受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-
武王
「このあたりで大丈夫だろう」
王都から離れること20キロほど。
草原地帯から荒野地帯へと移るような場所。
「ここは軍の演習で使う場だ。一般人が近づくことはないし、今日使われる予定もない」
淡々と続ける王様。
「久しく戦っていなかったからな。機会が出来たのを喜ぶべきかもしれん」
くるりと振り返った王様は獰猛な笑みを浮かべていた。
「さぁ、やろうか」
「お父様は強いわよ」
「言われなくてもわかってる。勝ちにいくのか?」
「出来ればね。でも、そういう相手じゃないのもわかってる」
「じゃあ、最初は俺寄りで」
「いいわ」
少し距離をとった両者が向き合う。
城から出てくる際に壁から取ってきていた大剣を王様が担ぐ。
「先手は譲ってやろう」
「紅蓮よ」
王様がそんなことを言うのと同時。
アンがあいさつ代わりの火柱を立てる。
火よ、炎よと魔法を発動するよりもより威力の高くなる「紅蓮」という文言。
それだけ本気という事だろう。
体重と大剣。
そうとうに重い体であろうが、軽々とアンの魔法を躱して王様は大剣を振りかぶる。
裂帛の気合と共に振り下ろされた大剣は地面をえぐった。
あれまともにくらったら死ぬくね……?
「ははっ、久しぶりだなぁ!」
「今回は勝ちます!」
冷や汗を流しているライヤを置いて、ヒートアップしている2人。
あれ……?
「アン……?」
「計画変更! 勝つわよ!」
まぁ、アンに力のセーブができるとは思ってなかったけど。
想像よりも早かったな。
「迷彩」
ライヤの光魔法がライヤとアンを包む。
「見えない程度で俺が動揺するとでも思うか?」
「……」
声を発すればそれだけで位置情報を相手に与え、迷彩を使っている理由のほとんどが失われてしまう。
一説によれば、人間の感覚のうち視覚が8割近くを占めるらしい。
よって、自分の姿を隠すのは相手の情報を奪うという意味でかなり有用と言える。
8割とまではいかずとも五感のうち1つを役立たせていないなら、少なくとも2割は相手の感覚を削れている。
「……」
アンも普段ならかなり戦闘中うるさいタイプだが、勝つためならちゃんとその辺りはやってくれるようになった。
ライヤによる矯正の効果があった事例である。
「そこぉ!」
王様が片手で横薙ぎを背後に向けて振り回すが、ライヤは体勢を低くして更に近づく。
空気の揺らぎだとか、王様レベルになると殺気とかいう謎の気配読みで大体この辺りだろうというのはわかるだろう。
だが、相手の体勢がどんな状態であるかなんて戦闘中に逐一把握できるはずもない。
戦闘中でなければそれも可能かもしれないが、そこまでのリソースを戦闘中に割くことはできない。
バツンッ!
大きな音が上がり、王様から少し黒い煙が上がる。
「げほっ……。雷か……」
「(生物としてもうちょっと効いてて欲しいんだけどなぁ!)」
一瞬硬直したものの、すぐに大剣を構え直してライヤが触れた方向に振り回した王様から離れる。
本来なら過剰なほどの魔力を込めたはずの一撃であった。
どうせ死なないだろうからとかなり強めの電撃を放ったはずだったのだが、出来たのは一瞬動きを止める程度。
「(やっぱり俺の魔法じゃ限界があるな)」
ライヤの魔法の中でも最大威力というわけではない。
だが、ライヤにとっては大技である魔法を連発していては魔力が足りなくなる。
「ぐっ……!?」
王様が向いている方向とは逆のわき腹から鮮血が散る。
今回はあくまでアンとライヤの協力戦。
ライヤが有効打を与えられずとも、一瞬止められればアンにはそれで十分。
「……ごめん、避けられた」
「つくづく化け物だな」
決定打になり得ると踏んでいた。
だが、それでも避けられてかすり傷に留まったようだ。
戦争で国を引っ張った英雄とはかくも強いものか。
「ははっ!」
大きな笑い声が響く。
「俺ももうちょっと本気を出すかぁ!」
ゴウッと魔力が王様の周りで渦巻く。
今まで魔法を使ってないっていう事実が恐ろしい。
「やったわねライヤ。初めてお父様に魔法を使わせたわよ」
「つまり、ここから先はアンも未知数ってことだな?」
がガッ!
地が割れる音がして、2人の目の前に王様が巨躯が現れる。
ドンッ!
アンとライヤはそれぞれ相手を押すことで結果的に2人とも攻撃を避けた。
「はっはぁ!」
「(いやいや……)」
王様を中心にクレーターが出来る。
ほぼ隕石じゃん。
そしてなぜか大剣は置いてきており、拳である。
魔力を感じないが、なぜあの拳は無事なのか。
王様って強いんだな……。
冷たい汗が背中を伝う。
王都から離れること20キロほど。
草原地帯から荒野地帯へと移るような場所。
「ここは軍の演習で使う場だ。一般人が近づくことはないし、今日使われる予定もない」
淡々と続ける王様。
「久しく戦っていなかったからな。機会が出来たのを喜ぶべきかもしれん」
くるりと振り返った王様は獰猛な笑みを浮かべていた。
「さぁ、やろうか」
「お父様は強いわよ」
「言われなくてもわかってる。勝ちにいくのか?」
「出来ればね。でも、そういう相手じゃないのもわかってる」
「じゃあ、最初は俺寄りで」
「いいわ」
少し距離をとった両者が向き合う。
城から出てくる際に壁から取ってきていた大剣を王様が担ぐ。
「先手は譲ってやろう」
「紅蓮よ」
王様がそんなことを言うのと同時。
アンがあいさつ代わりの火柱を立てる。
火よ、炎よと魔法を発動するよりもより威力の高くなる「紅蓮」という文言。
それだけ本気という事だろう。
体重と大剣。
そうとうに重い体であろうが、軽々とアンの魔法を躱して王様は大剣を振りかぶる。
裂帛の気合と共に振り下ろされた大剣は地面をえぐった。
あれまともにくらったら死ぬくね……?
「ははっ、久しぶりだなぁ!」
「今回は勝ちます!」
冷や汗を流しているライヤを置いて、ヒートアップしている2人。
あれ……?
「アン……?」
「計画変更! 勝つわよ!」
まぁ、アンに力のセーブができるとは思ってなかったけど。
想像よりも早かったな。
「迷彩」
ライヤの光魔法がライヤとアンを包む。
「見えない程度で俺が動揺するとでも思うか?」
「……」
声を発すればそれだけで位置情報を相手に与え、迷彩を使っている理由のほとんどが失われてしまう。
一説によれば、人間の感覚のうち視覚が8割近くを占めるらしい。
よって、自分の姿を隠すのは相手の情報を奪うという意味でかなり有用と言える。
8割とまではいかずとも五感のうち1つを役立たせていないなら、少なくとも2割は相手の感覚を削れている。
「……」
アンも普段ならかなり戦闘中うるさいタイプだが、勝つためならちゃんとその辺りはやってくれるようになった。
ライヤによる矯正の効果があった事例である。
「そこぉ!」
王様が片手で横薙ぎを背後に向けて振り回すが、ライヤは体勢を低くして更に近づく。
空気の揺らぎだとか、王様レベルになると殺気とかいう謎の気配読みで大体この辺りだろうというのはわかるだろう。
だが、相手の体勢がどんな状態であるかなんて戦闘中に逐一把握できるはずもない。
戦闘中でなければそれも可能かもしれないが、そこまでのリソースを戦闘中に割くことはできない。
バツンッ!
大きな音が上がり、王様から少し黒い煙が上がる。
「げほっ……。雷か……」
「(生物としてもうちょっと効いてて欲しいんだけどなぁ!)」
一瞬硬直したものの、すぐに大剣を構え直してライヤが触れた方向に振り回した王様から離れる。
本来なら過剰なほどの魔力を込めたはずの一撃であった。
どうせ死なないだろうからとかなり強めの電撃を放ったはずだったのだが、出来たのは一瞬動きを止める程度。
「(やっぱり俺の魔法じゃ限界があるな)」
ライヤの魔法の中でも最大威力というわけではない。
だが、ライヤにとっては大技である魔法を連発していては魔力が足りなくなる。
「ぐっ……!?」
王様が向いている方向とは逆のわき腹から鮮血が散る。
今回はあくまでアンとライヤの協力戦。
ライヤが有効打を与えられずとも、一瞬止められればアンにはそれで十分。
「……ごめん、避けられた」
「つくづく化け物だな」
決定打になり得ると踏んでいた。
だが、それでも避けられてかすり傷に留まったようだ。
戦争で国を引っ張った英雄とはかくも強いものか。
「ははっ!」
大きな笑い声が響く。
「俺ももうちょっと本気を出すかぁ!」
ゴウッと魔力が王様の周りで渦巻く。
今まで魔法を使ってないっていう事実が恐ろしい。
「やったわねライヤ。初めてお父様に魔法を使わせたわよ」
「つまり、ここから先はアンも未知数ってことだな?」
がガッ!
地が割れる音がして、2人の目の前に王様が巨躯が現れる。
ドンッ!
アンとライヤはそれぞれ相手を押すことで結果的に2人とも攻撃を避けた。
「はっはぁ!」
「(いやいや……)」
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