌ききるので精いっぱいだ。ならっ、一瞬の隙を突いて攻撃を叩き込む!!俺は意識を集中させ、成功するビジョンを思い浮かべる。…よしっ、行ける!!
「ここだぁあーーーーー!!!」
敵の弾幕の間からベレッタで少女目掛けて発砲する。
(バンッバンッ!!)
「おっと、急に発砲なんて危ないのだー。」
「お前が言えたことかーー!!」
当然さっきの攻撃が当たるなんて微塵も思っていない。本命はこれからだ!少女が俺の攻撃に気を取られている隙にダッシュで接近する。
「やぁーーーせいっ!!」
そのまま少女の右腕を斬りつけようとしたその時だった。何と急に辺りが急に光のない闇に包まれたのだ。
「何だ…これ!」
「これはルーミアの能力なのだーー!」
「能力…だと!?」
まさかこの現象はあの少女が引き起こしたものだとでもいうのか?
「お兄さんにはルーミアの姿は捉えられないけど、ルーミアはちゃんとお兄さんが見えているのだーー。」
「っく!そんなのありかよ!」
このままでは一方的に敵の攻撃を受けることになる。一体どうすれば…。
「とどめなのだーー!スペルカード!闇符『ディマーケイション』」
まっ、まずい!今さっきみたいな攻撃をされたら!そう考えていたのもつかの間、見えない無数の弾幕が次々に俺に当たっていく。
「ぐあああああああああーーーーー!!!」
あまりの痛みに意識が飛びそうになるが俺はそれをなんとか持ちこたえる。
「うぐっ……あぁ…。」
「お兄さんなかなかしぶといのだーー。でも、もう終わりなのだー!」
恐らくこの状態で次の攻撃を避けるのは不可能。…これで、これで…終わりだっていうのか。そうして半ば諦めかけていたその時、暗闇は光を取り戻し…奇跡は起こった。
「戦符『リトルレギオン』!!」
アリスの元から大量の人形がブーメランの様に回転しながらルーミア目掛けて飛んでいく。そしてルーミアの放った弾幕を相殺してそのままルーミアに命中する!!
「やられるのかーーー。」
「あ…アリス……。」
そこに立っていたのは今までの俺の知っているアリスではなかった。周りには見たことのある人形たちが浮遊しており、アリスの指先から出ている謎の糸によって繋がれている。
「…ずっと守られてばっかりでごめん。でも、もう大丈夫だから。今度は私がアレンを守って見せる!!」
「……ふっ、はは。」
「なっ、なによ!急に笑ったりなんかして!」
「いや?お前もやればできるんだなって思っただけだ。」
「もうっ!馬鹿にするなら助けてあげないわよ!」
「はいはい、じゃあ後は頼んだぜ!相棒!」
「誰が相棒よ!」
やれやれ、ほんとすげぇよ。お前。

サイドチェンジ アリス

正直今でも信じられずにいた。でも、体が勝手に動くってことはきっと記憶を失う前に持っていた力なんだってそう思える。
「あれ?お兄さんじゃなくなってるのだーー。」
「悪いけどここからは私が相手になるわ。」
大丈夫…。記憶になくても体が覚えてくれている。
「いくわよ!!スペルカード!魔符『アーティクルサクリファイス』!」
魔法の命令式に従って人形たちが少女に向かっていく。それを体を頼りに糸で操っていく。
「はぁあ!!」
少女は人形たちの攻撃を弾幕で相殺しようとするが、それに当たらないように糸で操っていく。やがて少女の目の前までたどり着き、命中した。
「むぅ…お姉さん中々やるのだー。でも、ルーミアだって負けないのだー!」
そう言い少女は一枚のカードを取り出す。
「次で最後なのだーー!」
「なら私も…次で仕留める!!」
私も次のカードを手に取って構える。そして同時に宣言した!

「スペルカード!夜符『ミッドナイトバード』!」
「スペルカード!咒符『上海人形』!」

「ぐぅ…やられたのだ~。」
「はぁ……はぁ…。」
すごく不安だったが何とか敵の弾幕に当たる前に仕留めることができた。少女はもう動けないのか、そのまま床に倒れこみ黒い光となって消えていった。

サイドチェンジ アレン

「………。」
少女を倒したアリスがこちらに向かって歩いてくる。
「…はぁ、はぁ。何とか倒したわよ、アレン。」
「あぁ…。」
正直さっきまでの闘いが異次元過ぎて思考が追い付いていなかった。弾幕にレーザー、能力、人形、スペルカード…。気になる点が多すぎる。
「なぁ、一つ聞いていいか。」
「何かしら?」
「…お前、本当に何者だ?」
「…ねぇアレン。私が記憶喪失ってこと忘れてないでしょうね。」
「はぁ…そういえばそうだったか。めんどくせぇなぁ。」
「ちょっ!悪かったわね!記憶喪失で!」
ルーミアとやらに聞きたかったが、さっき消えてしまったせいでそれもできない。
「まぁ、いずれ戦っていけば分かるだろ。」
「…そうね。流石にさっきので終わりってわけじゃないと思うし…。」
「ほんと、面倒なことに巻き込まれちまったみたいだな。」
「そういえばもう傷は大丈夫なの?」
「あぁ。これくらいでくたばってる様なら今頃死んでるだろうよ。」
まぁ、無茶苦茶痛かったけど。
「さて…それじゃあ移動するか。」
「え?すこし休んでからにした方が良いんじゃないかしら。」
「実はここに来る前にバケモノと対峙しててな。その時に壁もろとも破壊されたんだ。このままじゃいつまたバケモノがくるか分かったもんじゃねぇ。」
「…そう、分かったわ。それじゃ移動しましょ。」
「後、これだけ言っておく。…足手まといとか言って悪かったな。どうせお前のことだから気にしてるんだろ。」
「良いわよそれくらい。実際さっきまで足手まといだったわけだし。でも、もうそんなこと言わせないわよ!」
どうやら俺が思っていたよりアリスは大人だったようだ。…この先、今以上の闘いが待ち受けているのは火を見るよりも明らかだ。さっきの闘いで分かったが、正直今後俺一人で敵を対処するのは難しい。…他人と協力するなんざ何年振りだろうな。
「絶対に生き残るわよ!アレン!」
「……当然だ。」
新たな関り…か。あながちルイスの言ってたことも間違いじゃなかったのかもしれないな…。

サイドチェンジ ???

「……ふぅ。」
どうやら一人、何者かによって倒されたようだ。あいつもそこまで弱くはないと思っていたのだが、所詮下級妖怪だったようだ。
「お姉様ーー!取り敢えず目に見えるオモチャは破壊してきたよー!」
どうやら妹が帰ってきたようだ。様子を見るに上手くいっているらしい。
「流石は我が妹ね。姉として誇らしいわ。」
「(∀`*ゞ)えへへ…。ねぇねぇ!次は何を壊したら良いの?」
「そうね…。それじゃあ次は…。」

サイドチェンジ アレン

あれから俺たちは建物を出て、周辺を探索していた。途中何体かバケモノに遭遇したが、あいつらはそこまで視力が良いわけではないらしく、接近しすぎなければ見つかることはなかった。
「…にしても、一体どうなっちまったんだろうな。この町は。」
「一応建物の構造や配置は同じみたいね。違うのはさっきのバケモノやこの紫色の霧、黒い雲って言った所かしら。」
此処に来てから大分時間が経ったが、分かったことと言えばたったこれだけだ。もっと情報を集めないとな。
「…そういえばコレットもこの世界に来てるのかしら?だとしたら心配ね。」
「まぁ、あいつもある程度武器は扱るだろうし大丈夫だろ。怪我しても自分で手当てできるだろうし。」
「そ、そう…。人って見かけによらないのね。」
「お前コレットを闇医者か何かと勘違いしてないか?」
「そそそ、そんなわけないじゃない!コレットは私の大切な友人なのに!」
じゃあなんでそんなに動揺してんだよと言いたくなったが、余計面倒なことになりそうなのでやめておいた。
「取り敢えず今は周辺の警戒に集中しろ、一瞬の隙が命取りだぞ。」
「わ、分かってるわよ!それくらい!」
(ザッザッザッ…。)
「……どうやら、もうお出ましみたいだな…。」
「えっ?」
「ぎゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
どうやら話している間にバケモノどもに囲まれてしまったようだ。ほんと、容赦ねぇな。
「……ざっと8体と言った所か。いけるか?アリス」
そう尋ねながら俺はファイティングナイフとベレッタを構える。
「…当然!」
アリスも人形を周りに展開した。そしてバケモノどもがこちらに向かって突進してくる。
「行くぞ!!」

『その必要はありませんわ。スペルカード!時計「ルナダイアル」』

「何っ!?」
俺たちが動く前に何処からともなく現れた無数のナイフがバケモノ目掛けて飛んでいく。
「ぎゃぎゃぎゃーーーーーー!!!」
そして、ナイフが突き刺さったままバケモノ共は地面に倒れていった。しばらくして霧の向こうから俺の知る一人の女性がその姿を現した。
「お久しぶりですね。アレンさん。」
「な…なんで咲夜がここに…。」

続く

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