受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-
戦争Ⅱ
「王女を戦場に行かせるのですぞ! B級の馬の骨などつけている場合ではない! ここは我が子息を……!」
「いやいや、貴殿のところは戦場でも後ろの方にしかいたことがないであろう。それに比べてうちであれば前線での経験も豊富で……」
「いやいや……」
王の代わりに第一王女を派遣するということが決定した会議はその後誰を傍に置くかという議題で3日が経っていた。
既に王はその会議の場を離れている。
そんなことよりも考えなければならないことが山ほどあるのだ。
逆に言えば、大事な会議の場に出席できていない諸侯はそれほど重要視されていないという事が伺える。
しかし、それを差し置いてでも彼らはその権利を手に入れたいのだ。
後継者問題には入らないと公言している第一王女だが、それでも王家というのは特別である。
その王女に気に入られ、欲を言えば恋仲になどなれば家の安泰は決まったものであるようなものだからだ。
「うるさいわ! もう決めたの! それとも学園の決定に異を唱えるの!?」
痺れを切らしたアンが大きく声を上げる。
学園長の座というのは王国の中でもかなり重い。
当然、その座を狙うものも多い中、長い期間にわたって維持している学園長は一目置かれている。
「しかし……」
「B級とは……」
それがあってなお足を引っ張っているのはライヤがB級であるという事実であった。
(ライヤが大人しく特別措置を受けてくれていればこんな苦労をしないで済むのに……!)
特別措置がとられるのは別にライヤが初めてではないのだ。
何事にも前例というものはあるもので、その例は突然変異的な形でS級並みの魔力量を持つ子供が生まれてきたというものだったのだが。
少なくとも今のライヤのように軽んじられるようなことはなくなっていたはずなのだ。
(でも、それを甘んじて受け入れていたらライヤじゃないものね)
フッと柔らかい笑みを浮かべるアン。
それは腹の探り合いが続いている会議の場では似つかわしくない程自然なものであった。
そこらのおっさんにはわからないが、彼らについてきている、もしくは家の代表として来ている女性たちの目にはそれは違うように映った。
つまり、恋をする少女として。
実際にはアンの中ではまだ憧れでしかないのだが、経験豊富な彼女たちにはそれがいずれ恋へと変わる類のものであることは容易に判別出来た。
そして、彼女らは悟る。
今更にそこに横槍を入れることは家のためにならないと。
そもそもが大事な会議に呼ばれないような家なのだ。
機嫌を損ねれば一気にお家転覆のようなこともあり得る。
「アン様、わたくしは辞退しますわ」
「うちもです」
1つの家が辞退を宣言したことでいくつかの家がそれに続いた。
それは均衡が保たれていた状態の瓦解を示すものであった。
他の家が主張するから対抗していただけのような家はそれにならい、残った家もアンの不機嫌を一身に買うほど愚かではない。
そうして、ライヤがアンの傍付きとして戦場に行くことは可決されたのであった。
「ライヤ! 行けるようになったわよ!」
「おう、らしいな」
褒めて褒めて! といった感じのアンに少しため息をつきながらも頭を撫でる。
実際、ライヤの生存確率が一番高いのはアンの近くにいる場合なのだから褒めるのもやぶさかではない。
「日程は?」
「2日後に出発よ」
「やけに早いな」
「……それだけの事って話よ」
つまり、多少なりとも不利な状況にあるのだろう。
士気を上げるためにアンは赴くのだから。
「なら、準備も早くしないとな。学園長のとこに行くぞ」
「? 何するのよ。文句でも言いに行くの?」
「そこまでねちっこくないわ。まさかお前なんも準備せずに行くつもりだったのか?」
「?」
「……まぁいい。そこら辺まで俺の役目ってことだな」
「失礼します」
「ちょうど良かったわ。こちら、6年生の責任者。フィオナさんよ」
「よろしくお願いしますね」
ちょうど、先輩と話しているところだったらしい。
中に入れてもらえたという事は無関係ではないのだろうが。
「君が噂のライヤ君ですか」
「……どんな噂ですか」
「アン王女のパートナーの座を射止めた才人だと聞いていますよ。王女からだけでなく、5年生からは誰からでも一目置かれる存在だとか」
「買い被りですね」
実際のところは事実に近しいところではある。
この頃はアンとの関係をねたんで嫌がらせをしてくる奴らさえいなくなってきているのだから。
「今回は彼女ら6年生もアンさんの護衛に加わってもらいます」
「なぜです?」
「逆に聞きますが、あなたがアンさんの着替えなども世話するつもりですか?」
スッとその見事に発達したプロポーションに目をやったライヤは即座に決断した。
「お願いします」
「そうね。それがいいわ」
「と、いう事ですので、よろしくお願いします。アン王女」
「は、はい。フィオナ・ストラスさんですよね?」
「フィオナでお願いします」
「……わかりました」
家名を聞いたフィオナの表情に影がよぎった気はしたが、よくわからなかった。
気のせいだろう。
「それで、先生。アンが行かされるのは具体的にどのあたりですか」
「とりあえず最初はこの辺りになる予定よ」
学園長は用意していたかのように丸印がついた地図を引っ張り出す。
「その後は戦況に応じて国境線をうろうろする形になるでしょうね」
「まぁそのあたりは考えようがないですからね。とりあえず最初がわかってるだけでもありがたいです。では、俺は図書館に行くので」
「えぇ、お願いね」
「え? ちょっと、待ってよー!」
すたすたと学園長室を去っていくライヤをパタパタと追っていくアン。
残されたのは学園長とフィオナである。
「先生、彼になぜあの地図を?」
「あら、あなたでもわからないの?」
「残念ながら」
うーんと首をひねる学園長。
「彼はね、アンさんを守ることに本気なのよ。地形の把握から、そこで何が出来るかまで2日後までには間に合わせてくるはずよ」
「そんなにですか……?」
「えぇ。彼は学術的な話をさせれば一級品よ。図書館に行ったのも地形の特徴とかを調べにいったはずだわ。まぁ、見てなさい? 2日後、驚くわよ?」
かく言う本人が最もわくわくしているのであった。
「いやいや、貴殿のところは戦場でも後ろの方にしかいたことがないであろう。それに比べてうちであれば前線での経験も豊富で……」
「いやいや……」
王の代わりに第一王女を派遣するということが決定した会議はその後誰を傍に置くかという議題で3日が経っていた。
既に王はその会議の場を離れている。
そんなことよりも考えなければならないことが山ほどあるのだ。
逆に言えば、大事な会議の場に出席できていない諸侯はそれほど重要視されていないという事が伺える。
しかし、それを差し置いてでも彼らはその権利を手に入れたいのだ。
後継者問題には入らないと公言している第一王女だが、それでも王家というのは特別である。
その王女に気に入られ、欲を言えば恋仲になどなれば家の安泰は決まったものであるようなものだからだ。
「うるさいわ! もう決めたの! それとも学園の決定に異を唱えるの!?」
痺れを切らしたアンが大きく声を上げる。
学園長の座というのは王国の中でもかなり重い。
当然、その座を狙うものも多い中、長い期間にわたって維持している学園長は一目置かれている。
「しかし……」
「B級とは……」
それがあってなお足を引っ張っているのはライヤがB級であるという事実であった。
(ライヤが大人しく特別措置を受けてくれていればこんな苦労をしないで済むのに……!)
特別措置がとられるのは別にライヤが初めてではないのだ。
何事にも前例というものはあるもので、その例は突然変異的な形でS級並みの魔力量を持つ子供が生まれてきたというものだったのだが。
少なくとも今のライヤのように軽んじられるようなことはなくなっていたはずなのだ。
(でも、それを甘んじて受け入れていたらライヤじゃないものね)
フッと柔らかい笑みを浮かべるアン。
それは腹の探り合いが続いている会議の場では似つかわしくない程自然なものであった。
そこらのおっさんにはわからないが、彼らについてきている、もしくは家の代表として来ている女性たちの目にはそれは違うように映った。
つまり、恋をする少女として。
実際にはアンの中ではまだ憧れでしかないのだが、経験豊富な彼女たちにはそれがいずれ恋へと変わる類のものであることは容易に判別出来た。
そして、彼女らは悟る。
今更にそこに横槍を入れることは家のためにならないと。
そもそもが大事な会議に呼ばれないような家なのだ。
機嫌を損ねれば一気にお家転覆のようなこともあり得る。
「アン様、わたくしは辞退しますわ」
「うちもです」
1つの家が辞退を宣言したことでいくつかの家がそれに続いた。
それは均衡が保たれていた状態の瓦解を示すものであった。
他の家が主張するから対抗していただけのような家はそれにならい、残った家もアンの不機嫌を一身に買うほど愚かではない。
そうして、ライヤがアンの傍付きとして戦場に行くことは可決されたのであった。
「ライヤ! 行けるようになったわよ!」
「おう、らしいな」
褒めて褒めて! といった感じのアンに少しため息をつきながらも頭を撫でる。
実際、ライヤの生存確率が一番高いのはアンの近くにいる場合なのだから褒めるのもやぶさかではない。
「日程は?」
「2日後に出発よ」
「やけに早いな」
「……それだけの事って話よ」
つまり、多少なりとも不利な状況にあるのだろう。
士気を上げるためにアンは赴くのだから。
「なら、準備も早くしないとな。学園長のとこに行くぞ」
「? 何するのよ。文句でも言いに行くの?」
「そこまでねちっこくないわ。まさかお前なんも準備せずに行くつもりだったのか?」
「?」
「……まぁいい。そこら辺まで俺の役目ってことだな」
「失礼します」
「ちょうど良かったわ。こちら、6年生の責任者。フィオナさんよ」
「よろしくお願いしますね」
ちょうど、先輩と話しているところだったらしい。
中に入れてもらえたという事は無関係ではないのだろうが。
「君が噂のライヤ君ですか」
「……どんな噂ですか」
「アン王女のパートナーの座を射止めた才人だと聞いていますよ。王女からだけでなく、5年生からは誰からでも一目置かれる存在だとか」
「買い被りですね」
実際のところは事実に近しいところではある。
この頃はアンとの関係をねたんで嫌がらせをしてくる奴らさえいなくなってきているのだから。
「今回は彼女ら6年生もアンさんの護衛に加わってもらいます」
「なぜです?」
「逆に聞きますが、あなたがアンさんの着替えなども世話するつもりですか?」
スッとその見事に発達したプロポーションに目をやったライヤは即座に決断した。
「お願いします」
「そうね。それがいいわ」
「と、いう事ですので、よろしくお願いします。アン王女」
「は、はい。フィオナ・ストラスさんですよね?」
「フィオナでお願いします」
「……わかりました」
家名を聞いたフィオナの表情に影がよぎった気はしたが、よくわからなかった。
気のせいだろう。
「それで、先生。アンが行かされるのは具体的にどのあたりですか」
「とりあえず最初はこの辺りになる予定よ」
学園長は用意していたかのように丸印がついた地図を引っ張り出す。
「その後は戦況に応じて国境線をうろうろする形になるでしょうね」
「まぁそのあたりは考えようがないですからね。とりあえず最初がわかってるだけでもありがたいです。では、俺は図書館に行くので」
「えぇ、お願いね」
「え? ちょっと、待ってよー!」
すたすたと学園長室を去っていくライヤをパタパタと追っていくアン。
残されたのは学園長とフィオナである。
「先生、彼になぜあの地図を?」
「あら、あなたでもわからないの?」
「残念ながら」
うーんと首をひねる学園長。
「彼はね、アンさんを守ることに本気なのよ。地形の把握から、そこで何が出来るかまで2日後までには間に合わせてくるはずよ」
「そんなにですか……?」
「えぇ。彼は学術的な話をさせれば一級品よ。図書館に行ったのも地形の特徴とかを調べにいったはずだわ。まぁ、見てなさい? 2日後、驚くわよ?」
かく言う本人が最もわくわくしているのであった。
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