受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-

haruhi8128

ズンバ

「平和っていいなぁ……」
「そうですねぇ」

庭で日向ぼっこをしているのはライヤとヨル、そしてフィオナ。

「ちょうど1年前は戦争してたんだぞ?」
「けっこう前のことに感じるねー」

ライヤ個人としても忙しかったが、激動という意味では王国の方が大きな変革を迎えただろう。
長らく4すくみだった大陸がでそのうちの1つが吸収されたのだ。
対処するべき事項はあまりにも多い。

「まじで国政に携わってなくて良かったと思ってる」
「今頃てんてこ舞いだったでしょうね」
「アンに細かいことを押し付けられてひいひい言ってる姿しか想像できない」
「簡単に想像できるねー」

適度に雲のある空を見上げる。

「来年度はもっと平和な1年を送りたいな」
「そうそう今年よりやばいのもなさそうですけどね」




「ライヤ先生。あなたには諸国連合の方に行ってもらいます」
「は?」

平和な春休みなんて数日のもので。
新年度1週間前。

「左遷ですか?」
「いえ、むしろ栄転と言ってもいいでしょう」

学園長の言葉に首をかしげる。

「実は学園の分校をあちらに作ることになりまして」
「……教員もそりゃ派遣しないといけないですね」
「その通りです。ライヤ先生はあちらに生徒がいるでしょう? あなたを差し置いて他の教員を向かわせることなどあるでしょうか」
「それは決定事項ですか」
「そうですね」
「ようやっと家庭を持ったところなんですけど」
「悪いとは思っています」

いけしゃあしゃあと学園長が言う。
職場が変わるなんて考えてなかったなぁ。

「いつ向こうへ?」
「できるだけ早くがいいのでは? 家などは向こうで用意してくれるようですが、生活に慣れる時間も必要でしょう」




「と、いうわけで、移動になった」
「私もついていきます!」
「ちゃんと禁止されてたぞ。どちらにせよ、8年間ずっと俺が担任になれるわけでもないし」

ウィルならそう言うと思ったが、学園長と国王の連名で禁止されていた。
自分の身を自分で守れない王女を送るわけにもいかない。

「でも、私以外は行くのでしょう!?」
「アンは公務だし、フィオナはアンの直属だから近くにいた方が良い。ヨルも元諸国連合からの唯一の教師だ。そりゃ行くことになるだろ?」
「不公平です!」
「そんなこと言ってもな……」

こればっかりはどうにもならない。

「ライヤの妻としては同情するけど、王族としては当然だと思うわ。私でさえ、国外の絡む事案に出たのは5年生が最初よ? ウィルを連れて行くのは無理があるわ」
「でもぉ……!」
「ごめんな。これだけは変えようがない。代わりにはならないが、明後日の出発までずっとウィルと一緒にいるから」
「添い寝は必須です」
「……いいよ。もちろんだ」




「こんな大事があってやっと添い寝ですか……」
「ウィルだって今子供作ったらいけないのはわかってるだろ? 外聞とかを抜きにしても、ウィルの体を考えたら」

同じような背格好でもウィルとヨルの間には大きな差がある。
時間をかけて器官が作られているかだ。
未成熟な状態では母子ともに危険に晒される。

「もうそこは大丈夫です。ほら」

ライヤの腕をギュッと抱えるウィル。
少し前まで感じなかった感触にライヤは戸惑う。

「私もちゃんと成長することがわかりましたから。すぐにアン姉さまくらい抜いてみせます」




「じゃあ、行ってくるよ」
「くれぐれも体に気をつけてくださいね」
「ウィルもな」

簡単な挨拶をしてウィルと別れる。

「……寂しいねー」
「そうですね……」

フィオナとヨルはしきりに後ろを振り返っている。
既にウィルの姿を確認できる距離ではないが。

「一応、気を引き締めなさいよ。私たちに悪感情を持ってる人もいるかもしれないからね」

アンの忠告もあったが、一行は3日かけて無事に分校予定地についた。

「……かなり再会は早かったですね」
「そうだな」

一行を出迎えたのはミク。

「キリトは?」
「課題に追われています。ただ、先生がこっちに来たとなると、課題はどうするんでしょう」
「送るんじゃないか? 送らなかったらイリーナキレそうだし」

「とにかく、ようこそ元海洋諸国連合の一国、ズンバへ」


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