攻略対象たちが悪役令嬢の私を熱く見つめてきます!
デジャヴ
──えっ、あれ?
目の前に広がる空間に理紗は首をかしげた。
さきほどの教師のものとは違い、全体的に淡い色調だが、どう見ても応接間であってお手洗いではない。
この部屋の中にあるのかな?
とりあえず探してみようと足を進め、いくつかあるもののうち最初に目についたドアに手をかけた。
「えっ?」
ガチャリと開いたそのさきは、これまた寝室だった。
ここもまた誰かのプライベートな空間のようだ。
勝手に見てしまったことにあわててドアを閉め振り返ると、廊下に出ていたはずの少女が理紗をじっと見つめていた。
「ごめんなさい、間違えて寝室のドアを開けちゃったみたい。ここはあなたのお部屋? 申し訳ないんだけどお手洗いを貸してもらえないかしら」
「その銀の取っ手がバスルームになっています。お手洗いはそこにありますよ」
「ありがとう」
話しながら理紗は気づいた。目の前にいるワンピース姿の人物の骨格が華奢ではあるが男性のものであることを。
だがいまはそれどころではない。
早足で示されたドアを開け目的地にたどり着くと、理紗はやっと焦りから解放された。思わず大きなため息が漏れる。あぁ間に合ってよかった…。
手を洗いバスルームから出ると、理紗を待っていた相手に再び礼をのべそのまま廊下に向かう。
「待ってください」
理紗を引き留めた少年が、じっと見つめてくる。
そして静かに言った。
「ぼくのこと、おかしいと思わないんですか?」
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