受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-
6人目
「で、エウレアか。最後はウィルにってことか」
「……」
無言で進み出てくるエウレア。
「……どこまでやる気だ?」
「……?」
コテンと首をかしげるエウレア。
少しぼさついた銀髪が揺れる。
「いや、『?』じゃないだろ……」
エウレアは暗部の人間だ。
その実力を見せたことは一度もない。
フィオナのような後から暗部に入った人間ではなく、代々暗部であるというだけあって実力の隠し方が上手い。
ライヤでさえ具体的にどの程度なのかは把握できていないのだ。
「……どうぞ」
「……雷豹」
最大限の警戒を以て開始を宣言したライヤだが、その警戒が間違っていなかったことがエウレアの行動によって証明される。
魔法によって動物を形作るのは非常に難易度が高い。
そもそもできない者も数多くおり、できても自分の得意属性が精々だ。
なぜそれほどに難しいと言われているかというと、生み出した動物を独自に動かすことが出来るのだ。
1対1が条件付きだが2対1になるようなものである。
もちろん問題点はあり、魔力制御のほぼ全てをその魔法に用いる必要があるので他の魔法を使うことが難しくなる。
それこそ1年生の発展途上な魔力制御では他の魔法は考えなくてもいいだろう。
「……」
「まじで顔色変わらないな……」
だが、エウレアはローブの中に仕込んでいた短剣やらを投げてライヤを近づけさせないように立ち回る。
その牽制に速さを特徴とする雷魔法で作りだされた豹が動き回っているのだ。
魔法に警戒をしなくてもいいとはいえ、簡単にはいかない。
とはいえライヤも防戦一方というわけではない。
色々な属性の簡単な魔法弾を撃って牽制しているのだが、涼しい顔をして避けられる。
そもそもエウレアの表情が変わったところなどほぼ見たことないのだが。
「ってか」
ちらりとライヤは自分の周りをうろつく雷豹に目を向ける。
「これ出して良かったのか……?」
明らかに1年生にできる技量ではない。
生徒たちもそれくらいはわかるだろう。
今まで隠していただけに変な詮索をされないか……。
「「すげぇー!」」
「あ、大丈夫そうか……」
高度技術にはしゃいでいるのがほとんどだ。
ウィルは少し驚いているが、そういうこともあるだろうと納得しているようだ。
薄々エウレアの実力を察していたのだろう。
「ぅおっ!?」
一瞬前まで眼球があった地点をナイフが通り過ぎる。
「死ぬだろ!?」
「……大丈夫、先生は死なない。……今も目を離していたのに避けた」
「結果論過ぎる!」
必死のライヤの説得にも関わらず、心なしかエウレアの瞳がランランと輝いている気がする。
だが、止めるようなことを言いながらもライヤの口角も上がっている。
「精々殺されないように気を付けようかな」
スイッチが入ったのか、ほぼスタート位置から動いていなかったライヤが前に出る。
「むっ……」
来るかと身構えたエウレアに対し、ライヤは自分の周りに火球を浮かべる。
「……? ……!」
今までと同じではないかと少し気を緩めたエウレアだが、すぐにまた気を引き締める。
ライヤの周りに浮いた火球が変化し始めたのだ。
「……凄い……」
対面しているエウレアから漏れたのは感嘆の一言。
「いけ、火鼠」
変化し終えた火球は鼠の形をとり走り回り始める。
その数9匹。
動物の大きさによって必要とされる魔力制御の度合いは変わるとはいえ、それでも驚異的な数である。
「……でも」
これだけするなら近接戦に持ち込んでくるはずだとエウレアは勝機あり、と考える。
近接が苦手なライヤに対し、エウレアはむしろ得意だ。
「……え?」
「終わりだな」
その一瞬。
ライヤが剣を首元に添えるには十分であった。
「……どうやって……」
「さっきから見てるだろ?」
考えられるのは風魔法による一瞬の加速。
だが、先ほどまで見せていたそれよりも遥かに速い。
何より、9匹もの火鼠を魔法で作っておきながら他に魔法を行使できるというのが信じられない。
「相手の最大値を簡単に決めつけない方がいい。途中まで加減しておいてここぞで最大値を出して仕留めるのは常套手段だぞ」
「……」
そんなことはエウレアとてわかっている。
その上で。
目の前の男の魔力制御の技量が信じられない。
そんなエウレアの頭にライヤは手をポンと置く。
「一番惜しかったのはゲイルからエウレアに更新されたな。特に悪いところもなかったし。雷豹にも驚かされた。あれが1対1しか出来ないっていうのはわかってるよな?」
「(コクリ)」
「うん、ならいい。他にも魔法使えるくらいに魔力制御が上達したら強力な武器になるぞ」
表情に変化は見えないが、少し茫然とした足取りで他の生徒たちの下に戻るエウレア。
「凄かったな、おい!」
ゲイルが肩を組む。
「あれのやり方教えてくれないか!?」
抜かれた悔しさよりも雷豹の凄さが上回ったらしい。
その様子を見てライヤは少し顔を顰める。
エウレアが女の子だというのを知っているのはライヤと、恐らくウィルだけだ。
後から真実を知った時が不安で仕方ない。
貴族の子女に気安く肩を組むというのはかなり失礼に当たる。
エウレア本人は気にしていなそうなのが救いか。
「さぁ、先生。よろしくお願いしますね?」
そして人1倍気合いの入った挑戦者を迎える。
「……」
無言で進み出てくるエウレア。
「……どこまでやる気だ?」
「……?」
コテンと首をかしげるエウレア。
少しぼさついた銀髪が揺れる。
「いや、『?』じゃないだろ……」
エウレアは暗部の人間だ。
その実力を見せたことは一度もない。
フィオナのような後から暗部に入った人間ではなく、代々暗部であるというだけあって実力の隠し方が上手い。
ライヤでさえ具体的にどの程度なのかは把握できていないのだ。
「……どうぞ」
「……雷豹」
最大限の警戒を以て開始を宣言したライヤだが、その警戒が間違っていなかったことがエウレアの行動によって証明される。
魔法によって動物を形作るのは非常に難易度が高い。
そもそもできない者も数多くおり、できても自分の得意属性が精々だ。
なぜそれほどに難しいと言われているかというと、生み出した動物を独自に動かすことが出来るのだ。
1対1が条件付きだが2対1になるようなものである。
もちろん問題点はあり、魔力制御のほぼ全てをその魔法に用いる必要があるので他の魔法を使うことが難しくなる。
それこそ1年生の発展途上な魔力制御では他の魔法は考えなくてもいいだろう。
「……」
「まじで顔色変わらないな……」
だが、エウレアはローブの中に仕込んでいた短剣やらを投げてライヤを近づけさせないように立ち回る。
その牽制に速さを特徴とする雷魔法で作りだされた豹が動き回っているのだ。
魔法に警戒をしなくてもいいとはいえ、簡単にはいかない。
とはいえライヤも防戦一方というわけではない。
色々な属性の簡単な魔法弾を撃って牽制しているのだが、涼しい顔をして避けられる。
そもそもエウレアの表情が変わったところなどほぼ見たことないのだが。
「ってか」
ちらりとライヤは自分の周りをうろつく雷豹に目を向ける。
「これ出して良かったのか……?」
明らかに1年生にできる技量ではない。
生徒たちもそれくらいはわかるだろう。
今まで隠していただけに変な詮索をされないか……。
「「すげぇー!」」
「あ、大丈夫そうか……」
高度技術にはしゃいでいるのがほとんどだ。
ウィルは少し驚いているが、そういうこともあるだろうと納得しているようだ。
薄々エウレアの実力を察していたのだろう。
「ぅおっ!?」
一瞬前まで眼球があった地点をナイフが通り過ぎる。
「死ぬだろ!?」
「……大丈夫、先生は死なない。……今も目を離していたのに避けた」
「結果論過ぎる!」
必死のライヤの説得にも関わらず、心なしかエウレアの瞳がランランと輝いている気がする。
だが、止めるようなことを言いながらもライヤの口角も上がっている。
「精々殺されないように気を付けようかな」
スイッチが入ったのか、ほぼスタート位置から動いていなかったライヤが前に出る。
「むっ……」
来るかと身構えたエウレアに対し、ライヤは自分の周りに火球を浮かべる。
「……? ……!」
今までと同じではないかと少し気を緩めたエウレアだが、すぐにまた気を引き締める。
ライヤの周りに浮いた火球が変化し始めたのだ。
「……凄い……」
対面しているエウレアから漏れたのは感嘆の一言。
「いけ、火鼠」
変化し終えた火球は鼠の形をとり走り回り始める。
その数9匹。
動物の大きさによって必要とされる魔力制御の度合いは変わるとはいえ、それでも驚異的な数である。
「……でも」
これだけするなら近接戦に持ち込んでくるはずだとエウレアは勝機あり、と考える。
近接が苦手なライヤに対し、エウレアはむしろ得意だ。
「……え?」
「終わりだな」
その一瞬。
ライヤが剣を首元に添えるには十分であった。
「……どうやって……」
「さっきから見てるだろ?」
考えられるのは風魔法による一瞬の加速。
だが、先ほどまで見せていたそれよりも遥かに速い。
何より、9匹もの火鼠を魔法で作っておきながら他に魔法を行使できるというのが信じられない。
「相手の最大値を簡単に決めつけない方がいい。途中まで加減しておいてここぞで最大値を出して仕留めるのは常套手段だぞ」
「……」
そんなことはエウレアとてわかっている。
その上で。
目の前の男の魔力制御の技量が信じられない。
そんなエウレアの頭にライヤは手をポンと置く。
「一番惜しかったのはゲイルからエウレアに更新されたな。特に悪いところもなかったし。雷豹にも驚かされた。あれが1対1しか出来ないっていうのはわかってるよな?」
「(コクリ)」
「うん、ならいい。他にも魔法使えるくらいに魔力制御が上達したら強力な武器になるぞ」
表情に変化は見えないが、少し茫然とした足取りで他の生徒たちの下に戻るエウレア。
「凄かったな、おい!」
ゲイルが肩を組む。
「あれのやり方教えてくれないか!?」
抜かれた悔しさよりも雷豹の凄さが上回ったらしい。
その様子を見てライヤは少し顔を顰める。
エウレアが女の子だというのを知っているのはライヤと、恐らくウィルだけだ。
後から真実を知った時が不安で仕方ない。
貴族の子女に気安く肩を組むというのはかなり失礼に当たる。
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