勇者にとって冒険の書は呪いのアイテムです

ハイイロチョッキリ

⑭それから

〜とある町の酒場〜

「知ってるか?『東の大陸の勇者』の話」

「闘技場を壊滅させたって噂の?」

「そうそう。なんでもその勇者、テレス神殿にたどり着いたらしいぜ」

「あそこは魔王軍の巣窟だぜ?昔は大精霊だか神だかがいて、魔王復活を食い止めていたって話だが」

「そこにいた魔王軍の精鋭達も全滅させたらしいぜ」

「世界を救う勇者様ってか?おっかないねぇ」

「ん?…おい」

「んん?今良いとこなんだよ」

勇者の話をしていた方が酒場の入口の向こうを凝視する。

相方は食事に夢中で視線を上げない。


ずず…ずず…ずず…


なにかを引きずる音が聞こえてくる。

「なんだあれ?」

「ん?」

相方がようやく頭を上げ、振り返って入口の方を見る。

まず目に飛び込んでくるのは3つの棺桶

そしてそれらが紐で繋がれていることに気づく。

それらの棺桶を引いているのはボロボロになったフードをかぶった生き物。

人間なのか、それとも魔物なのかはわからない。

しかし、その異様な風貌から恐らく仲間だろうと相方は判断する。

「おう、兄弟!こっち来て食事するか?うのおっさん・・・・よく肥えててなかなか美味いぞ」

相方は人間・・の血のついた真っ赤な口を緩めて社交的に話しかける。

『いいえ』

異様な風貌の持ち主は首を振る。

「アンタ、どこから来たんだ?…へぇ、西の大陸から海を渡って…。そりゃご苦労さん。ってことは魔王軍の本隊に合流ってとこかな?」

『はい』

「…なに?仲間を生き返らせる方法を知らないかって?その棺桶…仲間か。そうか
…。この大陸の中央に世界樹っていうデカい樹が生えてるんだが…そうそう。あのデカいヤツだ。あれの葉には凄まじい癒しの力があるらしい。だから魔王様もあそこで力を回復しているって話だ」

「おい!そいつ…」

「なんだよ?良いじゃねぇか、よそ者には親切にしてやるもんだぜ?」

「違う。3つの棺桶を引きずるフードの男…『東の大陸の勇者』だ」

『はい』

瞬間、2つの首が空を舞う。

セツリは光の剣を収めると再び棺桶を引きずり歩き始める。


ずず…ずず…ずず…


良い情報が手に入った。

世界樹あそこに向かえばユージーン達は生き返るかもしれない。

そして魔王も倒せる。


ずず…ずず…ずず…


何度死んだって構わない。

繰り返せばどんな相手でも必ず倒せる。

だから戦う。

仲間を取り戻し、魔王を倒すまで




Fin

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品