勇者にとって冒険の書は呪いのアイテムです

ハイイロチョッキリ

⑪かいまひるてです(1)

海底洞窟は海の要塞だった。

入口には人喰い鮫やキラーフィッシュ、ライオンシュリンプといった凶悪な魔物たちが泳いでおり、一度見つかれば乱戦は確実だ。

ベックは海竜、金剛亀、金鮫という名だたる魔物を討伐した英雄であり、鉄壁の防御力を誇る為、この程度はなんら問題ないのだが…。

「問題はヒルテデスの側近が防御と耐性を無視して毒攻撃をする暴君クラゲと魔法を無効化するヒトデボーイズってことね」

リエルが悩ましげにため息をつく。

神に愛された人魚はため息をつく姿も美しい。

2人と相性の悪い魔物がいること、そしてそこに時間を取られると合わせてヒルテデスとも遭遇してしまう。

前回はこの2体の魔物に苦戦したせいで人魚達は大勢の戦力を失った。

少なくともヒルテデス戦の前に暴君クラゲとヒトデボーイズは倒したいところである。

特に暴君クラゲは異常回復の呪文を持たないセツリ達にとってはかなり厄介と言えよう。

「なーに、今回はブラザーもいるんだ。オールオーケー!問題ない!」

『ガンガンいこうぜ!』

「え?え?ちょっと!」

作戦を立てる流れになるというリエルの予想を裏切り、直線的な思考のセツリとベックは海底洞窟の入口に姿を現す。

「おらおら、モンスターちゃん達、カモン!「挑発」!」

ベックが全く奇襲にならないど直球で、敵陣に正面から「挑発」をかける。

その結果、大量の見張りである魔物達がセツリ達に襲いかかってきた。

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