受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-
体育祭当日 9:00
「さぁ、頑張りどころですよ」
体育祭当日を迎え、入場を待つ生徒たち。
その中でS級の小さな集団は結束を高めていた。
「個人種目ももちろんですが、やはり団体種目。配点の高い種目をとってこそ私たちに勝利が近づきます」
小さな声ではありながらよく通る声で確認するウィル。
「折角ですから本番を見に来ることが出来ない先生に見れなかったのが残念だと言われるような結果を残しましょう」
「随分な自信ですね、王女様」
突っかかってきたのはA級の生徒。
「それほどまでにご自分たちが優れているとお考えですか?」
「? どういうことでしょう」
ギリッと歯を食いしばる男子。
「S級であれば他のクラスに負けることはないだろうと、そうお考えなのでしょう!?」
「え……?」
全く脈絡のない大声に困惑するS級の生徒たち。
「我々A級がいる限り、そう簡単に事が進むとは思わないことです!」
そう言いきるだけ言いきって自分の列に戻る男子生徒に気勢をそがれる形になる。
彼は公爵の息子としてS級での入学を期待されていたのだが、規定に少しだけ足りずA級での入学となった。
彼自身もS級であることが当然だと思っていたので入学の際にS級に対する強いコンプレックスを抱いてしまったのだ。
公爵がどうにかS級で入学させようと学園に働きかけたが結果としては許されなかった。
期待に沿えなかったというのもコンプレックスの基となっている。
「入場します! 生徒は整列を!」
「とにかく、頑張りましょう……」
「そうだな……」
「まぁ、目立つわ目立つわ……」
会場の門から外側の店の方に向かうという事は今門の方へと流れている人の流れに逆行することになる。
そもそもライヤが目を付けた違和感も人の流れによるものなので目立って見えるのは当然なのだが、ミランダはその姿や立ち振る舞いに周りの人間が圧倒されて自ら道を譲っているまである。
結果として整理されていた人の列を乱しているが、本人はそんなことなどどこ吹く風。
自分がスイスイ歩けていることに何の疑問も持っていない。
「面の皮が厚いってレベルじゃないな……」
単純に、そういう機微に気づかないのだろう。
極限まで目立っているので潜入にはおよそ向かないのだが、大丈夫なのだろうか。
「この辺りですね」
そんなライヤの心配など知らないミランダは人の流れに逆行しているとは思えない早さで目的の店まで到達した。
店の外に木箱が積みあがっているが、それは当然とも言える。
仕入れがあればこういう事にもなるだろう。
だがライヤの言葉が正しければこの店は開いていないはずであり、仕入れがあるのもおかしい。
「これは、火薬……?」
軍人であるミランダにとっては嗅ぎなれた臭いだが、こんな街中で嗅ぐことなどまずない臭いである。
「流石ライヤ様。目の付け所が完璧です」
命令そのままの事しかできないミランダにとってライヤは尊敬の対象であった。
このままの自分ではだめなのだろうと自覚はしていても、何をどうすれば改善できるのかがわからない。
そんな彼は戦場で出会ったライヤに驚いた。
彼女でなくとも軍では上官に従うのが当然である。
よほどの実績を残していない限り年功序列が覆ることはない。
そもそも長く従軍している人間はそれだけ国のために働いているという事でそれだけで尊敬に足るものなのだ。
そんな中戦場という上官に全てを委ねたくなる場面で何の立場もない学生が自分たちの部隊を指揮すると伝えられた時はさしもの彼女も少し違和感を感じた。
しかし、直属の部隊長がライヤに任せると判断したためその通りに行動したのだが、結果は知っての通りである。
我を通せる人間。
ミランダの目指す人間の完成形をライヤに見たのだ。
そしていつかこうなりたいと思った。
だからその姿を近くで見るために今回部隊長に自らこの役回りを志願したのだ。
だが、彼女は気付いていない。
その志願したことこそ彼女が望んでいた自分から動くことそのものなのである。
「なんだぁ、姉ちゃん。うちに何か用か?」
「この店の方でしょうか」
「あぁ、そう言えなくもないな」
煮え切らない言葉を使う店から出てきた男。
「こちらの箱は何なのでしょう」
「あ? そりゃあれだ。店の仕入れに決まっているだろう。体育祭の期間だからな」
「ふむ、火薬を何に使うのですか?」
ここで男の顔色が変わる。
「でめぇ、見たのか?」
「いえ、臭いでそうかなと。違うのですか?」
「……誤解じゃねぇか? 露店で火薬を使う事なんてないだろ?」
「確かに、その通りですね。失礼しました」
そのままその場を去ろうとするミランダ。
だが、横の路地から出てきた男がミランダに突進を仕掛ける。
流石の反応でそれを避けたミランダだったが、ヒールによって体勢を崩し、出てきた2人目に取り押さえられる。
ドンッ!
「うっ……」
当て身で気を失うミランダ。
「悪いな、嬢ちゃん。事が済むまで気を失っててくれや」
ちょうど、ライヤに見えない範囲での出来事であった。
体育祭当日を迎え、入場を待つ生徒たち。
その中でS級の小さな集団は結束を高めていた。
「個人種目ももちろんですが、やはり団体種目。配点の高い種目をとってこそ私たちに勝利が近づきます」
小さな声ではありながらよく通る声で確認するウィル。
「折角ですから本番を見に来ることが出来ない先生に見れなかったのが残念だと言われるような結果を残しましょう」
「随分な自信ですね、王女様」
突っかかってきたのはA級の生徒。
「それほどまでにご自分たちが優れているとお考えですか?」
「? どういうことでしょう」
ギリッと歯を食いしばる男子。
「S級であれば他のクラスに負けることはないだろうと、そうお考えなのでしょう!?」
「え……?」
全く脈絡のない大声に困惑するS級の生徒たち。
「我々A級がいる限り、そう簡単に事が進むとは思わないことです!」
そう言いきるだけ言いきって自分の列に戻る男子生徒に気勢をそがれる形になる。
彼は公爵の息子としてS級での入学を期待されていたのだが、規定に少しだけ足りずA級での入学となった。
彼自身もS級であることが当然だと思っていたので入学の際にS級に対する強いコンプレックスを抱いてしまったのだ。
公爵がどうにかS級で入学させようと学園に働きかけたが結果としては許されなかった。
期待に沿えなかったというのもコンプレックスの基となっている。
「入場します! 生徒は整列を!」
「とにかく、頑張りましょう……」
「そうだな……」
「まぁ、目立つわ目立つわ……」
会場の門から外側の店の方に向かうという事は今門の方へと流れている人の流れに逆行することになる。
そもそもライヤが目を付けた違和感も人の流れによるものなので目立って見えるのは当然なのだが、ミランダはその姿や立ち振る舞いに周りの人間が圧倒されて自ら道を譲っているまである。
結果として整理されていた人の列を乱しているが、本人はそんなことなどどこ吹く風。
自分がスイスイ歩けていることに何の疑問も持っていない。
「面の皮が厚いってレベルじゃないな……」
単純に、そういう機微に気づかないのだろう。
極限まで目立っているので潜入にはおよそ向かないのだが、大丈夫なのだろうか。
「この辺りですね」
そんなライヤの心配など知らないミランダは人の流れに逆行しているとは思えない早さで目的の店まで到達した。
店の外に木箱が積みあがっているが、それは当然とも言える。
仕入れがあればこういう事にもなるだろう。
だがライヤの言葉が正しければこの店は開いていないはずであり、仕入れがあるのもおかしい。
「これは、火薬……?」
軍人であるミランダにとっては嗅ぎなれた臭いだが、こんな街中で嗅ぐことなどまずない臭いである。
「流石ライヤ様。目の付け所が完璧です」
命令そのままの事しかできないミランダにとってライヤは尊敬の対象であった。
このままの自分ではだめなのだろうと自覚はしていても、何をどうすれば改善できるのかがわからない。
そんな彼は戦場で出会ったライヤに驚いた。
彼女でなくとも軍では上官に従うのが当然である。
よほどの実績を残していない限り年功序列が覆ることはない。
そもそも長く従軍している人間はそれだけ国のために働いているという事でそれだけで尊敬に足るものなのだ。
そんな中戦場という上官に全てを委ねたくなる場面で何の立場もない学生が自分たちの部隊を指揮すると伝えられた時はさしもの彼女も少し違和感を感じた。
しかし、直属の部隊長がライヤに任せると判断したためその通りに行動したのだが、結果は知っての通りである。
我を通せる人間。
ミランダの目指す人間の完成形をライヤに見たのだ。
そしていつかこうなりたいと思った。
だからその姿を近くで見るために今回部隊長に自らこの役回りを志願したのだ。
だが、彼女は気付いていない。
その志願したことこそ彼女が望んでいた自分から動くことそのものなのである。
「なんだぁ、姉ちゃん。うちに何か用か?」
「この店の方でしょうか」
「あぁ、そう言えなくもないな」
煮え切らない言葉を使う店から出てきた男。
「こちらの箱は何なのでしょう」
「あ? そりゃあれだ。店の仕入れに決まっているだろう。体育祭の期間だからな」
「ふむ、火薬を何に使うのですか?」
ここで男の顔色が変わる。
「でめぇ、見たのか?」
「いえ、臭いでそうかなと。違うのですか?」
「……誤解じゃねぇか? 露店で火薬を使う事なんてないだろ?」
「確かに、その通りですね。失礼しました」
そのままその場を去ろうとするミランダ。
だが、横の路地から出てきた男がミランダに突進を仕掛ける。
流石の反応でそれを避けたミランダだったが、ヒールによって体勢を崩し、出てきた2人目に取り押さえられる。
ドンッ!
「うっ……」
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