受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-

haruhi8128

半年の成果

「結構みんな様になってきたな」

学年始めから取り組んでいた手のひらに魔力球を作る練習が1学期末になりようやく実を結ぼうとしていた。

「先生、これはどうでしょうか?」
「……そのブレは意図しているものじゃないよな? そこまでできて一人前だぞ」
「はーい……」
「先生、俺のは?」
「毎回言ってるけど、でかすぎるだろ」
「でも、前よりは小さくなったぞ……」
「それでも大きいんだよ。ほぼ視認できない自分の感覚でしかない変化じゃ意味ないだろ」
「はい……」

苦労しているのは珍しくクラスのツートップであるウィルとゲイルである。
もちろん後から来たキリトとミクは除いているが。
彼らはクラスが1年生時にクリアした魔力量の調節からだから、遅れるのは当然だ。

「ウィルさん、もう一度見ていただけませんか?」
「えぇ、構いませんよ」

ミクはウィルへと質問をすることが徐々に多くなっていた。
先生としては少し寂しい気もするが、ウィルは教えるのも上手いし、あまり自分のことだけで思いつめるのも良くないから静観している。

「……」

対してキリトはクラスでは無言であることが多い。
休み時間などはクラスメイトと話していたりもするようだが、ほとんどミクと一緒だ。
何度かライヤも話しかけてはみたのだが、ライヤの存在はマイナスにしか働かなそうなのでやめておいた。
時折くるイリーナからの報告でかなりイリーナに懐いていることが伺えるが、なぜなのかは判然としない。
とりあえずは静観している。

「エウレアは流石だな」
「……ん」

入学時から実力が既に一定のレベルにあったエウレアはコツを掴むのも早く、既に2つの魔力球を手の平で自在に操ることのできるレベルにまで達している。

「むむ……」

ティムはエウレアにライバル意識があるので頑張っている。
それはわかるのだが、魔力制御だけは幼い時からの積み重ねが顕著に出る。
かけた時間とほぼ比例するので追い付くのは至難の業だろう。

「ここ!」
「ほぉー」

デラロサとマロンはライヤ考案の魔力球を用いた遊びに夢中だ。
遊びと言っても制御の上達に役立つものだが。
互いの手のひらを向けた状態になり、攻守それぞれに別れる。
攻め側は手の平のいずこかに魔力球を作り、作り終えた段階で守り側に手のひらを合わせる。
守り側は相手の手のひらの魔力の動きを観察しながら自分の手のひらに魔力球を作り、相手が手を合わせてきたときに同じ位置に魔力球が出来ていれば防御成功、攻守を交代する。
この遊びは互いの作る魔力球が同じ規模であるようにする必要があるため、防御側がかなり不利なのだがこの2人が作る基本的な魔力球は規模が同じなので中々決着がつかない。
普段よりも魔力球の形成に時間がかかっていれば工夫していることがバレるので結果として対応される。

思ってたんと違う……。

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