勇者にとって冒険の書は呪いのアイテムです

ハイイロチョッキリ

⑨ぜつぼうのるーぷ(6)

パンデラは右腕を1本失い、表に出ているのは右肩と右肩の2本、左肩と左正位置の2本の計4本の腕だ。

本当は距離を取らず、もう少し削りたいがこちらの体力の消耗が激しく、これ以上はどこかで一撃を受ける可能性がある。

「オノれ!おのレ!オのレ!よくモ、よクもぉぉぉオオオオ!!」

パンデラが唾液を撒き散らしながら怒り狂う。

そして空間にひびが入り、黒い弓を左手で掴む。

脇から最後の左腕が皮膚を突き破って現れる。

「ユージーンさん!セツリさん!」

ミリの合図と共にセツリとユージーンが駆ける。

「「イフリ」!」

2人に先行してミリが複数の火炎球をパンデラ目がけて撃ち込む。

魔法の矢をつがえる間も無く火炎球がパンデラに着弾。

パンデラの周りが炎を包まれる。

パンデラにダメージはほとんどないがこれで視界は塞いだ。

「どこダ?」

パンデラは苛立ちながらセツリ達を探す。

『稲妻斬り!』

セツリの声と共に、パンデラの左下から雷の剣撃が飛来する。

炎の中から突如現れた剣撃にパンデラの左足が斬り裂かれ、身体に雷撃が走る。

技は派手だが、先程の右腕を斬り飛ばした程の威力はない。

むしろ今の攻撃によってセツリの位置がはっきりと伝わった。

「そこカッ!」

パンデラが魔法の矢を4本の腕でつがえる。

「させません!「氷壁」!」

パンデラからはセツリが炎で見えない。

しかし、予測した位置が正しいことを証明するかのように、先程パンデラの攻撃を邪魔した氷の壁がセツリとパンデラの間にそそり立つ。

「それデ、我の矢を防げルとでモ思ったカ!」

パンデラが4本の矢を発射する。黒い魔法の矢が炎を吹き飛ばし、氷の壁に大穴を開ける。

そして、その先にいるセツリも…。

「!?」

セツリがいない。

見ると氷の壁から離れたところに着地したところだった。

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