受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-

haruhi8128

年末

後期も佳境に入り、年末。
地球のようにクリスマスなど存在しない。
キリストが生まれていないのだからそれはそうなのだから、少し違和感がある。
年末はイベントが盛りだくさんというイメージがついているからだ。
だが、現在日本では色んな宗教のイベントがないまぜになっているだけで本来クリスマスも意味ないものだ。
ほとんどはキリスト教徒ではないのだから。
日本人のほとんどが無宗教なのをいいことにいいとこどりをしている状態である。

「さて、新年を迎えるわけだけど、今日で授業終わりだ。次に会うのは年代わってから5日後かな」

とはいえ、新年はやはりめでたいものである。
学園も休止となり、各々家で新年を迎えることになるだろう。

「宿題は通常通りくらいにしか出さないから、ゆっくりしてくれ」
「「やったー!」」

宿題がないのは生徒にとって圧倒的な嬉しさを持つ。
今まで宿題を忘れた生徒はいないが、そりゃないに越したことは無い。

「じゃあ、これから2週間。お休みだ」




ぽそぽそと少し肌寒くなった寮への帰り道。

「ヨルはどうするんだ?」
「どうするとは?」
「いや、こっちに来てから2週間休みなんて初めてだろ?」
「どうすると言われましても、私が何かすると困るのはライヤさんでしょう?」
「それももっともなんだけどな」

もちろん、街へ出るなんてことは許可できない。
ヨルの容姿をどこまで知られているかわからないから、姿は見せないに越したことは無い。

「言われてみると、確かになぁ……」
「私はライヤさんとフィオナさんと一緒にいるの、楽しいですよ」

それもまた本当の事だろう。
だが、気が滅入る状況に置かれているのも確かだ。

「何か好きな食べ物とかあるか? 折角だから先輩に作ってもらおう」
「特に、ないんですよね。フィオナさんの料理はどれも美味しくて優劣がつきませんし……」
「じゃあ、何か欲しいものはあるか?」

半分クリスマスプレゼントだ。

「ただでさえお世話になっているのに、そんなに貰うわけには……」
「いや、もちろん値段の上限はあるけどな? 費用は国が出してくれるだろうし」

ライヤが出すように見せて実は国任せである。

「貰うというか、私を貰って頂ければそれで十分なんですけど……」
「もちろん、なしで」

いつまで諦めないんだ。

ぴょこぴょこと小さく跳ねながら考えるヨル。

「じゃあ、アンさんとお話ししたいです」
「お?」
「ウィルさんや、クラスの皆さんとの時間も楽しいですが、やはり私も20歳なので」
「そうだよな。アンも忙しいとは思うから、どうにか時間を用意しよう」




「で、機会を作れとは言ったけどさ」

ライヤまで呼ばれてしまった。

「しょうがないでしょ。ヨルを守って王城まで連れてくるのなんて半端なのに頼めないわ」
「それはそうだ」

ライヤもアンには会いたかった。
役得といえば役得だ。

「……前よりは忙しくなさそうか?」
「こっちの動きも決まってきたから」
「やっぱダメそうか?」

フルフルと頭を振るアン。

「やっぱ戦争は止めれないか……」
「王国に原因があるならどうにか出来たとは思うわ。賢者のおかげで初動が早かったから。でも、今回はどうにもならないわね」
「公国か?」
「……かもね」

海洋諸国連合が追い詰められた理由。
そして、王国が標的になったということ。
大陸外の勢力は置いておくとして、帝国はこういう搦め手が苦手だ。
やってくるとしたら、公国。

「いつも通り、確証はないわ。わかっているのは、私たちが諸国連合と向き合わなきゃいけないことだけ」
「うちがすみません……」
「あなたが謝ることは無いわ、ヨル。あなたのお父様が戦争に反対していたという確認がとれたもの。あなた個人はともかくとして、あなたの家が戦争回避のために動いていたという事実は私たちにとって大きなものよ」
「アンさん……!」
「その代わり、その確認が取れたことであなたのお父様の安否は更に心配になったわね」
「おいぃ!?」

血も涙もないことを言うアンに思わずライヤもツッコむ。

「そんなことより、私とお話ししに来たのでしょう?」
「そうでした! 王国は凄いですね……!」

「そんなこと」として片付けるアンとそれにのっかるヨル。
ひっかりを覚えるライヤは置いてけぼりだ。

「学園の仕組みがですね……」
「それは確かにそうね。あれでもかなり歴史のある学校だし、今の学園長は理解のある人だから……」

そんなライヤを差し置いて2人の会話は弾む。
まぁ、ヨルが楽しそうなので良かったという事にしよう。

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