勇者にとって冒険の書は呪いのアイテムです

ハイイロチョッキリ

⑫とうぎじょう(9)

ノーブルワームが現れた!

ノーブルワームは尻尾を器用に操り、帽子を取ってお辞儀をした。

「こんにちは!」

ノーブルワームがダンディな声で挨拶してくる。

セツリの攻撃!

セツリは重心を低くして剣を構えた。

そして水切りの剣を神速で振り抜く。

一太刀は音すらも置いていく。

『真空斬り』

一閃。

お辞儀したノーブルワームに致命的な一撃が…。

『!?』

「効いてねぇ?」

ユージーンが驚きの声をあげる。

「…「エターニャ」!」

リエルが海魔ヒルテデスに大ダメージを与えた無属性の連続攻撃魔法を叩き込む。

不可視のシャボン玉がノーブルワームの全身で次々に弾けた。

しかし、ノーブルワームは無傷だ。

「おらっ!」

ユージーンがゾンビキラーで袈裟斬りする。

しかし、ノーブルワームの身体の前で障壁に阻まれてしまう。

「なんだこれ…なんか壁みたいなのがあるぞ」

「…これなら…「イフリト」!」

ミリが新しく火の玉を放つ。

火の玉はノーブルワームの身体に着弾。

瞬間、爆発的な火力により全身を火柱が焼く。

「前方からの攻撃に強いとして、全身ならどうですか!」

火柱が消えた後にもノーブルワームの姿がある。

ダメージを受けた様子はない。

「礼儀をわきまえないのは誰かなぁー?」

ノーブルワームが腹に響く声でゆっくりと尋ねる。

「そういう子はおしおきだ!」

ノーブルワームは口から灼熱の息を吐き出した。

「俺の後ろに!」

ユージーンが叫び、セツリ達がユージーンの後ろに隠れる。

ユージーンは猛毒の盾で上半身を守る。魔鉄の鎧が輝き、灼熱の息のダメージを軽減する。

「ぐ…ッ!」

「ユージーン、大丈夫?」

リエルが心配そうに声をかける。

「回復を頼む」

『………。』

セツリはノーブルワームを見つめ、黙っている。

ノーブルワームもその視線に応えるかのようにセツリへ視線を送る。

セツリはゆっくりと頭を下げた。

ノーブルワームもそれに合わせるかのように頭を下げる。

「セツリさん…まさか…」

「「バブリー」!」

ミリは何かを察したようだが、リエルはとりあえずユージーンへ回復魔法をかける。

火傷を負ったユージーンの傷がみるみる塞がっていく。

「サンキュー、リエル。これならどうだ。「魔人け…」…むむっ」

ユージーンが特技を放とうとするのをセツリが止める。

「なにすんだ、セツリ」

ユージーンが抗議の声を上げるが、ミリが「ユージーンさん」と声をかける。

「もしかしたらセツリさんが正しいかもしれません」


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