受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-
教師の役目
「……(クイクイ)」
翌日。
職員室で仕事をしていたライヤの下に今度はエウレアが来た。
「どうした?」
「……かぎ」
「どこの?」
「……訓練場」
「あいてるかなぁ。ちょっとまて」
図書館の会議室と同様に共用である訓練場も他のクラスが使っていれば割り込みは出来ない。
本来なら数クラスが同時に使えるくらいのスペースはあるが、時期が時期だ。
スパイとみなされてもおかしくないから、やめておいた方がいい。
「あいてたから良かったけど、今度からはもっと早くな」
「……明日も」
「もしかして、これから体育祭まで全部の日で借りる気か?」
「(コクリ)」
「ちょっとそれは相談が必要だな」
エウレアを自分の席の前に残し、各教師の机を回る。
「すみません、今日から体育祭までなのですが……」
残り3日の準備期間。
訓練場を借りようとするクラスもあるだろうとライヤは考えたため許可を取って回ったのだが、予想に反して全員から許可を得た。
もちろん訓練場を借りずとも魔物討伐に備えることは出来るだろう。
昨日、ティムが来て会議室に缶詰めしていたのもその1つだ。
だが、それをしているクラスもない。
他にやっていることがあるのか、対策など必要ないと考えているのか。
後者でないことを祈りたいものだ。
「なんか大丈夫らしい。終わったらちゃんと鍵を返しに来い」
「(コクリ)」
「あ、エウレア」
背を向けて歩き出すエウレアを呼び止める。
「頑張れよ」
「(コクリ)」
薄く笑顔を見せてエウレアが職員室を後にする。
今年は去年以上にライヤは生徒に任せている。
見放したとかそういうわけではなく、新しい試みなので教師側にも相当な負担がかかっているのだ。
例年の体育祭なら各クラスの担任ではない教師が審判を務めていたが、今回もそれは適用される。
つまり、ライヤは他のクラスの魔物討伐を見守る立場になるのだ。
「絶対的に人手が足りない……」
2キロ四方にも渡る範囲の監視を一人で出来るわけもない。
軍に協力してもらわなければならないのだが、その連絡も上手くいっていない。
ライヤは貴族と地位を得たことで逆に息苦しさを感じていた。
今までなら身分がないからと学園長に丸投げしていた事項も自分でさばけるようになってしまったのだ。
必然、仕事が増えていた。
「頑張りすぎじゃないですか?」
「いやぁ、そうは思うけど。頑張りどころだからなぁ」
夕食後。
ヨルに膝枕してもらいながら目を中心に回復魔法をかけてもらっている。
視力が回復するような劇的な効果は見込めない魔法だが、翌朝には元気になっているだろう。
「ちょっと目を開けてください」
言われるままに目を開くと、ヨルの逆さまの顔が目に映る。
「本当に無理してませんか? 私も教師ですし……」
「大丈夫だって。本当に無理なら言うから。ヨルだって特定のクラスに肩入れしてるほど暇じゃないだろ?」
何なら、この体育祭の本番において一番忙しくなるのはヨルだろう。
全てのクラスの怪我人が運ばれてくるのを処置しなければいけないのだから。
大怪我がないに越したことは無いが、あった場合はヨルに委ねられるだろう。
そんな中立とも言える立場のヨルが特定のクラスに肩入れするのは褒められたことではない。
「元々、ここまでしなくてもいいものを俺が心配のし過ぎでやりすぎているかもしれないからな」
「何もなければいいんですけどね」
ヨルはつい最近見た魔物対ライヤとフィオナの戦いを思い出す。
基本的に戦闘というものに縁のない生活をしてきたヨル。
攻撃魔法が使えない代わりにナイフの扱いは割と上手いと自分でも思っていた。
だが、ライヤとフィオナの近距離戦のそれとは格が違うとこの前感じさせられた。
そのライヤをして化け物と言われるアンなんてどんな領域にいるのかヨルには見当もつかない。
それでも生徒たちよりは数段も上手だ。
そのヨルが感じる限り、生徒たちには怪我人が想定よりも多く出るだろう。
それだけで済めば、まだいい。
「生徒たちは無事に返すよ」
再び目を閉じたライヤは呟く。
「それが教師の役目だからな」
「……うん、頑張って」
ヨルはライヤの髪を優しく撫でつつ、また回復魔法を始めた。
翌日。
職員室で仕事をしていたライヤの下に今度はエウレアが来た。
「どうした?」
「……かぎ」
「どこの?」
「……訓練場」
「あいてるかなぁ。ちょっとまて」
図書館の会議室と同様に共用である訓練場も他のクラスが使っていれば割り込みは出来ない。
本来なら数クラスが同時に使えるくらいのスペースはあるが、時期が時期だ。
スパイとみなされてもおかしくないから、やめておいた方がいい。
「あいてたから良かったけど、今度からはもっと早くな」
「……明日も」
「もしかして、これから体育祭まで全部の日で借りる気か?」
「(コクリ)」
「ちょっとそれは相談が必要だな」
エウレアを自分の席の前に残し、各教師の机を回る。
「すみません、今日から体育祭までなのですが……」
残り3日の準備期間。
訓練場を借りようとするクラスもあるだろうとライヤは考えたため許可を取って回ったのだが、予想に反して全員から許可を得た。
もちろん訓練場を借りずとも魔物討伐に備えることは出来るだろう。
昨日、ティムが来て会議室に缶詰めしていたのもその1つだ。
だが、それをしているクラスもない。
他にやっていることがあるのか、対策など必要ないと考えているのか。
後者でないことを祈りたいものだ。
「なんか大丈夫らしい。終わったらちゃんと鍵を返しに来い」
「(コクリ)」
「あ、エウレア」
背を向けて歩き出すエウレアを呼び止める。
「頑張れよ」
「(コクリ)」
薄く笑顔を見せてエウレアが職員室を後にする。
今年は去年以上にライヤは生徒に任せている。
見放したとかそういうわけではなく、新しい試みなので教師側にも相当な負担がかかっているのだ。
例年の体育祭なら各クラスの担任ではない教師が審判を務めていたが、今回もそれは適用される。
つまり、ライヤは他のクラスの魔物討伐を見守る立場になるのだ。
「絶対的に人手が足りない……」
2キロ四方にも渡る範囲の監視を一人で出来るわけもない。
軍に協力してもらわなければならないのだが、その連絡も上手くいっていない。
ライヤは貴族と地位を得たことで逆に息苦しさを感じていた。
今までなら身分がないからと学園長に丸投げしていた事項も自分でさばけるようになってしまったのだ。
必然、仕事が増えていた。
「頑張りすぎじゃないですか?」
「いやぁ、そうは思うけど。頑張りどころだからなぁ」
夕食後。
ヨルに膝枕してもらいながら目を中心に回復魔法をかけてもらっている。
視力が回復するような劇的な効果は見込めない魔法だが、翌朝には元気になっているだろう。
「ちょっと目を開けてください」
言われるままに目を開くと、ヨルの逆さまの顔が目に映る。
「本当に無理してませんか? 私も教師ですし……」
「大丈夫だって。本当に無理なら言うから。ヨルだって特定のクラスに肩入れしてるほど暇じゃないだろ?」
何なら、この体育祭の本番において一番忙しくなるのはヨルだろう。
全てのクラスの怪我人が運ばれてくるのを処置しなければいけないのだから。
大怪我がないに越したことは無いが、あった場合はヨルに委ねられるだろう。
そんな中立とも言える立場のヨルが特定のクラスに肩入れするのは褒められたことではない。
「元々、ここまでしなくてもいいものを俺が心配のし過ぎでやりすぎているかもしれないからな」
「何もなければいいんですけどね」
ヨルはつい最近見た魔物対ライヤとフィオナの戦いを思い出す。
基本的に戦闘というものに縁のない生活をしてきたヨル。
攻撃魔法が使えない代わりにナイフの扱いは割と上手いと自分でも思っていた。
だが、ライヤとフィオナの近距離戦のそれとは格が違うとこの前感じさせられた。
そのライヤをして化け物と言われるアンなんてどんな領域にいるのかヨルには見当もつかない。
それでも生徒たちよりは数段も上手だ。
そのヨルが感じる限り、生徒たちには怪我人が想定よりも多く出るだろう。
それだけで済めば、まだいい。
「生徒たちは無事に返すよ」
再び目を閉じたライヤは呟く。
「それが教師の役目だからな」
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